シナリオの面白さが評判の「雷子」をやってみた。
一体何ジャンルなのかも不明なまま手を出したわけだが、三国志ベース(オリジナル展開を含む)のシミュレーションゲーム。
そういえば三國無双もシミュレーションを出したばかりか。
シミュレーションをやるのは久々だったが、ゲームとしては単純なルールだったのですぐに飲み込めた。
全体的に低予算なのがうかがえる出来ではあったが基本的には面白かった(このブログには「面白かった」と思えたことしか書かない)。
以下、途中まではネタバレなし。
女体化三国志
昨今珍しくもなくなったが、有名武将がかなり女体化している。
相当違和感はあるのだが、全員女体化しているわけではなく男性のままのキャラも多い。
で、男女が一つの軍にそろっているからこその展開もあり、このあたりは軒並み女体化するようないわゆるギャルゲーとは違うテイストではないかと思われる。
シナリオ中盤までは意外と三国志に忠実だったりする。
が、人間関係が史実とは違ったりする(劉備、関羽、張飛は本当の「姉妹」っぽいとか、黄忠の兄弟が彼とか)。むしろこっちに驚かされる。
セリフ回しは完全に現代。その割に人がバタバタ死んでいく展開はシビア。グロ度は昨今の海外ドラマの方がきついのでそこまででもない印象。
できれば世界観や価値観を「現代」か「三国時代」のどちらかに寄せてくれると、プレイヤーも没入しやすいのだが、かなりの振れ幅がある。この振れ幅こそが「雷子」の持ち味でもあるのだろうけども。
三国志といえば赤壁前後を見せ場にすることが多いと思うのだが、この作品ではむしろグダグダな末期が見せ場となる。これは濃いめの三国志ファンには嬉しいところではなかろうか。
グダグダな末期がなぜグダグダになったのか、どうすればこの状況をひっくり返せるのかというところがメインである。
主人公と世界観
ゲーム開始冒頭、主人公が目覚めると「母親の書き置き」に気づく。
この時点でまずびっくり。
母親、つまり女性が文字を書けるということは、この主人公の家庭は相当の教養層である。また主人公もすぐに書き置きを読んだことから、彼もきちんと教育を受けていることがわかる。
彼が住むのは田舎のようだが、その環境にあってこの教養。ただものではない。
……と思ったのだが。
その後の世界観のぶれを見ていると、この読みにも意味があるのかどうかわからない。
主人公はいったい「いつ」の時代の人物なのか、結局ストーリーの中では語られることがない。
もしかするとかなり現代に近い時代から来たのかもしれない。
しかしそれなら劉備たちを見た瞬間に「三国志の!?」という反応になるはず。
ほんと、いったいいつの人なんだ。
演出・見せ方
シナリオ自体は確かに面白かったのだが、演出さえもう少しよければと感じるところが多かった。
以下は不満点というよりは、このゲームをやることで気づいた「ほかのゲームでは普通に行われているが普通すぎて気づいていなかった」演出のメモ。
・暗転からのしばしの間
時間の経過を表す演出。
・「○年○月」などのテロップ
時間の経過を表す演出。実際に数字が頭に入っていなくても、とにかく前回のシーンから何年かはたったのだということがわかる。
無双などでは当たり前のようにこれらが入っていて、大して気にとめたこともなかった。が、このふたつがないために「雷子」は全部が一週間くらいで終わったような印象になってしまう。
実際にはそんなことはないのだろうが、実際のところゲーム内でどれくらいの時間がたっていたのだろうか…?
・地図
いくら中国の地図くらい誰でも知っているとはいっても、絶対にあった方がわかりやすい。
「(地名)まで行ってくる」というセリフとともにキャラが移動するシーンはあるのだが、上述した時間の経過も一瞬ですっとばされてしまうため、ストーリー全体が一つの県内(これは日本でいうところの県)で起こっているような印象になりがち。
・キーレスポンス
「雷子」では全体的にレスポンスはさくさく。ゲーム部分もアドベンチャー部分もさくさく。
これ自体は悪いことではないのだが、今までやったゲームを思い出すと、レスポンス時間を使った「間」の表現もいろいろとあったのだなあと思わされる。
・日本語
日本語がおかしい、誤植が多いのはさすがになんとかすべき。
シナリオは面白いのだから、ちゃんとした文章を書ける人と校正を雇ってはどうか。
「存在しないこと」によって存在に気づくことはしばしばある。わたしはこの経験が好きだ。
単純に予算の問題でこれらの演出が不可能だったのか、それともそういう指示を出せる人がメーカーにいなかったのか(小規模なメーカーらしい)わからないが、続編も出るという話なので、せっかくの面白いシナリオ、いい感じに演出してもらえたらもっと楽しめると思う。
以下はネタバレ感想。
主人公の「正体」
「キョウ」という主人公が蜀軍にやってきて諸葛亮の弟子になった時点で、姜維か! と気づくプレイヤーは多いはず。
蜀→呉→魏のシナリオがあまりにもバッドエンド(最後のスチルたち……)だったので、これは二周目キョウが無双するのだなということも大体わかるはず。
が、予想通りキョウが二周目をスタートしたとき、姜尚と名付けられたのを見たときが最初の驚きだった。
お前古代の仙人だったんか! そりゃ字も読めるはずだわ!
……。
お前今から太公望「になる」んか! まじか!!
いやはや、これは予想していなかった。
じゃあ結局キョウっていつの時代の人だったんだ……。
ここがいちばんびっくりしたところ。
あとは于吉の正体。
ちなみにわたしは呉越の時代については世界史で習った程度なので全然詳しくない。
于吉の正体は伍子胥!? な、なんだってー! で、伍子胥って誰?
……三国志ファンの中にもこういう層はそこそこいると思われるのだがどうか。
わたしはクリア後に呉越についてぐぐって調べた。
少なくとも調べてみたいと思わせるだけのシナリオだった。
「三国志は好きだが中国史全体については詳しくない層」に知識が広がるきっかけを与えるパワーのある作品だった。
しかも「雷子」続編のメインはこの伍子胥だという。
日本のゲーム市場において三国志以外の中国史がテーマになるのは珍しい。
それだけでも価値ある作品だと思われる。
わたしも近々続編をやることになるだろう。DS版はすでに割と安くなっている模様。
最近やりたいゲームが多すぎて困る。ちなみに現在はディスガイア4Rをプレイ中。