あの日の衝撃から1年近くたったが、いまだにわたしの傷は癒えていない。
あれから7-7を何度見返しただろうか。
見るたびに、エイダン・ギレンとソフィ・ターナーの演技の凄まじさに圧倒される。ピーターとサンサがともに過ごしてきた時間とほとんど同じだけの時間を過ごしたであろう二人の関係も、あそこには詰まっていたように思える。
幸いにも、ドラマを見始めた当初と比べて作品を語れる相手は格段に増えた。それにリトルフィンガーファンともたくさん知り合うことができた(検索すると彼への罵倒ばかりが引っ掛かって泣いた日々が嘘のようだ)。おかげでこの1年、彼についていろいろ考えを深めたり、新たな魅力に気づいたりすることができた。もしかすると、いずれまたどこかでそれについてまとめることがあるかもしれない。
今日は久しぶりに、エイダン・ギレンのインタビューを引っ張り出してきて訳してみようと思う。
2014年4月のインタビューだから、ちょうどS4の放映が始まった頃である。そのため現在我々が知っている情報のいくつかはまだ視聴者に知らされておらず、すでにお亡くなりになった人がまだ生きていたりするのが前提である。ただしS4までのネタバレは最初から全開につき注意されたし。
なおいつものように、訳すにあたり正確さはドラカリスされており、ばっさばっさと文をぶつ切りにしながら意訳している。元記事もぜひ読んでみてほしい。魔女帽子のギレンさんがいいんだこれが(この魔女帽子はギレンさんが持参したものらしい)。
ではいってみよう!
(※( )は原文通り、〔 〕は訳注)
「ゲームオブスローンズ」において、彼はあいにくピーター・“リトルフィンガー”・ベイリッシュと呼ばれているわけだが、その彼は番組で最も危険な男かもしれない。
彼は陰謀をめぐらせ、持たざる身分から富と影響力を得て、文字通りの完全犯罪をやりとげている。ネッド・スターク(基本だね)、ロス(絶対小指のせい)、ジョフリー・バラシオン(たぶんね)の三人のことだ。だが彼はそんなに悪い人でもないのである! 少なくとも、彼を演じるエイダン・ギレンの話によれば。
我々は番組中最もミステリアスなキャラをもっと理解するべく、ギレンにヴィランをテーマにしたアンケートに答えてもらった。「ゲームオブスローンズ」についてのアツい質問も含まれている。ここではそのハイライトをお送りしよう。
邪悪度を1~10までで表すと、リトルフィンガーはどれくらいですか?(なお1がサミュエル・ターリーで10をジョフリー・バラシオンとする)
実は僕はリトルフィンガーのことを特に邪悪だとは思ってないんだよ。現実的で如才なくて、まあ冷酷ではあるよね。ほかの人が評価するなら、僕は悪意ある邪悪な人ということになって、7点か8点をとるかもしれない。でもやってるのは僕なんだからね。
彼の決断とやったことについて評価するなら、僕も9点か10点をつけるかも。
人格的には邪悪ではないが、やったことはかなり悪いと思っているようだ。
リトルフィンガーの二重性の秘密は何でしょうか? 彼はいいこと(サンサを助けるとか)をするときでさえ疑わしく見えます
僕が役者として携わった部分にそんなに秘密があるとは思ってない。このキャラクターがそういうふうに書かれているということだよ。
二重性というのは確かに鍵になる特徴で、「ゲームオブスローンズ」の世界において珍しいものではないんだ。彼は自分がかかわろうとするさまざまなグループに確実に近づくために、二重性を持つ必要がある。
みんなはリトルフィンガーがサンサに夢中なんだと話題にしているけど、それについてはどうだろう? このあたりについて、僕はわからないんだよね――でも僕は彼女に対して強く責任を感じている。もしかするとこれも誤解なのかもしれない。リトルフィンガーは誤解されがちと言ってもいいかもね。
リトルフィンガーはどのように成長したのでしょうか? 彼は道徳的な部分で変わってしまったのでしょうか?
成長するにつれて、彼はまわりが危険な状況の中でより安定するようになったように思う。落ち着きを増し、集中力を増し、世界について、それから世界の中の自分の居場所について、もう少し考えることができるようになった。もちろん彼は常に自分の社会的立場について自覚している。立場を向上させることについても自覚的だ。同時に、常に彼が到達すると思われたところの外にいる。
S4を通して、彼がさらに優しくなるのを目撃できるかもしれないよ。彼が少しばかり自分を卑下したりするところも見られるかも。
彼は罪悪感を抱くことがあるのでしょうか?
彼が能動的に罪悪感を抱くかどうかは疑問だね。でもそれがいつ這いあがってくるかはわからない。庭に死体を埋めることはできるけど、それはなくなったりしない。いつだってそこにあるんだ。
このゾクゾクする答えときたら。
彼を突き動かすものは何でしょうか?
若い頃の拒絶と屈辱だね。二度とそんなことが起こらないような立場になろうとしてるんだ。
この質問はあちこちでされているのを読んだが、ギレンさんは一貫してこの返事である。
リトルフィンガーの造形について教えてください。たとえばあの独特の癖、話し方、耳元で囁くやり方について
まず僕はある種の手品師――または自分を手品師だと思っている政治家を思い浮かべたんだ。そして二人の人物が浮かんできた。まずは漫画のキャラクター「魔術師マンドレイク Mandrake the Magician」。
なんという小指感……。
それからピーター・マンデルソン 。この人はイギリスの政治家で、「闇の王子」の通り名で呼ばれることもあるんだよ。僕らはマンデルソンの口髭を試してみた。ちょっぴりネコっぽさがあるよね。ライオンっぽい感じじゃない。「ドラ猫大将」とか「おしゃれキャット」を思い出したよ。これは衣装とも合った。あのしなやかでボディラインを活かしたやつ。
彼は古老的な話し方をしそうだと思った。「チャイナタウン」のジョン・ヒューストンとか、「ハンマーホラー」みたいに。こういった特徴は、時間がたつにつれて変化が許されるべきだとも思った。
僕が話すときに身を傾けているとしたら、それは僕の言うことをきちんと聴いてほしいとほかの人に知らせるためだし、僕が彼らをごく近くで見たいと思っているからだよ。
超能力を使えるとしたら、いい力がいいですか、悪い力がいいですか?
もし時間を止める力を持っていたとして、アイスクリームパーラーにぶらっと入っていって全部のアイスに赤と緑のシロップをぶっかけて食べてみたいって思わない人がいる? 歩いてる人を逆向きにして、間違った方向に歩かせてみたいって思ったりしない?
いい気分のときは木から落ちるネコを助ける場合もありえるし(まあ猫って普通ちゃんと着地するけど)、そうじゃないときはネコを木の上に戻すこともありえる。僕はそういう人なの。
リトルフィンガーに超能力があるとしたら、テレパシー系なんじゃないかな。またはチャーム系かもしれない。
かっわいい!! 何このかわいい発言!!
テレパシーやチャームの能力を持つリトルフィンガーのイメージもすごく納得できる。
好きな悪役キャラは? その理由は?
まず思いついたのは「夢のチョコレート工場〔「チャーリーとチョコレート工場」のリメイク元の作品〕」に出てくるスラグワースだね。彼は「チキチキバンバン」のチャイルドキャッチャーとすごく似た衣装を着ている。こっちも偉大な作品だね。あのキャラって最高に気持ち悪かったでしょ。あいつを夢に見なかった人ってそんなにいないよ。
ウィレム・デフォーはあれと同じ空気感を「グランドブダペストホテル」に運び込んでいた。彼は掘り返されたばかりみたいな格好をして、歯が大変なことになってたでしょ(もしかして本物かも)。もちろんサタンが彼らに資金提供してるんだよ。
成功するヴィランにとって最大の秘訣は?
他人の話に耳を傾けることはもっと評価されるべき――今何が起こっているのか知らなくてはならないからね。特に「ゲームオブスローンズ」の世界では。それから、好かれることと信頼されること。少なくともある程度はね。
やっぱりポイントはチャーム能力なんだよなあ……。
「邪悪」とか「悪役」という言葉は「ゲームオブスローンズ」のような世界ではどう定義されるでしょうか?
うーん、これは難しい質問だね。だって英雄的な面と悪役的な面を併せ持つキャラクターが多いから。ジェイミー、サーセイ、ハウンドとかね。それがシリーズにさらにのめりこむ理由の一つでしょ。どういう人物なのか確信できないキャラが多いよね。それに常に変化の余地を残している。
この世界は過酷で、生き延びるためには過酷なことをしなければいけない。アリアがあの男の喉に剣を突き立てたとき、僕らは大喜びしなかったかな――言ってる意味、わかるよね?
S7を終えた今となってはこのコメントも予言的である。
リトルフィンガーはメインプロットの大部分にかかわっていて、しかも立場を悪化させていません。彼はこのゲーム中で最も危険な人物でしょうか?
確かに、最も危険な人物の一人だろうね。良い策士というものは、他人の手を汚させるように立ち回るものでしょ。間違いなく危険もあるんだけど、期待したとおりのプロットが展開していくのを見るのは、愉悦でもあるんだ。
わたしもリトルフィンガーは目的のために動いているだけではなく、状況を楽しんでいる部分もあったと思っている。
リトルフィンガーからサンサへの気持ちはどういうものでしょうか?
彼女の面倒をみること。もしかしたら彼女の先生になりたいのかも。
間違いなくそうなったわけで……。
ヴィランにとって最大の危機とは? 彼らにとって怖いものとは?
彼らの弱点はそのまま、彼らを突き動かすものと関係している。そうだとしたら、屈辱と拒絶ということになるかな。突然沸き起こる感情的なものが怖いんじゃないかと思う。彼らは自分の中にある迷子の子供のような姿を晒すことはきっと望んでいないから。
たぶん主人公よりもヴィランの方が、死を恐れていると思う。サイコパス的なヴィランじゃない限りはね。そういうヴィランはそこまで多面的ではなくて、死への恐怖を弄んでいたりするものだからね。
リトルフィンガーはまさに、15才のときの思い出から逃れられない「迷子の子供」だったんだと改めて思ったり。
偉大なヴィランには偉大な名台詞がつきものです。あなたの場合は?
実際のセリフの中で? 「ピーターと呼んで Call me Petyr」になるかな。
“I did warn you not to trust me.” とか “Chaos is a ladder” とかじゃなくこれなんだ……。やっぱりギレンさんにとってリトルフィンガーは、どこまでもキャットに縛られた人なんだなって。
ヴィランのテーマソングといえば?
歌詞をよく覚えてないんだけど、「セサミストリート」のカウント伯爵が歌ってた “Bones” の中の一節だね。実際、彼も僕にとって大きなインスピレーションを与えてくれたんだよ。
www.youtube.com公式動画があったぞー!
あなたの演じるヴィランのアクセサリーといえば? 狂った悪役笑いか、それとも白い猫?
猫だね。だって猫そのものが超自然的な力を持ってるとか、魔女の生まれ変わりだとか思われてるでしょ。単なるアクセサリーじゃなくて、面白い仲間になり得ると思うよ。
「白い猫」が悪役のお約束のような共通認識があることにまず笑ってしまった。
そしてギレンさんがリトルフィンガーに対して全体的にネコ属性をイメージしているのがすごく面白い。小さくて賢い黒猫のイメージなんだろうなって……。上の質問でネコが木から落ちそうなときに助けるかどうかはそのときの気分次第だとも言っていたのを思い出して、再び胸を押さえたのであった。
ギレンさんのインタビューはどれもこれもリトルフィンガーへの愛情がいっぱいだ。作中でリトルフィンガーの純粋な味方が一人もいなかったことを考えると、ギレンさんこそが彼の唯一の理解者で味方だったのではないかとさえ思えてくる。もちろんリトルフィンガーはそんな味方なんて必要としていなかったし、理解されることを望んでもいなかったと思うけど。そんな一方通行の関係もいい……。
ところですでに2019年の Game of Thrones カレンダーが発売されているのだが、なんと4月がリトルフィンガー(冬仕様)! うっ……ちょっとほしい……。
全ページ寒そうなのは Winter is here 後なので仕方ないのか。(リンク先で中身をチェックできます)