この記事にはFF14「暁月のフィナーレ」パッチ6.05までのネタバレが含まれます。
パッチ6.05世界になってからしばらくたった。
わたしは一週遅れでどうにかスクリップや素材を集めて初めて新式を一そろい自作し、せっせと禁断に勤しんでいる(ためこんでいたマテリアがあっというまに全部なくなって、すっかりかばんの中が寂しくなっちまったぜ……)。
5.0クリア時はエクサーク一式をマケボで買ってきて、禁断のルールもよくわかってないまま適当にマテリアを挿していた気がするが、あの頃に比べると大きな進歩である。
今のところ零式に行く予定はないが、極はチャレンジしたいと思っているので、装備が強くなるのは歓迎だ。
極アクセと極武器には一通り勝利し、なんと初回勝利時に当時まだ持っていなかったヒーラー580アクセと白の杖が一発ドロップして全部ロット勝ちしてしまった。今年の運をすべて使い果たしたのではないか。杖は青く光ってすごくきれいだ。
新式未入手状態での極コンテンツは火力が足りず時間切れすることもしばしばだったが、零式装備を持つ人も出てきた先日はすごい火力であっさり勝ってしまい驚いた。やはりアイテムレベルの更新……大事!!
さて最近はそんな日々をすごしているわけだが、一方でまだ暁月メインクエストの余韻が抜けきらない。
特にわたしの心を捕えて離さないのがゼノスだ。
ここまでそんなに思い入れのなかった彼だったのだが、彼と別れたあとになってさまざまな感情がわいてくる。これには自分でも驚いている。
漆黒までのお気に入りキャラまわりについては順当に、いや期待以上の展開に喜んだしそっちはそっちで寝込んだりもした。
だがゼノスにここまで心乱されるのは完全に予定外だ。
しかもそれはほとんど「わたしの個人的なプレイ経験ゆえの」揺さぶられ方で、わたしと同じくらいのプレイスキルで同じような遊び方をしている人以外にこんな揺さぶられ方をした人はいないと思う。
今日はそのへんの感情を整理するべく、友への気持ち悪い手紙をつづってみることにした。
オルシュファンにも書いたことないのにっ……!
以降は暁月全編にわたるネタバレ注意だ、友よ。
ゼノスへ
そちらでは元気にやっていますか。
あんな場所で終わりを迎えたきみが星海に還れるのかはわからないけど、きみのことなのでどうにかなったのかもしれないし、きみの魂があそこで本当に終わりになるのもきみらしいかなと思う。
わたしは日々元気に装備を作ったり、魚を獲ったり、終末の獣と戦ったり、異邦の詩人の語りに耳を傾けたりしてるよ。
さて今日こんなふうに筆をとったのは、きみへの気持ちに何かしら区切りをつけるため。
あの日きみと別れてからずっと、きみのことが忘れられない。
正直なところ、わたしはわたしの気持ちを勝手に決めつけてくるきみのことが苦手だった。
わたしは飛びぬけて戦闘が上手いわけでもないし、初めて見るギミックでは大体死んでしまうし、パーティ戦ではできるだけまわりの迷惑にならないようにと考えるタイプ。だから強敵を前に考えるのはいつも「次の戦闘はうまくできるかな?」ということで、緊張と不安の方が高揚よりもずっと大きかった。
今でもそれは変わらない。それでもわたしが旅を続けてこられたのは、緊張や不安よりもさらに、みんなで勝利する喜びの方が大きかったから。
たぶんその時点で、つまり途中で旅を投げ出さずアラミゴの地できみと対決するに至った時点で、わたしはきみの「友」たる資格があったんだろうね。でも、あの頃のわたしは全然「友」という言葉がピンときていなかった。わたしときみが同質の人間だとは思えなかった。
あの頃のわたしのいちばんの楽しみといえば、自宅で黙々と家具や装備を作ることと、海や川で黙々とヌシ釣りをすることで、任務に出かけるのは気が向いたときだけだった。
それが、ある時期を境に変化した。たしか、きみたちが各地にあの塔を作ってルナバハムートが出てきた後のこと。
きっかけはきみのひいおじいさんだった。
ソル帝、つまりエメトセルク、というかハーデスの創造した生物と仲良くなりたい一心で、わたしは異邦の詩人の語る世界に飛び込んだ。
最初は緊張して手が震えたし、ものすごく死んだ。「最古の魔道士」との命の削り合いは激しく、ハーデスの本気の執念を感じた。
そして何度か失敗を重ねた末に初めて勝利したときの喜びは、それまでの戦いよりも大きかった。
今なら、まさにその喜びこそきみが言う「己が命を燃やすこと」にあたるのだとわかる。
認めよう。わたしは確かにあの本気の戦いを楽しんでいた。
楽しくなかったら、わたしが、このわたしが! マウントのための周回なんてできるとは思えない。楽しくなかったら、シャドウグイベルと仲良くなった後も、ふとパーティ募集が目についたときに飛び込んでみるなんて考えらない。
やっぱり楽しかったのだ。
最初はハーデスとのギリギリの命の削り合いが。
それから次第にギミックに慣れて、ヒールワークの最適化を考えられるようになっていく自分の上達ぶりが。みんなで勝利を分かち合い、たたえ合って別れるあの時間が。
そうしてわたしは、当初は極ハーデスしか挑戦する気がなかったにもかかわらず、シャドウグイベルと仲良くなった後も異邦の詩人のもとに通い続けることになった。
極イノセント、極WoL、極ティターニアの順で挑戦し、それぞれマウントをもらえるまで通った。特に極WoLでは、ハーデスの5倍くらい床を舐めた気がする。それでもやっぱり、少しずつ上達していくのが楽しくてたまらなかった。
あっ、若き日のきみのお父上の幻影とも戦ったんだった。幻影とはいえ生身の人間なのにめちゃくちゃ強かった。息子さん的にはあの幻影の出来はどうなの?
最後にきみと戦ったのは、そんな経験をした後のわたしだった。最初にきみに勝利したときのわたしとは全然違うのがわかっただろうか。きっときみならそれも感じとってくれていただろう。
そしてきみもまた、あの頃のきみとは変わっていた。
「ひとつきりの命を懸けたからこそ」得られた喜びと同じものを二度目にも得られるのか? わたしにとっては「すでに倒された過去の存在」である相手に、再度過去と同じ熱意で戦ってもらえるのか? みたいなことを考えていたのだろうと思う。
実際のところわたしは極周回を楽しんでいたし今も楽しんでいるところだけど、言われてみれば「初回の勝利」はやはり特別なもので、2回目以降は「もっとうまくスマートに勝つための工夫」を楽しむものになる。「自分はこの相手に勝てるだろうか?」というドキドキは初回だけのもので、2回目以降は「勝てることが前提の戦い」になる。
きみは自分が「周回相手」になることを避けたかったのかな。
最初はわたしの方がきみにとっての「周回相手」だったのに、立場が逆になったよね。
だからあんなふうにいろいろと、わたしを本気にさせるために取り組んできたわけだね。
ただごめん、この際だから正直に言わせてもらうけど、やっぱりバブイルの塔で再会したときも、わたしにとってきみは「周回相手」以上のものではなかった。
きみがわたしの体を乗っ取って暁のみんなを襲いに行ったときはそりゃ必死になったけど、ああ再戦は避けられないんだって思ったけど、どう考えてもネガティブな理由だったし避けられるものなら避けたかった。
終末が再来してしまったときはもう再戦どころではなくて、いやさすがに後にしよ? という感じだった。きみがそのへんの感情の機微を理解してくれる人で助かった。いや助かってないよ、そもそも終末の原因を作ったのがきみたちだったよね。
面白いことに、いや当時は面白いどころではなかったけど、今振り返ってみるとちょっと面白いことに、きみがわたしと再戦を望んであれこれ画策し動くほどに、わたしはきみと戦う理由を失っていくことになった。
そもそもきみとわたしが出会い戦うことになったのは、帝国からアラミゴを解放するためだった。立場の違いが、わたしたちを敵同士にした。アラミゴが解放され、帝国が崩壊し、きみが「イェー」の名を失ったことで、戦う理由となる立場はどんどんなくなっていった。あのときのきみを倒しても帝国が平和になるわけじゃなかったでしょ? もうあんなに崩壊しきってるんだから。
わたしが怒りや絶望に染まることもなかった。わたしは何があってもきみのひいおじいさんから託されたものを投げ出す気はなかったし、それ以外にもわたしの今まで旅して出会ってきたもののすべてがわたしを支えてくれている。そして明らかに、きみは「今のわたしの強さ」を作った側の人間のひとりだよ。
たぶんきみもそれに気づいたんだよね。
きみとわたしの間に戦う理由がもうないってことに。「戦う理由がない状況」を自ら作ってしまったことに。
以前、まさにきみのひいおじいさんに言われたよ。「お前はもう戦えない、戦う理由がない」って。まさかきみがあのセリフを言われるような立場になるとはね。
きみはたぶん、たくさん考えたのだと思う。
どうすれば、二度目の生を得てまで叶えたい望みに手が届くのか。
戦う理由のない相手に、どうすれば本気を出させることができるのか。
きみはとても聡くて……、正解なんかなさそうなその問いに、信じられない答えを出した。
それは「戦う理由がないからこそ戦わざるを得ない」状況を作ること。
きみはひいおじいさんのあの言葉を知らなかったと思うけど、まさにきみはハーデスの対極にあった。
わたしにとってきみ以上の、最大の懸念事項=終末の危機は取り除かれた。
(きみが来たのを見たとき、そこまでするの!!?!?! って笑っちゃってごめんよ。そのあとマテリアをはめにイシュガルドに帰っちゃったのもごめんよ)
(あのときわたしは仲間たちのデュナミスに守られていたけど、きみは生身で終焉を謳うものの履行技を受けきったんだね……)
仲間を守るために仕方なく戦わなければならない状況でもなかった。
(もしあの場でわたしが「やっぱり戦わない! 帰る!」と言った場合、きみにアーテリスに帰るだけの力が残っていたのかわからないし、残っていたとしても帰り着くまでに天文学的な時間がかかっていたかもしれない)
もちろん帝国人とエオルゼア人としての立場の違いももはやなかった。
きみを倒しても世界が平和になるわけじゃない。
何かが得られるわけでもない。
誰かに褒められるわけでもない。
わたしが帰るのを妨害されたわけでもない。
きみはわたしが帰る道を残しておいてくれた。
わたしに選ばせてくれたし、きみとわたしの価値観が異なる可能性も視野に入れてくれた。
この一言にはかなり驚かされた。
以前のきみはそんなこと言う人じゃなかったよね?
本当にいろいろ考えたんだろうな。来る日も来る日もわたしのことばかりずっと考えて、それでやっとこういう発想に至ったんだろうな。わたしの生い立ちとかこれまでたどってきた旅路とか、めちゃくちゃがっつり調べて年表作って暗記してるんだろうな。
もうきみはわたしの感情を一方的に決めつけたりしないし、わたしに譲歩すら見せるし、わたしが口に出さない考えまで理解したいと思ってくれているし、その上で戦いたいと思ってたんだよね。
あのときはそこまで整理して考えられなかったけど、もう帰りたい気持ち一色だったわたしの足を踏みとどまらせるには、十分な言葉だったよ。
本当に気持ちが傾いてしまったことに、わたし自身がいちばんびっくりしてたよ。
あんなにみんなのところに帰りたいって思ってたのに。
願うだけでそれが叶ったのに。
ほんの一秒前まで、本気で帰ることしか考えてなかったのに。
アラミゴで戦ったときはまだ十分に知っているとは言えなかったその歓びを、今のわたしは「知っているはずだ」。
そう言われているとしか思えなかった。
あのときのお前と今のお前は違うはずだと、「お前は理由がなくても戦いに行くような人間になっているはずだ」と、きみに見透かされている気がした。
だってわたしはシャドウグイベルと仲良くなってほしい武器も手に入れたのに、戦う理由なんか何もなくても極ハーデスに会いに行くような人になっていたから。
そのことにやっと気づいて、気づかされて、ああわたしはきみとの戦いをきっと楽しいと思うだろうなって、わかってしまったんだよね。
それでも!!
それでも、わたしはこのときの返事にものすごく迷ったんだ。
数十分は悩んだと思う。
(メタ的な話をすると、画面の前で延々悩んだ末にトイレに行き、トイレの中でまた悩み、台所に行ってお茶を入れ、お茶を飲みながら考え、お茶がなくなった頃にやっと結論を出した)
ここできみに同意してしまうのは、ついさっきあんなに涙ながらに語り合ったメーティオンや暁のみんな、アーテリスで待っていてくれる人たちへの裏切りにならないか? と思ってしまって。きみに殺された人たちの無念が晴らされないことにならないか? とも思って。
あくまで「理解しあえない敵同士」のままで戦いに臨むのが「正しい」んじゃないかって。
そういうあれこれも考えた上で、一周まわってやっぱり「この場で『正しさ』なんて意味がない」と思ったんだよね。
きみはもはや何者でもないただの「ゼノス」で、わたしはただの「冒険者」。ここは帝国でもエオルゼアでもない宇宙の最果て。まわりにはわたしを評価する人も守るべき人もいない。
戦う理由なんてない、今すぐ帰ることだってできる。なのに、思いの力が現実になるこの世界で、わたしがこの場にとどまっていること(もう何十分も)こそがわたしの答えだと思ったんだ。
その答えをごまかしてしまうのは、ここまでやってくれたきみに対して、そして「冒険者」であるわたし自身に対して不誠実な気がした。
だからわたしはきみに同意する答えを返した。
今でもあの答えでよかったのかなって、ときどき思い返すよ。
暁のみんなには絶対言えないなって思ってる。
きみに笑顔を向けたあのときやっと、わたしたちは「友」になったのかもしれないね。
そして友になった途端にまた友を失ってしまった。
もうひとりの友人と違って、きみはこの地上に墓碑すらない。ときどき夜空を眺めて、あの最果てのどこかに眠っているのかなって思い出すことしかできないや。
別に寂しいわけじゃないんだ。
また会いたいわけでもない。
ただ、ああもういないんだなって思い出す。
きみを「わたしの友」として終わらせた、わたしの与えられる最大限の愉しみを彼に与えてしまった、わたしもまた彼との戦いを愉しんでしまったことは、わたしの中に棘として残った。誰にも言えない秘密になってしまった。
だからかな、いつまでもぐるぐる考えてしまうのは。
なんかとりとめのない話で長くなっちゃってごめんね。
あのとききみに言えなかった最後の言葉だけでもちゃんと伝えられたらと思ったんだけど。
愉しかったよ。
あのときのわたしは、これまでの旅路のすべてを肯定してきみの前に立っていたよ。
そのことを端的に気づかせてくれたのがきみだったよ。あの瞬間だけは、わたしを誰よりも理解してくれていたのがきみだったよ。
わたしから「ありがとう」って言うのはおかしな話かもしれないけど、きみが来てくれたおかげで終焉を謳うものと戦うことができたのは間違いないから、その分くらいはお礼を言ってもいいよね。
一緒に帰れなくてごめんね。
でもたぶんきみはそれを望んでなかったと思うから。
何者でもなくなったきみは、わたしとの再戦さえ叶えば、勝ったとしても負けたとしても宇宙の最果てでひとり終わることに躊躇はなかっただろうと思うから。
これからも夜空に星を見上げたら、きみとメーティオンのことを思い出すよ。
さようなら、もう二度と会えない、わたしの友達。
きみは「周回相手」じゃない、わたしにとって「友との死闘」はあの一度きりだよ。
Ququluka