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ヴァリリア語力は何を意味するか「ハウスオブザドラゴン」2-4感想

https://twitter.com/HouseofDragon/status/1810130683383177459

始まっちゃったね、双竜の舞踏……。

もちろん我々はこれを期待してS1から見ていたので「いよっ、待ってましたァ!!」なテンションなのだが、一方で「アカンもうおしめえだ……(1週間ぶり2度目)」なテンションでもある。

前回の感想で「『戦争となり、多くの犠牲者が出てしまう』とかいうあらすじ、誰がどう見てもこの先の全話にあてはまりそうなのでネタバレでも何でもないよな!」と書いていたわけだが、今回もちゃんと戦争となり多くの犠牲者が出てしまった。ほらね

ではではさっそくネタバレ感想いってみよう!

 

 

 

 

語学力マウント

今回いちばんンフフwwwと笑って何度も見返してしまったのは、エイモンドくんによる語学力マウントである。こいついい性格してますわ。好き。たまらん。

英語字幕を見ても、「二つ名 sobriquet(フランス語だから、英語圏の人から見るとちょっとしゃれた、あるいはふざけた言い回しなのかな)」「愚かな imbecilic」「腰巾着 lickspittle」とか、初級学習者が習得しているとは思えない語彙が並んでいる。わざとちょっと難しい単語を使ってからかっている感じだ。

対してエイゴンの語彙の貧弱さよ。気の毒なレベルだ。ついでに文法もむちゃくちゃである。ちゃんとしたターガリエン式の教育が受けられなかったデナーリスでさえ、今のきみくらいの年齢にはもうちょっと流暢にしゃべってたぞ。

いや考えてみると、エイゴンの語彙って英語でも大したことないんだよな。宮廷式のもってまわった言葉遣いなんてほとんど使っていないのでは。不良中学生みたいな語彙しか口にしていない。エイモンドがまったく同じ内容を英語でしゃべったとしても「アアン?」程度の反応しかできなかったと思う。

直接的には、エイモンドは前回娼館で馬鹿にされたことをやり返したという感じか。

でもこれ、エイモンドの視点で考えればわかるのだけど、ある意味「正当防衛」なんだよね。王が愚かで無茶な作戦をゴリ押しすると、戦争に負けてしまうわけ。そして戦争に負けたらチームグリーンは、少なくともターガリエンの血を引くメンバーは全員処刑されるのはほぼ間違いないわけ。

(仮にヴィセーリス崩御時点でチームグリーンがレイニラを王と認めていたとしても、デイモンがレイニラ側についている以上、アリセントとその子供たちは全員処刑の可能性がずっとつきまとっただろうけど、それはここではおいといて)

自分と家族(エイゴン自身も含めて)、キングスランディングの民を守るためには、王には黙っておいてもらわないといけないわけ。自分の無知を、無能を認めてもらわないといけないわけ。

これ、数日あるいは数週間、相当考えて決行したエイモンドの作戦だったんじゃないかな。エイモンドにとっては、これこそが本気で命のかかった正念場だった。戦場でドラゴンに乗っていればそう簡単には死なない(まあ今回死んでしまったわけだが……)にしても、この「戦争」に負けたら終わりなのだから。ある意味で本当に、エイゴンはこのやりとりのおかげで命が救われるはずだったんだよ。エイモンドはそんなつもりはなかったと思うけど。

 

それからここが肝心なところなのだが、高地ヴァリリア語を話せるということは、よりターガリエン的だということであり、ドラゴンを従わせる力がより高いということである

あの場にいた誰もが、ヴァリリア語を流暢に操るエイモンドこそを「ターガリエン的」だと感じただろう。

言語とは文化であり、伝統であり、歴史そのものである。先祖代々の言語を尊重するということは、自らのルーツを大事にし、祖先に敬意を払い、歴史を学び、それらを今に活かそうという姿勢である。小評議会の参議たちくらいに教養がある人たちなら、そういう感性はもっているはず。

だがターガリエンがヴァリリア語を習得する意味は、文化的なものだけではない。

何よりもドラゴンを従わせるためにこそ、ヴァリリア語は必要なのだ。ドラゴンとドラゴンライダーの間には独特の絆があるというが、それを育むためにも、そしてドラゴンに指示を出すためにも、ヴァリリア語を使わなければならない。戦場でドラゴンに乗ったまま辞書をひくわけにはいかないのだ。

エイゴンはサンファイアに対して「ドラカリス」くらいしかヴァリリア語で呼びかけていない。あとは全部英語でしゃべってやんの。Faster! じゃ通じないっつーの。サンファイアはだいぶエイゴンに懐いていたようだったから、英語で話しても気持ちはある程度通じていたのだろうけども。

一方のエイモンドは、ほとんど完全にヴァーガーを操っていた。もう、意図せずルケアリーズを殺してしまったときのエイモンドではない。彼は完全にエイゴンを殺る気だった。ヴァーガーもエイモンドの意図どおりにふるまった。

(最後のシーンでエイモンドは剣を抜いていたから、エイゴンにとどめを刺そうとしていたよね? クリストンに声をかけられなかったらやっていたはず。なおヴァリリアンナイフはエイモンドのもとに渡った)

今1-10を見直すと、ルークとアラックスを襲うのを止めようとしたエイモンドは、パニックになって英語でしゃべってるんだよな。No, no, no! Serve me! って。そりゃ通じませんわ! 彼もきっとあのときのことを反省して、ヴァリリア語に磨きをかけたのだろう。

語学力が戦闘力となるファンタジー叙事詩、斬新だな……。

 

 

続・エイゴンの悲哀

じゃあ今度はエイゴンの視点に入ってみよう。何が見える? 彼にとって「世界」とは何?

前回わたしはエイゴンの悲哀についてこう書いている。

2-2のラスト直前でエイゴンがしくしく泣いていたのはジェヘアリーズを亡くした悲しみのためだけかと思っていたけど、彼にとっての直前のシーンを考えると、「ヴィセーリスは自分を王に指名したというのはチームグリーンが生き延びるための嘘だった」「自分はチームグリーンに利用されているだけ」「父親も祖父も自分を愛してくれていない」「それどころか見下されている」みたいなことを考えてしまい(もちろん一部は勘違いなのだが)、ショックの涙も含まれているのではないかという気がする。

 

「鏡を見つめる」というシーンが意味するものは、一般的には「内省」である。自分自身を見つめなおし、自分のあるべき姿は本当にこれなのか、このままの道を進んでいていいのか。あの一瞬の真顔は、やはりオットーの嘲りが響いているのではないかと思わせた。

母の思い出に誓って「ハウスオブザドラゴン」2-3感想 - なぜ面白いのか

 

今回のエイゴンを見ていて、ああやっぱりそうだったんだと思った。

こんなにもデナーリスと正反対のメンタルのターガリエンが存在したんだな。

デナーリスは恋人にどれほど愛されても、すべての民に愛され、受け入れられなければ意味がないと思っていた。だからこそ、自分を受け入れないキングスランディングの民をことごとく焼いた。

エイゴンは民にどれほど愛されても(民が男子の王であるエイゴンをそこそこ支持しているという実感はあったはず)、家族に愛され、受け入れられなければ意味がなかったのか。

おそらく彼は、誰よりも父親に認められたかったに違いない。子供の頃から、父親はエイゴンに何の興味も示さなかった。数々の「奇行」に走って周囲の大人を困らせるのなんて、親の注意を引きたい典型的な子供の行動だ。

だがヴィセーリスにとって「愛する我が子」はレイニラひとりであり、自分は視界に入ることすらできない。周囲の大人たちが男子であるエイゴンこそを王にすべきだと言っているのを、エイゴンだってわかっていただろうに。

余談だが、ヴィセーリスはレイニラを「王の器にふさわしい」から後継者に選んだわけではなく、何よりもエイマへの罪悪感からレイニラに固執したのだと思っている。

あれだけ家族の本音が何も見えておらず、レイニラ以外の子供を見ようともせず(つまりはレイニラが真に王の器にふさわしいか真剣に比較検討しようともしなかったということ)、デイモンの表面的な態度だけを見て彼への評価を二転三転してきた、目が曇りまくりの色眼鏡かけまくりの王に、王の器どうこうを判断できるわけがなく、本人に判断する気があったとも思えない。

まあ王位候補者がレイニラ、デイモン、エイゴンの3人なら、消去法でもレイニラになると思うが。

 

王になればみんなから愛され、認められると思っていたのに、誰も自分を敬わない。「舐められたらおしまい」みたいなひと昔前の不良中学生みたいな価値観を持つエイゴンにとって、それは耐え難いことだった。

でも、ここまで何度立ち止まるチャンスがあったんだろう。アリセントもオットーもメイスターもそれ以外の教育係も、何度彼に適切なふるまい方と教養を授けようとしたんだろう。もしエイゴンが今日初めてわがままを言って周囲を困らせたのだとしたら、アリセントの言い方はひどいと感じたかもしれない。

でもエイゴンはS1から何度も何度も同じことをして、同じようにたしなめられてきたはず。しかし彼が注意を引きたいのは結局ヴィセーリスだったのだとしたら、ヴィセーリス以外の誰の言葉も届くまい。そして肝心のヴィセーリスは、徹底的に無関心だ。エイゴンがヴィセーリスの形見のヴァリリアンナイフを戦場にまで大事に持っていったことが、今は悲しい。あれはエイゴンなりの、ヴィセーリスへの執着を表していたのだろうに。

オットーに、エイモンドに、そしてアリセントに自分の無能をこれでもかというほど突きつけられて、彼は彼なりに「内省」したのだろう。自分自身を見つめなおし、自分のあるべき姿は本当にこれなのか、このままの道を進んでいていいのか、あの鏡を見ながら彼なりに真剣に考えたのだろう。

そして出した結論がアレである。

この子は、自分の力を誇示して周囲の大人に構ってもらうことでしか自尊心を満たせない。「何もしない」なんてできなかった。愚かで、そしてかわいそうな子。アリセントたちが多くの犠牲を払って彼を王にしなければ、チームブラックによって真っ先に自分が殺されていただろうこともきっとわかっていない。

 

あるいはこれが、ラリスくんの狙いだったのだろうか?

エイゴンがチームグリーンの存続にとって明らかに足枷であることは、もはや誰の目にも明らかだった。もう少し理と利で動き、言葉の通じる御しやすいトップにすげかえることをラリスくんも望んでいたりしなかっただろうか?

だからこそ前回、王が戦に出ればアリセントとエイモンドが王にかわって統治するなどとエイゴンに吹き込んだのかもしれない。

いや、どうかな……。あのやりとり自体は、王の無茶を止める意図があってのものだったように聞こえた。ただエイゴンに、アリセントとエイモンドへの疑念を植えつける意図があったのは間違いない。

2-1のラリスくんは、エイゴンにオットーへの反発心を植えつけた。その後オットーはクビになった。次の手としてエイゴンに、アリセントとエイモンドへの疑念を植えつけた。むしろアリセントとエイモンドを追い出したかったのだろうか?

考えてみると、ラリスくんにとってエイゴンみたいな物事を深く考えられない子(婉曲表現)を手玉にとるなんて、むしろわけもないことだった。めっちゃ御しやすいトップだったわ。この子がトップに居続ける方が、王の手への道はスムーズだったかもしれない。

う~~~~ん、わかんねーな。ラリスくんは王の手になりたいのだろうと思うけど、それが最終目標かと言われるとまだ全然わからない。国家を存続させたいのか(ヴァリスタイプ)、それとも乱世を導きたいのか(小指タイプ)、それとも自身が出世できれば何でもいいのか。

 

しかしエイゴンへの同情は大きいものの、つくづくこんな上司の下で働きたくないとは思う。「俺の承認なくあれこれ決めやがって!」「逐一報告しろ!」と言っておきながら、部下が細々とした報告までするようになったら「You bore me」である。ひどすぎ。やってらんねー(タイランドラニスター視点)。

 

 

レイニス退場

1-1からいる主要キャラの退場はこれが初めてか。いよいよ終わりの始まりだなあ。

原作を読んだときは「割と早々に退場しちゃうんだな」くらいに思っていたけど、こうして両陣営の面々とその言動を見ながら視聴していると、レイニスというある程度冷静で場を制御できるキャラクターが早々に退場したせいで、チームブラックは統制を失っていっそうぐだぐだになり、歯止めもきかなくなり、戦争が加速し、物語がエキサイティングになるのであるなあと思ったりした。

双竜の舞踏の結果、ドラゴンが滅びターガリエン一族も死にまくることになるのは「炎と血」執筆前から決まっているのだから、まともな人から死んでいかないとその結末に追いつかないんだよな。

 

レイニスについては、1-9で丸腰の女性に対して全力の武力で脅し、ドラゴンが民を踏みつぶすことに何の躊躇もないのを見て心底失望し、まさにターガリエンの女だよなあと思って見ていた。この血が後にキングスランディングを灰にするのだと改めて思わせてくれたものである。

当時の感想はこちら↓

シングルマザー、起つ「ハウスオブザドラゴン」1-9感想 - なぜ面白いのか

今回も自身とメレイズが兵を焼いたあとの悲惨な戦場を見て、まったく表情を変えなかった。暴力で対立相手を叩き潰し、民を犠牲にすることに疑問を持っていない。強者が弱者を犠牲にするのは当然だと思っている。

だが、とはいえ、レイニスはチームブラックの中で(あくまで比較級ではあるが)「良心」を担っていたのも間違いない。彼女がいなければレイニラはもっと孤立無援状態だったし、城を空けてキングスランディングに行く決断もできなかったかもしれない。というかもっと早く開戦していただろう。

エイゴンの退場によりチームグリーンは意思統一過程が改善され戦力は上がると思われるが(正直すぎる感想)、レイニスの退場によりチームブラックが受けるダメージは計り知れない。

両陣営が失ったドラゴンがそれぞれ1頭ずつであることを考えると、ここでパワーバランスに変化が出るのではないだろうか。

 

 

灰色のマント

今回何がつらいって、戦後のサー・クリストンのマントの色よ……。彼のマントが白に戻ることはこの先あるのだろうか。

次に入るのはクリストンの視点だ。

彼はここまで破竹の快進撃を続けてきた。城を落としては味方につけ、戦力はキングスランディングを出たときの3倍にまでなったという。

せめてもの罪滅ぼしのつもりだろうか。前回「彼はこの戦争で死ぬかもしれないという覚悟を持って出兵している」と書いたけれど、より正確に言うならば「彼は死に場所を探して戦場に出た」なのかもしれない。「名誉ある生」がもはや望むべくもないのなら、せめて「名誉ある死」を望むのは、騎士という身分を考えれば理解できる。

純潔の誓いを破ったことは何をしたって取り戻せない。せめてその愛は嘘ではなかったと思いたかったのに、レイニラはそれを許してくれなかった。

王の楯として守るべき人を守れず、世継ぎをみすみす死なせてしまった。

軽率な作戦をたて、アリックを無駄死にさせてしまった。

その末に先陣を切って出陣するのだから、やはり死に場所を探していたと見るのが普通だろうか。王の楯にして王の手なのだから、小評議会に留まったってよかっただろうに。むしろ王の手を不在のままにしていると小評議会が滞るし、王の近くにいる楯は練度もモラルも低い坊やになってしまったし、留まるべきだったのではないか。

王の手がわざわざ戦場へ行くからには、前線で指揮をとり、作戦を立てるつもりではあったのだろう。これまでに抱いてきた罪悪感もあって、せめて今回は良い作戦を立て、必ずチームグリーンに勝利をもたらすのだという意気込みもあったはずだ。

実際、クリストンは戦士としてだけでなく指揮官としても有能で、その作戦はうまくいくように思われた。王さえ来なければ。

クリストン視点でこの戦争を見ると、自分の立てた作戦で、守るべき王とドラゴンを犠牲にしてしまったことになる。その上、自陣営の兵も多数犠牲になった。

「ドラゴンを戦場に招く」ことがどういう結果になるのか、クリストンは正確に想像できていなかったに違いない。ドラゴンは足元を見ない。敵も味方もなく蹂躙する。

ここまで進軍をともにしてきた兵たちは焼けただれ、炭化して横たわっている。それは決してクリストンのせいではないが、彼は「自分のせいだ」と感じるだろう。

王がああなってしまったことについても、彼は自分を責めるだろう。最後のシーンで絶望するクリストンの瞳はいっそう暗く、光がない。

何よりも、クリストンはこの状況で生き残ってしまった。決して彼が悪いわけではない。誰が生き残るかはドラゴンの匙加減次第の状況だったのだから。でも「これだけ多くの犠牲を出し、王とドラゴンまで犠牲になった戦場で、指揮官たる自分が生き残った」ということを彼が「新たな罪」だと感じるのは容易に想像できる。

その心境を端的に表しているのが、あの灰色に染まったマントである。つらい。アリセントのハンカチは、今も白いだろうか?

彼には「名誉ある死」すらないのだろうか。

斬首されたあのおじさんは「お前も同じ死に方をする」的なことを言っていたけど、その言葉は予言になってしまうのだろうか。彼らの(というか近代以前の)価値観で斬首は「名誉ある死」に含まれるはずだが。

 

 

ホーンテッドハレンホー

家族が血みどろの争いをしている中、デイモンはひとりルイージマンションに置かれていた(つい先日マリオの映画を見直したばかりなんだよな)。何なのあの建物。呪われすぎ。

むしろあそこで平然と暮らしているハイタワーさんのメンタルが頑丈すぎ。あんなマイホームは嫌だしあんな客間も嫌だ。

デイモンは最初に来たときは毒殺を恐れて肉も食べなかったのに、あんなにあやしいドリンクを一気飲みしてしまっている。ハレンホールに飲まれすぎ。いや、あれはアリスがドリンクを作りながら自分の手を舐めるのを見ていたから、毒はないと思ったってことなのか?

あんなに怖いものなしだったデイモンが、ルイージマンションにガチで心身をすり減らしていくのを見るのは奇妙な感じだ。

結局、彼は罪悪感に押しつぶされるのだろうか。

レイニラへの罪悪感はきっと、ジェヘアリーズ暗殺で彼女の評判を落としたことだけに限らない。子供だった彼女に真剣に向き合わなかったこと。悪い遊びを教えて彼女の生き方を捻じ曲げたこと(デイモンが何も教えなかった場合も彼女が自分で外を見に行く可能性はなきにしもあらずだが、結婚相手や性生活については今とだいぶ違っていたのではないだろうか)。そして今の彼女とも真剣に向き合っていないこと。

最初は「ともに王位を継げない者同士」だったレイニラ(レイニスの前例から、弟さえ産まれればレイニラは王位を継げないはずだった)への親近感から距離を縮めたのだったろうに、彼女が王位を継ぐことになり、デイモンはどれほど彼女に鬱屈した気持ちを抱えていたか。その感情を彼女本人にぶつけてこなかったとは、デイモン自身も言うまい。

レーナーに対しても、レイナやベイラに対しても、罪悪感はあったのだ。だからこそ、娘の幻影を視てしまう。

1-10の感想で、わたしはこう書いていた。

デイモンは割と世界各地に恨みをかっていそうで、はたしてそれがこの先どう影響してくるのかも気になる。キングスランディングの娼館とか、アリン関係者とか(アリンのところのお嬢さんを娶って殺した件で騎士から恨まれている)、あとヴェラリオン関係者とかでデイモンガチギレクラブが結成できそうではないか。

デイモンガチギレクラブが結成できそうなことを、デイモン自身もそこそこ自覚していたんだな。そうでなければたとえハレンホールが本当に呪われているとしても、こんな形で彼に襲いかからないはず。

デイモンはいまだにチームブラックに連絡していない。地方に派遣されておいてほうれんそうもできないとか、マジで戦力になってない。

おそらく彼自身がまだレイニラに対する態度を決めきれていない。罪悪感ゆえに、そしていまだに抱えている鬱屈した感情ゆえに。

結局デイモンも兄に愛されたかったのかな。エイゴンとデイモンというふたりの男から愛を求められるヴィセーリス、しかしその愛はレイニラにしか向いていないのだった。そう書くと、エイゴンとデイモンはうまく対になっている。

そして同時に、エイモンドとデイモンも対となる存在だ。同じ次男という立場に生まれ、デイモンに憧れたエイモンドは、強大なドラゴンに乗りついに国のトップの座を得る(たぶん次回)。今のエイモンドは、デイモンに対して優越感があるだろうか? デイモンはエイモンドを見て何を感じるだろうか?

何がどう引き金になってデイモンを破滅させるのか、わくわくで見守りたいところ。

でもホラー演出はほどほどにしてほしい。

 

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