なぜ面白いのか

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「ハンドレッドライン Hundred Line 最終防衛学園」こういう話だったのかな?

ハンドレッドライン」をクリアしてからしばらくたった。

現在わたしは絶賛龍ファクで平和な世界を冒険しているが、一方で「ハンドレッドライン」のストーリーがなかなか腑に落ちず、もやもやが残る日々を送っていた。

しかしある晩、寝ようとしてオフトンに入ったときにふと何かが繋がって、自分が一応納得する説が浮かんだ。あくまで自分を暫定的に納得させてすっきりするための説だが、せっかく思いついたのでここに書いて共有してみることにする。

以下、すべてのエンディングをふまえたネタバレにつき、未クリアの方はお帰りください。

初めてこのブログに来られた方は、この記事から順番に読むとわかりやすいのではないかと。

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ハンドレッドライン」の初回記事はこちらから。

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前提:100のエンディングの中に真エンドはない

まず前提として、わたしはこの100のエンディングの中にいわゆる「真エンド」はないと思っている。ここでの「真エンド」とは、すべての謎を解明してループを終わらせるような結末のことである。

それに最も近いのはエンディング055「SF編:永遠の17人」であろうか。しかしこのルートでは、真相解明編で明らかになった設定にはノータッチである。

一方で「真相解明」を謳ったエンディング001「真相解明編:さようなら最終防衛学園」は、一応の設定は明かされたものの人工天体は爆発するし特防隊も希ちゃん以外全滅だし、ループが終わった様子はまったくない。というかループ云々の話にはノータッチである。

どれもこれもあちらを立てればこちらが立たず。この状態についてクリア直後のわたしは、

つまり、プレイヤーが好きなエンディングを「これが自分の真エンド」ということにしていいし、「ここでおしまい」と思ったところがループの終わりということなのだろう。

「ハンドレッドライン Hundred Line 最終防衛学園」全エンドクリア後感想 - なぜ面白いのか

と書いて、そのゲームデザイン自体は面白く受け止めている。自分なりの真エンドを選ぶなら、ということであれこれ書いたりもした。

さらに「100のエンディングの中に真エンドはない」根拠として、これもあげている。

100のエンディングは、プレイヤーがゲームを続ける限り、いずれもループしうるのだ。だとしたらどのエンディングも「これで最後」と言えるものではない。

「ハンドレッドライン Hundred Line 最終防衛学園」全エンドクリア後感想 - なぜ面白いのか

 

ゲームデザイン上、真エンドが存在し得ない構造になってるっていう話。

だったらもう自分を納得させるためには、結末どころか「この話はこういう話だったんだよ!!!!1」という根本の部分から自分の妄想で補ってもいいんじゃない? という発想の飛躍が起こった。

もはや製作側の意図など知らぬ。わたしがわたしを納得させることが最優先事項である。

 

ではどういう話だったのか

というわけで以下、妄想を語っていくよ。

まずこの100回のループはすべて、異血兵器を起動する前に行われているシミュレーションだった。時間も物資も足りない中で記憶や人格の調整をした上にバグまであった(衛人くん)けど、シミュレーションは何回もやった的なことを言っていたはずだ。我々がプレイしたのはまさにその「シミュレーション」部分。

AIを使ったシミュレーションならば、少しずつ状況や条件を変えての試行はお手のもので、100日×100回のループにかかる時間も数秒なのではないか。

これだったら、およそ人類の存亡を懸けたプロジェクトだとは思えないあの人格の数々にも一応納得できる。まともな人格を備えたメンバーでのシミュレーションは、もうとっくにやりまくったのだ。そしてことごとく失敗した。それも毎回最初の20日くらいで全滅するみたいな、手のほどこしようもない失敗。

まじめな人格だけではダメ、もっと多様性がないとダメ、もっと極端なやつがいないとダメ、もっと自暴自棄なやつがいないとダメ、もっと殺しに慣れてるやつがいないとダメ、一人くらいは地球人も入れてみては……みたいな感じで、メンバーの設定を様々に変更しながら試行を重ねていく。

で、どこかで半ばヤケクソになって「もういっそ人類を滅ぼそうとする変数を入れてみては?」という発想になったのかも。普通に考えれば、衛人くんは反対派の仕込んだバグ説が最も現実的だと思うが、バグではなく本当にああいう設定で作られていた方がわたし好みなので。

そして開発末期、全然うまくいかないシミュレーションに疲れ果てた開発者は、休憩中に「時をかける少女」を視聴する。そこでこのシミュレーションの中に、前回の試行で起こったことを記憶している人格を入れることを思いつく。そうしたら初めて50日生存を達成した! みたいな。

最初は比留子さんだけが記憶保持者で、この状態でさらに調整を重ねていくうちに、50日以上を安定して超えられるようになり、100日目に到達するケースも出始めた。しかしこの段階では基本的に100日目に全滅エンド。このへんで、敵の異血に作用する毒薬だの爆弾だのを発明できるキャラがいた方がいいことも確定する。

比留子さんは経験した記憶が重なっていくタイプのタイムルーパーだが、この手のフィクションに触れたことがあるなら容易に想像がつくように、何年分もの記憶を重ねるうちに、タイムルーパーは狂っていく。最初は「時をかける少女」の主人公みたいだった比留子さんが、徐々に脳漿ぶちまけ戦闘狂になっていった。

そこで開発は「狂わないタイムルーパー」を考案する。「1周目の後悔だけを引きずったまま周回を続ける、常に2周目状態のキャラクター」である。

この「常に2周目状態のキャラクター」を設定するために用意されたのが、我々のプレイした「1周目」となる。

キャラ語りの記事ではわたしはこんなふうに書いている。

最初から拓海くんを「モチベーションと戦闘力の高いリーダー設定」にするために「1周目の記憶」を入れておきました的な。記憶だけでなく、赤子クローンが存在するのなら、そのうちの一人の異血を拓海くんに吸収させておいてもいい(実際に人工天体でそういう実験が行われていた可能性は高い)。

「ハンドレッドライン Hundred Line 最終防衛学園」全エンドクリア後キャラ語り1 - なぜ面白いのか

 

「2周目設定」の拓海くんを創るために、赤子クローンの異血を吸収させた状態の拓海くんをシミュレートするくらいいけるっしょ。

開発者側は、フトゥールムの文化や歴史、ヴェシネスの性格などについても詳細な調査を行っていた。地球人の方が技術力は上のようだし、諜報活動はかなりうまくいっていたと思われる。図書館にギィの生態を著した本があったくらいだし。

その上でAIが導き出した「2周目」は、部隊長のパワーアップと、ヴェシネスがほかの部隊長を喰いまくる展開である。

「どうすんのこれ?」「こっちが異血吸収させたなら、あっちもやり始めるのは普通にあり得るでしょ。とりあえずこの設定のまま100回シミュレーションしてみましょ」みたいな流れで始まったのが、我々のプレイした2周目以降である。実際には、この開発者側のやりとりとか設定アイデア出しとかも全部AIの内部で行われていたりして。

 

……というのがわたしの暫定的結論。

この説のいいところは、作中気になった点が大体「いやーそれはもちろん考慮した上で今回よりも前にシミュレーションしたんだけど、その設定でいこうとすると20日目くらいで全滅エンドなんだよね」で片づけられる点である。

たとえばなんでSIREIやNIGOUにバックアップがないの? とか、なんで緊急時の人工天体との連絡手段を用意しておかなかったの? とか。バックアップがある状態だと、なんでかわかんないけど全滅エンドしかないんすよ。

あとなんで拓海くんは「1日目」よりも前に戻ろうとしないの? とか、なんで途中で「失敗した! やりなおし」と思うことがないの? みたいな疑問についても、「今はシミュレーション中なので思考が枠外に出ないようにコントロールされてる」ですむかなっていう。

一部キャラの言動がルートごとにちぐはぐでは? と思った部分も、「シミュレーション中なので周回ごとにAIが設定いじってます」でOKだし。

たぶんこのシミュレーションの後、さらに調整を重ねて異血兵器を完成させて、実戦に送り出すことになるのでは。

シミュレーションの中に「おばさん」やリープ装置が出てきたことで、開発者たちもAIが「特定のメンバーを生存させて100日目を迎えることでタイムマシーンが発明される」と判断したことに気づくのでは。そのへんがヒントになって、異血兵器を完成までブラッシュアップさせられるのではないかな。

あとここまでシミュレーションが進めば、開発者に叡智の異血持ちを入れることで飛躍的に開発が進むと気づけるはず。

そして「全員生存でループ終了」となるのもある程度は納得だ。このシミュレーションは、開発側が満足する形で終わる結果を安定して出せるようになることが目的だから。たぶん開発側は地球人がフトゥールムに移住できる環境さえ整えば、特防隊の生死はそこまで重視しないだろうけど、脱出ポッドを用意してあるあたり、一応彼らの生存も目標の一つなのだろう(異血の能力は戦後の社会においても有効だろうし)。

だから全員生存した状態でフトゥールムを滅ぼせるようになったら、シミュレーションは終了してループも終わるっていう。

ただ、それで兵器が完成したらやっぱりフトゥールムを全滅させてしまうことになるのかもしれない。あるいは、現実になった途端にまったくシミュレーション通りにいかなくなって、結局全滅するのかもしれない。

そういう意味で未来が「不定」なのは、わたしとしてはもやもやの対象にはならないので、まあよし。

なんかあまりにも自分が納得できればOKな記事になっちゃったけど、ここはもともとそういうブログだった。じゃあこれもネットの海に放流して、本日はおしまい。

 

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