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絵描きの名にかけてこの事件を解決する!「Pentiment」プレイ日記1

フラクトゥールを読めるようになっていてよかった

噂を聞いて即買いした「Pentiment」を始めてみた。

1518年、バイエルンの大修道院で起こった事件をめぐる物語と聞いたら、いてもたってもいられないじゃないの。しかも主人公が写字工までやる画家。その名もアンドレアス・マーラー(Maler = malen する人、つまり絵を描く人)(名字とは代々続く家業を表していた時代)。

始めてみると、この画面作りも台詞の出し方もUIも何もかもが凝っていて、紙質が良すぎること以外はかなり、資料に基づいた描写に努められている。触っているだけであまりにも楽しい。ヨーロッパ近世史が好きな人にはたまらんやつ。

マルティン・ルター教授が 95 Thesen をヴィッテンベルクの教会の門に貼りだしたのが1517年。今作の舞台はその一年後ということになる。ルター本人も教会関係者もそれ以外の人も、まだ誰もこれを「宗教改革」だとは思ってなかった時代だ。ルターがしたのはあくまで「教会内部からの改善」の提案で、ルター以前にも同様の指摘をした人は何人もいた。

が、あんな大ごとになったのは当然、ルターが初めてである。ルターがあれほどうまくいった要因は、教会の共通言語であるラテン語ではなくみんなの話せるドイツ語で語ったからだとか、グーテンベルク式の活版印刷が普及しつつあったからだとか(ルター派神学者カトリック神学者も、路上での演説がその日のうちに印刷されてすぐにほかの町まで広まった)、いろいろ言われていてひとつには絞れない。

95 Thesen が貼りだされてから、そのニュースがドイツ中を駆け巡るのに、わずか5日だったかな? ネットもなければ車もない時代に、驚異的なスピードだ。もちろんバイエルンにもそのニュースは届いて、大騒ぎになった。バイエルンカトリックが非常に強いところで、アウクスブルクの宗教和議でもカトリックが選択されている。バイエルン大公家も、対抗宗教改革期のカトリックを支えるのにずいぶん貢献したものである。

しかしルター派カルヴァン派の中には過激派もいて、多くの教会が打ちこわしにあい、火をつけられ、そのまま再建されることなく廃業(寺だと「廃寺」だけど教会を廃業するのって日本語で何ていうんだろ)したところも少なくない。現代ドイツに残る「由緒ある教会」たちは皆、宗教改革期をどうにかして生き残ったものだ。

生き残った教会や修道院は、神学上の理論武装を固めるだけでなく、地元の信者や遠方からの巡礼者を集めるべく広報活動も成功したところである。広報に失敗したところは廃業の危機だったので、ルター派の広報戦略に見習うべきところはめっちゃ見習った。カトリック側もめちゃくちゃ対抗宗教改革を頑張ったからこそ、今もドイツ南部のきれいな教会が観光客を集めている。

が、そんな未来を、このゲームの登場人物はまだ全然知らない。この後の時代のカトリックの苦労を知っているだけに、序盤の展開を見ていると「きみらこのままじゃ廃業やで……」と言いたくなる。まあこんな状況だったからこそルター先生も「これおかしいんちゃいますの」を95個も書いたんだよな。

あまりにも早口なオタクになっているが、こんなゲームをやる人もこんなゲームの感想をわざわざ探す人も基本的に同類だと思うので(偏見がすぎる??)まあええじゃろ。

当初はサクっとクリアできるADVだと思っていたのだけど、事件が起こるまでですでに結構時間がかかったので、これはもしかしてそこそこボリュームがあるな? と察した。分岐もかなりありそうだし、そもそもキャラクリ要素がある。うちのアンドレアスはイタリア出身で元神学専攻で植物にも詳しいよ!

となると、これは記録を残しておいた方が面白いやつだな? ということで、ADVだとクリア後感想だけ書くことが多いのだが、これについてはプレイ日記を書くことにした。

問題は、パラノマサイトの続編が迫っているのに発売日までにクリアできないかもしれないということである。Pentiment のボリューム次第だけど、後回しになるかも。ネタバレを踏まないように気をつけよう。

申し訳程度にゲームとしてのレビュー的なことをネタバレなしで書いておくと、今のところこれまでにやったゲームの中では「バルダーズゲート3」と「デトロイトビカムヒューマン」を合わせたような印象。キャラクリによって変わる選択肢があったり、自分の選択で事件の展開が変わる(たぶん)ことがあったり。

本日は Pentiment の序盤、事件が起こって検死をしたところまでの感想とわたしの選択記録。以下はネタバレ注意で!

 

 

アーメンとアーメンの二択

 

給料前払い問題

『阿呆船』やないか!! というつっこみとともに始まった初日。

アンドレアス・マーラーはいきなり大家から家賃の前払いを要求される。税金が上がって苦しいらしい。でもアンドレアスの方もお金に余裕があるわけではない。修道院で誰かに給料の前払いを頼もうと決めたが、誰が誰なのか全然把握できておらず、最初のチャンスはスルーしてしまった。

もう詰んだかと思ったが、聖具保管担当者のマチューに敬意を見せつつお願いしたら、前払いに応じてくれた。

やったー

最初はこのゲームにはお金を稼ぐ要素があるのかと思ったが、UIの中にそれっぽい数値は見つからず、単にクエスト上で処理される「お金」だとわかった途端に前払いに積極的に動くアンドレアスである(お金を貯めて装備品や消耗品を買うような要素のあるゲームだと、お金を稼ぐ手段と出費のバランスを見ながら考える必要があるのでもうちょっと慎重になる)。

大家に払ったのは翌日になってしまったが、大変感謝された。この後急にアンドレアス自身にお金が必要になるとかの展開がなければいいのだが。

 

 

キャラクリ

RPGでのキャラクリだと、外見以外ではSTRやINTなどのステータスに数値を割り振ることがある。が、アンドレアスは基本的にINT全振りキャラなので、何をどうしても脳筋プレイとかは無理そう。

わたしの場合、ドイツ語→読める、フランス語→初心者、イタリア語→音楽用語しか読めない、ラテン語→単位はとったが大体忘れた、ギリシャ語→未履修 なので、わたしの知識を補ってくれそうな元イタリア住まいのアンドレアスにした。ちょいちょいイタリアでの思い出話を出してくれている。

さらに気質を「本の虫」にすることで、さらなるINTバフを積んでみた。今のところ、これはかなり利いている。本をめぐる展開がまあまあ出てくるから、これを選んでよかったかも。「ごろつき」を選んだらどんなアンドレアスになるのかは気になるが、やめておいた。

アンドレアスは修士の学位まで持っているらしい。舞台が修道院である以上、専攻は神学にしておいた方が何かと便利ではないかと思い、神学を選択。でもこのあと事件が起こることを考えると、法学や医学を選んでも活躍できただろうな。

神学を選んでも、アンドレアスの信仰スタンスはプレイヤーが自由に決められそう。今のところ、うちのアンドレアスはルターの主張にも理解を示して、修道院のえらいひとをブチ切れさせている。

得意分野も選べるらしい。本来の意味でのリベラルアーツ(Artes Liberales)だねえ。

ここは結構迷ったが、写字工もやっているということなのでまずはラテン語を選んだ。自分が写してる文章の意味はちゃんと理解できてる人であってほしい。

もうひとつ選ぶことになりさらに悩んだが、当時の職人画家であれば数学的素養や自然科学の知識はある程度必須だっただろうから、「天地」を選択。とはいえニュートンの『プリンキピア』が1687年刊行なので、近代物理学はまだ存在しない時代。

こうしてできあがったアンドレアス・マーラーがこちら。

いい感じ。決める項目はこれで全部かな?

会話中に、このプロフィールにもとづいた発言や選択肢が頻繁に出てくるので、キャラクリした甲斐がある。このプロフィールでないと入手できない情報だろうな、みたいなのもある。もしかして周回前提の作りなのだろうか。

アンドレアスに関して今思っていることは、「マスター」ではなく「マイスター」と訳してほしいという点だ。「マイスター」は現代まで続く厳密な制度にもとづいた国家資格のことなので。

 

 

1518年に、バイエルンの大修道院でルターの名前を出す男。何も起きないはずがなく……

ロレンツ・ロートフォーゲル(作中の固有名詞の訳し方が全然統一されてなくて混乱したので綴りを確認したところ、Rothvogel だったのでこのブログでは「ロートフォーゲル」で統一する。「赤い鳥」という意味の名前。彼のインナーが赤いのはそのためか)と初対面のときは、ずいぶん教養のある貴族だなあという感じだった。

ロートフォーゲルは『ヒストリア・タシエ』という本を修道院に寄贈しようとしている。ゲームの舞台タッシングの歴史を著した書らしい。

また彼は修道院に写本を依頼していた。活版印刷時代に、わざわざ手書きの写本を所望するのは何か事情があったのだろうか。しかも出来栄えにけちをつけている。

結局ピエロ修道士はこの仕事からはずされて、アンドレアスが担当することになった。修道院関係者は恥をかかされたと思い、ロレンツに対してもアンドレアスに対してもおかんむりである。

アンドレアス自身は、ピエロに対して申し訳なさそうにしていたが。ピエロとアンドレアスは、一種の師弟関係のようになっているのかな。アンドレアスは美術を専門的に学びいずれマイスターの資格をとる専門家だが、ピエロはピエロで信仰と経験に裏打ちされた審美眼がある様子。

で、この貴族が修道院での夕食でとんでもない発言をしてしまう。これはもう夕食どころじゃねーんだわ。胃が縮み上がるかと思ったわ。この「最後の晩餐」スタイルの構図も今は恐ろしい。

わたしの中で「おいやめろ、この晩餐はもうおしまいですね」派と「いいぞもっとやれ」派が殴り合ったところ、後者が勝利した。

バーン

言ったった!!! 言ったったぞ!!!

まあ直後にゲルノット神父がブチ切れて、晩餐は本当におしまいになった。

これは大荒れ不可避ですわ、と思いながら嵐の中帰宅し、その日は終了した。

しかし翌朝、出勤したら\死体が発見されました!/である。ロートフォーゲルが何者かに殺されていた。ここからが本番だ。

アンドレアスがこの事件の調査に乗り出すのは、ピエロ修道士に嫌疑がかけられて、このままだと処刑待ったなしだから。なるほどね。たしかにプレイヤー的にもピエロが処刑されるのは止めたい。彼には体格的・体力的に犯行は無理そうな気もするし。

 

 

あやしい要素が多すぎる

ピエロの嫌疑を晴らすためにも頑張りたいアンドレアスだが、これから調査を始めるにあたって、あやしい要素が多すぎるのが逆に不安である。

まずわたしが気になっているのは『ヒストリア・タシエ』の内容だ。何が書いてあったんだろう。この本はロレンツの死後にちゃんと譲渡されることになるだろうか? 今のタッシングを動かしている人たちにとって都合の悪いこと(聖モーリツ伝説の真相とか?)でもあったのか。その本が盗まれてロレンツが亡くなったのが、あまりにもきなくさい。わたしの中では動機の本命がこれだ。

この件で目撃されたのはマルティンだが、真相はいかに。

このときもらったブローチは何かの謎解きに使うのかな? ロレンツからの好感度が高いともらえるっぽい。

それからロレンツの依頼していた時祷書も気になっている。彼はなぜ手書きの写本をほしがったのか。ただのクラシック趣味?

晩餐でルターに言及したことそれ自体が事件の直接の原因ではない気がする。さすがにこの時代にはまだそこまで着火が早くないのではないか。でもロートフォーゲルはあの場であえて挑発的な言い方をしたようにも見える。その挑発が、誰かのスイッチを入れることになった可能性はある。

浮気がばれて妻に殺された、はあり得るかと思ったが、彼の妻はまだ到着してないんだった。この「若い女」の方が手をかけた可能性はなきにしもあらず。

でしょうね

もしかしてロレンツは行く先々であんな発言をしていたのだろうか。彼の身分は男爵だが、ヴィッテルスバッハ家の手でバイエルンからつまみ出されてないのが不思議だよ。

修道士たちが「持っていてはいけない本」をあれこれ所蔵しているのも気になる。廃棄処分されそうになっていた一冊は、アンドレアスが持ち出して遠くで処分すると説得して、廃棄を免れた。貴重な本が後世に残らず失われるのはできるだけ避けたい。たとえそれが当時のエロ本であっても、数百年もたてば貴重な歴史資料だ。

「神の使い」であるシスター・アマリーの「幻視」も不気味である。現代人が見れば、これは精神疾患の患者を「こういう形」で隔離しているのだとわかる。だからこそ、彼女が何を見聞きしてこういう「幻視」に至ったのかが気になってくる。

ロマのヴァーツラフもとんでもない爆弾発言でアンドレアスを仰天させた。そんな考えを口外したら、異端で処刑されかねんぞ。

暗号を解いてやってきたゲルハルトの墓が掘り返されていた。この件もあやしい。

あと地下室から図書館への抜け道も発見したが、まだ入ることができずにいる。

大変な手紙が出てきた。フェレンツがロレンツを見て動揺していたのは、この儀式のことが皆に知られたら処刑されてしまうから?

ウィドウ・ケンパリンがロレンツに呪いをかけようとしたのも、今振り返ると何だったんだろう。マザー・セシリアがアンドレアスを見てさっと帰っちゃったのも何だったんだろう。あやしい人が多すぎる。

殴り合いにSNSを使うようになった分、現代のアカデミアは進歩したもんだ。

ロレンツの解剖にあたっては、うちのアンドレアスには医学の心得がないので助手に徹した。でもスケッチの上手さはさすがの画家の腕前だった。元傭兵の修道士がいるおかげで、解剖はスムーズである。ああでも当時の「医学」はもっぱら内科を指していて、血を流すことになる外科医は不浄な存在だった。

……とか思ってたら、ちゃんと大学で医学を専攻した医師が現れた。「医師」と「外科医」は全然身分が違うことが示されている。ここはアンドレアスはずっと棚の後ろに隠れていてやりすごした。これ以上修道院と険悪になるのはまずい。

検死の結果、肋骨の間の刺し傷は自分で刺したものの上、致命傷ではなかったらしい。キリストがロンギヌスで刺された箇所……?

おい

「フランス病」は死因とは関係ないかもしれないが、「動機」にはなり得るんじゃないのか。

死因は頭部への打撃のようだ。拳より少し小さい鈍器で殴られたらしい。何だろうな。

このメモは何だろう。ダイイングメッセージにしては字が美しすぎる。完全にプロの写字工の仕事。アンドレアス的には「エドックやガイではない」らしい。でも、それ以外だとピエロってこと?? 内容的にはちょっとシスター・アマリーの幻視を思い出してしまう。

……という感じで、あやしいところが多すぎて、どこから手をつけてよいやら。まずはマザー・セシリアが『ヒストリア・タシエ』についても知っているという話なので、そこから聞いてみようかな。

 

現在の日記はこんな感じ。

今は全員があやしく見えて、まさしく「汝、隣人を疑え」状態になっている。ここから調査がんばるぞ!

 

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