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きみと生き残る呪い「パラノマサイト 伊勢人魚物語」クリア後感想

ねんがんの「パラノマサイト FILE 38 伊勢人魚物語」をクリアしたぞ!!

「楽しみにしていたシリーズ新作が期待以上の面白さだった」という喜びよ!

前作が傑作だっただけに、あれを超えられるか? という不安が少々あったわけだが、ちゃんと面白かった! しかも前作とは面白さのベクトルをちょっとだけ変えてきたので(テイストは前作に近い)、単純比較するのも難しいという贅沢な面白さ。

もしこれから購入を検討している人がこれを読んでいたら、

前作未プレイ→今作から始めても問題なし。でも多少のジャンプスケアが許容できるなら前作からやった方が面白さ5%増し。今作のギミック難易度は前作クリア済みプレイヤーを想定しているように感じたので、いずれ両方やるつもりなら前作からがおすすめ。

前作既プレイ→今すぐ買え。

という感じ。

前作のいいところ(多様なキャラが絡む群像劇・どこからかじってもおいしいバディたち・じっくり読みたくなるフレーバーテキスト・断片的な情報から全体像を想像する楽しみ・ゲームならではの体験)はきっちりふまえながら、さらに万人向けにチューンアップしてきた感じがある。群像劇は前作よりさらに複雑になったかもしれない。

ジャンプスケアの大幅減は本当にありがたかった。深夜にもプレイできるレベル。ちょっと怖いシーンもあったけど、今作は「絶対このあと怖いのがくる」と身構えさせてくれたので、突然の心停止は避けられる。基本的にホラーゲームに手を出さないわたしも問題なくクリアできた。

全体的に8月の青い空と海岸沿いの景色がメインだったので、画面が明るかった。話題はホラーだったりサスペンスだったりするのだけど、画面が明るいだけでだいぶ印象が明るくなる。キャラクターたちの置かれている状況は割とシビアだが、彼らのやりとりが適度に楽しげで、暗くなりすぎない。

そしてやりとりの中に下ネタが入ってないのがありがたい。ADVというジャンルにおいて下ネタが超特大ノイズなことがしばしばあるので。これはこのシリーズに対して信頼がおけるポイント。パロネタは結構あるけどうざくないレベルなのもありがたい。

ネタバレなしの感想はこれくらいにして、以下は最後までネタバレした感想。必ずすべてのエンディングを見た後にお読みください。また前作の内容にも言及していくので、前作もクリア後推奨です。

前作記事はこちらから。

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冒頭の案内人がこれ言ってるもんね

 

伊勢物語

冒頭引用文があると一気に格調高く見えていいよね。

「あなたが来たのか、私が行ったのかよく覚えてない。夢だったのか現実だったのか、寝ていたのか起きていたのかもよくわからない」みたいな意味。要はそんな夢見心地なくらい「君」が来てくれたことが嬉しかったということを伝えたい一首である。デート後のお礼メッセージ的な。

冒頭にこれだけバーンと「今作はこういう夢見心地な恋がテーマになってますよ」宣言を出しておいて、そこからの素茂栗漁太郎だからな、参っちゃうよな。

ここでも引用が

この歌の引用は里視点かなと思っている。そして必ずしも恋愛的な意味だけで言っているのではなさそう。でもおそらく同時に、戯(そばえ)と似の歌でもあるようにも思う。

クリア後の今は、むしろ戯と似の要素の方が強い気がしている。だからこそ「冒頭」にこの引用があるのでは。彼らの関係こそまさに「夢かうつつか」だったはずだ。どちらの視点においても。戯はこれからもずっと、悠久の時をこの感情を抱え続けて生きていくというのが、主人公たちのハッピーエンドと対照的だ。ここが本当にエモくて好きだ。

 

 

水口勇佐

今作もキャラ語りの形で感想を書いていこう。まずは主人公くん。「勇佐」という名前は you にして user ってことか?

この写真だけで泣きそう

彼のあのすっとぼけたキャラは、作品全体の雰囲気を明るくするのに大きく寄与してくれたが、結局のところあの結末を「彼があと795年間笑って生きていけるハッピーエンドなのだ」とプレイヤーに信じさせるためにこそ必要だったと思っている。

やっぱり異色なのよ、今作の不老不死像って。こんなハッピーな不老不死を見たのは初めてかもしれない。不老不死を「祝福」と受け止めながらひっそりと生きていくキャラの話は前にプレイしたことがあるが、あれとも明確に違う。いわゆる定番の悲劇の不老不死像からの脱却を明確に狙って作り上げたキャラクターである。

勇佐は自分が不老不死だと気づく前に、一度自死しようとしている。そして不老不死になったのだと気づいた後に、生を肯定できるようになっていく。この構図が本当に面白いキャラだったなあ。

前作の最初の主人公興家彰吾も、冒頭は普通の会社員かと思わせておきながら、徐々にぶっとんだ感性を披露してくれたものである。彼とはまた別の方向性で、プレイヤーを驚かせてくれる主人公だった。今作はプレイヤーに勇佐を応援したいと思わせられるかどうかがカギだったから、かなり計算の上であのキャラになったのだろう。

今作は島の若者四人組がみんな感じよくて、どの子も犠牲になってほしくないなと思いながら進めていたら、きっちり全員が犠牲になった。無慈悲。でも主人公が死亡してからがパラノマサイトの本番だということはわかっていたので、粛々とプレイした。

中盤に結命子から「八百命寿がもうひとりいる」と言われてから、冒頭の素潜り修行のことを思い出して「まさか!!!」と気づいたときの気持ちよさと納得感よ。あの修行、デスペナルティが一切なかったもんなあ。

次回作以降でシンタイ所属の勇佐も見てみたい気もしたが、この昭和に始まり令和に終わるハッピーエンドがとても気に入っているので、彼はもうぜひこのままで。

彼らが亀島で生き続けるためにはシンタイからのお目こぼしが必要だろう。たぶんお目こぼしどころか、直接間接のサポートもしてくれているのではないかなと想像している。本当に必要なときは島を出て力を貸す、みたいな契約をしていたりするのでは。

前作のUIはテレビモチーフだったのに対して、今作は水面モチーフ。あれは勇佐の意識が現実と竜宮の両方を行き来していることの示唆だったのかな。メニュー画面もバックログも、ストーリーチャートも「竜宮」側での現象である、みたいな。だからこそ戯の声も聞こえる、みたいな。

 

 

白浪里

最初に見たときは相撲取りみたいな名前だなあと思った、今作のヒロイン。

かなりの悲劇にまみれた人生だったはずだが、彼女のキャラクターのおかげで今作がウェットになりすぎずにすんだと言っても過言ではない。あまりにも偉大な才能のなせるわざである。やっぱり凡人の場合、どれだけ前向きに生きたとしても、知重レベルでしょ。里は稀に見る超人。

ゲーム冒頭で、この↑トンチキな名前が勇佐と里から連発される。それがまさかカップルの匂わせだったなんて……。わたしは「800年後のあなたには会えなくなっちゃった……」だけでは気づかなくて、エンディング5での勇佐の号泣を見てようやく理解した。

でもそれに気づいたとき、「800年後のあなた」という言葉とそこまでの彼らの言動のすべてが結びついて一気に霧が晴れるように理解できたの、あれは気持ちよかったなあ。そしてそこが結びついたら、あとは何をすればいいか、どこをたどっていけば話が進むのかが見えた。話の構成もヒントの出し方もお見事すぎる。

ファミコンに興味を持っている描写があったが、今後つかさの資金力で山の上に建ててもらった社に電気とwifi環境を構築し、令和の時代にはあらゆるハードとゲーミングPCを揃えてゲーム三昧の生活をしていてほしい。800年間もゲームの最新作を追い続けられるのは羨ましすぎる。

ちなみにこのゲーム、今までにやった中でいうとFF10にいちばん近かったと感じるのだけど、それを指摘すること自体が特大のネタバレになるのでおおっぴらには言えない。「ボーイミーツガールもの」であることもネタバレだもんな。

わたしは一度エンディング5(里が消える前夜にみんなで集まるエンド)を見て涙ぐんだ後、勇佐と里の過去の関係を知り、それからしばらく攻略に詰まって再度エンディング5に再訪し、号泣した。彼らの関係性を知ってからエンディング5を見直すと、ふたりの台詞の意味がやっと理解できて余計につらくなった。

ハッピーエンドで終わるゲームでよかったよ。そういう意味でもより「万人向け」のシナリオであった。

 

 

雲居アザミ

亀島の良心にして、勇佐とユーザーの心のオアシス。どんな場面でもアザミが一定のテンションで勇佐についていてくれるおかげで、わたしも安心できた。勇佐にとって、アザミが生きる理由のひとつになっているのもわかる。こんな友達を悲しませたくない。

中盤くらいまで、この子に裏切られたらダメージでかいな……と思っていたのだけど、後半はもうその展開はなさそうだと盤石の信頼をおいていた。

知重の呪いによる大惨事エンドの場合、いずれもアザミがつかさをかばって亡くなっている。あれを見てアザミからつかさへの好意を何となく感じていたので、エンディングで結ばれて嬉しかったな。なんかこう、ハッピーエンドの前段階でそういう感情が示されていたおかげで、よくある「余りものカップリング」ではなく、一応の納得感があるカップリングに見えるというか。

勇佐の意識が過去に戻っても和歌村と山科の死は回避できない(というか回避しようとしない)ので、島の厄介な権力者が排除されたところから再スタートできるのは、アザミにとって有利な展開かもしれない。

もし勇佐から和歌村への好感度がマックスだったら、和歌村の死を回避する道を模索してもらえたかもしれないが、勇佐からの好感度もユーザーからの好感度も低いキャラなのでスルーされちゃったな。ゲームの登場人物として生きるからには、主人公からの好感度には気を付けなくてはならない。

 

 

沫緒つかさ

昭和すぎる表現(なぜなら昭和だから)

すごい顔になって全力で泣く子。

名字があまりにも人魚っぽいので、実は人魚の末裔なのでは……と序盤は疑っていた。

山科と密かに接触して信頼を得ているあたり、相当できる子だ。ぜひ経営系の学部に進学して、会社をうまくきりもりしてほしい。

山科はラスボス的な大物かと思わせておいて、勇佐と里のハッピーエンドに必要な金を流し込むための舞台装置であった。前作でいうヒハクの社長以下のかませ野郎である。今作のラスボスは山科ではなく、平家の落武者でもなく、戯だもんな。

抄太郎とのことは、黒歴史として忘れていい。抄太郎、初登場シーンで「ナイヴズアウト」という映画のイケメンクソ野郎を思い出させたが、本当にイケメンクソ野郎だった。手のひら返しがすごすぎる。

勇佐だけでなくつかさも、里に生きる理由を与えたはず。だからこそ里は、勇佐以外では里に真っ先に自分の身上を明かした。そしてつかさがいたからこそ、知重の脅迫が成立した。里からつかさを含む島民への好感度が低ければ、あの脅迫に意味はなかったわけで。

前作でいうところのやっこちゃんのポジションを、アザミとつかさに分散させたことで、群像劇としての広がりが出たように思う。

 

 

結命子&双奴

なめどり発見器こと結命子さん。この能力、「都市伝説解体センター」の方のあざみじゃん? と思ったけど、彼女とは原理が全然違って面白い。あの目が「謎解き」にはそこまで役に立たないのも面白い。このゲームの主人公はあくまで勇佐なので。

八百命寿はほかの八百命寿を見分けられるという発言から彼女の正体に気づいたが、意外とあっさり正体が明かされた。

しかも今の結命子のボディは志貴一天斎が捧げたもので、その志貴一天斎は小型犬になっているとかいうとんでもない設定があっっっっっさり明かされ、仰天した。えっ、一天斎って男性??? 今はミサイル(「ゴーストトリック」の)みたいになってるってこと? 結命子のボディ、今どうなってるの!? 割烹着を着ているのは体形が出ないようにとかそういう……? 首の痣は一天斎のもの?

双奴の衣装、8月にその上着は暑くない……? とずっと思っていた。結命子の割烹着も暑そうだが。当時は今ほどの酷暑ではなかったとは言え、季節感がバグるコンビである。

双奴のキャラ説明画面に技の説明がいろいろ書いてあったので、これを使って活躍するのかと楽しみにしていたのだが、なかなかそれっぽい出番がない。設定だけ作ってあるの……? と思っていたら、最後にあれだもの。嬉しくなっちゃった。

特に「霊夜祭」は、見るからに亀島で使うことを想定したようなスキル。前作にも出てきたやつだし、見せ場で絶対出番あるで! と思っていた。

このふたりはプロフェッショナル感があって、頼もしく安心感があった。たぶん核心からはいちばん遠いところからのスタートで(亀島組は最初から八百命寿だし、アヴィ&キルケ組は最初から地図を持っていたし)、プロとしての知識・経験と情報収集能力のおかげで核心まで迫ったことになる。まあプロが最初から核心に迫っていたら、ゲームとして盛り上がる前に終了しちゃうもんな。

わたしはプロフェッショナルを感じさせてくれるキャラがジャンルを問わず好きなので、例に漏れず彼らもお気に入りだった。

ミヲちゃんや津詰さん、キルケちゃんも入れた、シンタイオールスターのスピンオフとか見てみたい。でもオールスターが必要となるようなシチュエーションを用意しようと思ったら、日本沈没レベルの呪詛を発生させる必要がありそうだ。

 

 

アヴィ&キルケ

時々首が折れていないか心配になるポーズをとるファンタジー作家。日本語に堪能すぎる。

伊勢・鳥羽・熊野は観光したことがあるので、彼らの足取りは懐かしく思いながら眺めた。だいぶ前の3月末に熊野を訪れたときは偶然桜の季節で、山一面の満開の桜が見られた。春の旅行先におすすめ。「熊野三山」という日本酒が猛烈にわたし好みで、現地で飲みまくった思い出。

アヴィがロマンを求めるファンタジー作家でなければ、呪詛珠も玉手箱も発見されず、里は消えるしかなかった。そしてアヴィがロマンを求めるファンタジー作家でなければ、里に玉手箱が渡ることもなかった。ロマン100%の動機で不老不死になろうとする里との相性抜群のキャラである。里とうまく接続するようにデザインされたキャラってことかな。

今作には呪詛珠は出てこないのかなと思いながら進めていたから、中盤でこいつが出てきて、前作であれだけ聴いたあの曲が流れ、テンション爆上がりだった。っぱこれよ。これがないと始まんねーわ。

前作キャラたちと比べて、アヴィは呪詛珠を手に入れてもあまり影響を受けていないように見えた。メンタルド安定おじさん。でも結局やむを得ず使うことになってるし、実際は多少の影響は受けていたのかな。

手鏡や名刺を捨てるシーンは、前作プレイヤーなら「持ち物」というコマンドが視界に入った瞬間に秒で気づいて投げ捨てるやつ。あれは嬉しかった。

そして、アヴィもまた不老不死の才能がぶっちぎった人だった。アヴィエンドまでプレイした人であれば、「この人なら800年をひとりで楽しく生きるなんて余裕すぎる」という感想に至るだろう。説得力がすごい。

それだけに、封印エンドがキツい。正当防衛でも呪詛を行使するのはだめかあ。

ただ逆に考えると、シンタイは八百命寿をまあまあ見逃してくれてるんだよな。勇佐も里もだし、場合によってはアヴィも見逃されることになる。たぶん見逃してもらえるルートでは、キルケちゃんがとりなしたりしたのではないか。どんな原則にも例外はあるってことだな。

この呪文もギリシャ語っぽい

キルケちゃんは頼りになったなあ。今作のミヲちゃん枠だけど、ミヲちゃんよりは子どもで、外国からやってきて日本文化を積極的に学んでいる感じでうまく描き分けられている。

ただ彼女はイギリスの名家出身という話だったが、「キルケ」という名前はギリシャ神話の魔女だし、Circe を「キルケ」と読ませるのは英語読みではないし、ブロンドに緑の瞳ってアングロサクソンには珍しくないか。どちらかというとケルト系とかゲルマン系の特徴では。まあヨーロッパは混血が進んでいるし、特に貴族であれば過去に大陸の貴族との婚姻もあっただろうし、あまり気にするところじゃないか。

アヴィの察しが悪い分、キルケちゃんは察しの良い子だった。すでにいろいろと難しい現場を渡り歩いているものと思われる。

 

 

我妙堂垂弦

発売後すでに100万回は言及されていると思うが、この霊能者……興家彰吾なのでは……。

わたしは倫理観ぶっ壊れ興家くんが大好きなので、次回作などで彼が再登場したらとても嬉しい。

「FILE 38」を読んだからな! ナカゴシよ! 「新たなパラノマサイトでお会いできる日」を待っているのはわたしも同じだからな!! 

今作で、パラノマサイトをシリーズとして育てていく気があるのはしっかり伝わったので、今後の展開を楽しみにしてる!!!!

 

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