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逆にもう海戦が心の癒し「ハウスオブザドラゴン」3-1感想

「ハウスオブザドラゴン」、今年もまたこのシーズンがやってきてしまったな……。

今年は配信と同時に見てすみやかに家を出るというスケジュールになりそうで、約束された鬱出勤である。初回から出勤中の脳内BGMは葬送行進曲よ。まあ視聴前から炎を見るより明らかなことだったが。

視聴前に内容を思い出すべく自分のブログ記事を読み返した。わたしの感想、荒れてんなー。品がないしオブラートに包む気がないし身も蓋もないし。このドラマが描くのはファンタジー世界だが、現代社会の諸課題とうまく絡められているから、あまり他人事とは思えないんだよね。

2年分大人になったところを見せつけるべく、今年はもう少しお上品にいこう(お上品な文が書けるとは言ってない)。

では以下、3-1のネタバレ感想!

 

 

 

 

自分のポジション

最初に自分のスタンスを明らかにしておこうと思ったが、2年前に書いたものがいい感じにまとまっていたのでそのまま引用する。

今日初めてこのブログに来た方のために最初にことわっておくと、わたしはターガリエン的な価値観に対しては非常に危険だと身構えている。

ドラゴンの武力を前提とした彼らの苛烈で恫喝的な態度は、現代社会に生きる者として受け入れてはいけないというのが大前提だ。

それを美しい外見で覆い隠して「英雄的」に見せるやり方は、ゲームオブスローンズ時代からとてもうまく視聴者を最終話まで誘導した。

当然ゲームオブスローンズ最終話をふまえた上でハウスオブザドラゴンを視聴する人が多いにもかかわらず、しかしやはりターガリエン的な「英雄」は多くのファンを魅了する。この道が滅び以外には続いていないことを知っていて、なお。

その大衆心理は興味深いが、恐ろしい。

ターガリエン的な「強く美しい英雄」が現代社会に現れたら、やはり大衆はそれを支持するのだろうとわたしは思っている。たとえその英雄が、「敵」に対して平然と核のスイッチを押す人だとしても。

息子には息子オアアアア!!「ハウスオブザドラゴン」2-1感想 - なぜ面白いのか


今期も基本的にはこのスタンスだ。

 

 

ラリスの計略

3-1でいちばんわくわくしたのはこれ!

ラリスくん、何を考えてエイゴンを売るようなことをしたんだろ? まあ普通に考えて、あのしょうもないプライドだけは一人前で残念なおつむの王が、検問の前で上手にお芝居できるとは思えない(早速荒れる)。ふたりとも生存した状態でその場を突破するための方便だったのだろうけども。

原作には全然こんなシーンはなかったので、このあとの流れがだいぶ変わるのではないかと思っている。変わるというか、脚色がかなり入るというか。ラリスくんの出番は一分でも多い方がよいので期待している。

 

 

母親に認められたい息子たち

今回の対比構造はこれだったなー。S2でも散々この構図を見せられたけど。デイモンを筆頭に、エイモンドもジェイスも母親に認められたくて戦争をする。しかし同時に、当の母親を尊敬しきれない気持ちも抱える年頃でもある。エイゴンだけは、母親というよりは父親への執着が大きいように見えたが。

詳しくはこのへんの記事に。

nazeomoshiroi.com

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今回はジェイスとエイモンドが対比された。

ジェイスは誰よりもレイニラに認められたがっている。そして周囲の人間たちに自分を「ターガリエン(正確には「ヴェラリオン」だが)」の一員だと認めさせたいと思っている。

しかし一方で、ジェイスはレイニラを尊敬しきれない。自分が周囲に認められない原因を作ったのは、レイニラ本人である。ジェイス本人が「見ればわかるじゃん」と言ってしまうくらいバレバレの血筋が、生まれてからずっとジェイスを苦しめてきた。

さらにドラゴンシードたちの登用により、ドラゴンとターガリエンの血筋の聖性が否定されていく。自分もアルフやヒューのような bastard と変わらないのではないかという疑念が大きくなる(疑念というか事実だけど)。

自分は特別な王族なのだと思い込まなければ、自我が崩壊してしまうような状態だったに違いない。だから無断で勝手な交渉に出かけ、勝手な約束をとりつけ、小評議会に同調して母親に逆らうことばかり言った。

そういった諸々が結実したのが3-1だ。これはやっぱりS2の総決算だったのだから、S2の最終回にもってくるべきエピソードだった気がする。S2はもともと10話を予定していたのを8話に縮めたらしいし。

ある意味で、ジェイスはデイモンがヴィセーリスに抱いていたのと近い感情をレイニラに(そして周囲に)向けていたのではないか。つまり「自分の方が王にふさわしいのに」「自分ならもっとうまくやれるのに」みたいな感情だ。それに加えて「自分も銀髪に生まれていればもっと認められたはずなのに」という鬱屈もあっただろう。

デイモンは、幼い頃に亡くした母に「ヴィセーリスよりもデイモンの方がいい子」だと認めてほしい気持ちがあって、それがすべての動機になっているとS2で結論づけたわけだが、ジェイスはもっと複雑だ。何しろ「認めてほしい気持ちを抱く相手」と、「自分の方が上なのにと感じる相手」が同じ人なのだから。

ジェイスからは、レイニラが自分よりもアリセントの言葉の方を信頼しているように見えただろう。たぶんこれが決定打だ。アリセントは、自分のことを「ストロング」だとからかった子たちの母親だ。そんな人が、母親の心の中の、ジェイスでは立ち入れないほど深いところにいるのだと思ったら、嫉妬で焼ききれそうになるのもわからなくはない。

ジェイスの結末はS2からの流れの当然の帰結だと思えたけど、サー・ローレントがこれで死罪になったら気の毒だ。

ジェイスの最期を海底側から撮ったカットがきれいだったなあ。海戦用に用意した水中カメラだったのだろうけど、印象的なシーンがたくさんあった。

しかし「ハウスオブザドラゴン」には1話で息子を殺すノルマでもあるんか。S2も1話から阿鼻叫喚だったけど、S3も完全に1話からお葬式じゃん。

なおレイニラ視点だとジェイスには本当にいらいらさせられただろう。S1ではアリセントの指先がぼろぼろだったが、今ではレイニラの指がぼろぼろだった。これでこの後ジェイスの死を知るんでしょ。つらい。

 

一方のエイモンドはもっとわかりやすい。何しろS2でアリセント似の娼婦に甘えていたので。彼は極度のマザコンであり、本当は母親に甘えたくて、認めてもらいたくて、努力もして(あの語学力はかなりの努力が必要だったと思われる)、力を誇示したくて、しかし今までは立場上それが許されなかった。だからこそ娼館に通っていたわけだ。

しかしエイゴンがいなくなった今、もはや力の誇示を躊躇わなくてよい。自分が母親の「いちばん」になれた実感を得たい。あのキスを最大限好意的に解釈すると、そういうことになるのかなあ。

暖炉の前でふたりが見つめ合うシーンを見て「やべーキスシーンの構図じゃん(笑)」と思っていたら、本当にキスしたのでお茶をこぼすところだった。

 

 

母親側もつらい

アリセントもきっついなあ。

ここでの彼女の言葉自体に嘘はないと思うんだよ。レイニラの前では「エイゴンとエイモンドの首はあきらめる」と言ったけど、それでもふたりを生かせる道があるならそうしたかったはず。エイゴンは逃げた。エイモンドもなんとかして逃がしたい。

でもそれと同じくらい、あるいはそれ以上に(「それ以上」に感じるのはわたしの好みである)、レイニラに語ったことが嘘になるのを避けたかったのではないかという気がする。

「野望などなく、外を歩いて空気を吸いたい」「人知れず生きて死ぬだけ、自由に」とレイニラに語った言葉は本心だったはず。子どもの頃には当たり前に本音を言い合えたレイニラにだからこそ語れたものだったはず。それが「結果として」であっても嘘になってしまうのは、アリセントにとって耐えがたかったのではないか。

S2最終回の感想で、わたしはこう書いている。

Come with me.

私と一緒に来て。私と一緒に生きて

本当に願ったのはこれじゃないのか。

城を出て、身を清めて、穢れを落として、「やっと私になれた」彼女が、野望も欲望も取り払って見出した願いは、レイニラと生きることだったんじゃないのか。やっと言えた、今までの人生のどの瞬間も言えるわけがなかった、プロポーズだったんじゃないのか。

海原と牢獄「ハウスオブザドラゴン」2-8感想 - なぜ面白いのか

それが叶うはずのないプロポーズだとわかってはいただろうけど、互いにそれが本気だとわかっていたはず。

それが、帰ってきたらエイモンドにキスされるんだもんよ。は~~やってらんね! あの戸惑いの表情も納得である。「えっ? どういうこと? マジでこれが『正解ルート』だったの? そういうことだったの?」みたいな。

万魔殿レッドキープで長年生きてきたアリセントは、説得には相手の望む言葉をかける必要があるくらいのことは当然の基礎知識だっただろう。だからアリセントはエイモンドがずっとほしかったであろう言葉をかけた。「あなたこそ王の器。あなたが先に生まれれば状況は変わってた」なんて、エイモンドは立ち上がってテーブルの上でランバダを踊りだしたいくらい嬉しかったに違いない。

それに加えて「難攻不落の要塞よ。かつてドラゴンの炎に耐えた」と、彼のプライドもくすぐっている。エイゴン征服王でも燃やしきれなかった要塞を自分が灰にできれば、とか想像したに違いない。エイモンドは明らかにこの台詞にニヤついている。

このアリセント、物は言いようすぎて舌を巻く。ハレンホールって建築後に秒で落ちて中の人がみんな死んだ、何の役にも立たなかった要塞じゃん。一応建物部分はドラゴンの炎にも耐えて現存しているから嘘ではないんだけど。

見ているときは、「押すなよ! 絶対押すなよ!」ルートで説得した方がうまくいったのではないかとも思った。けどそっちルートが正解なのはエイゴンの方だったもんな。エイモンドくんは正攻法でおだてまくるのが正解ルートだったか。しかしあまりにもド直球に正解ルートを引いてしまったのでボーナスイベント(キス)まで発生してしまった、みたいな。

アリセントもそこまでは予想してなかったか。本当に気の毒にな。S1から言っているように、アリセントは他者の痛みに共感できる、思いやりのある人だ。しかし彼女が最初はただ優しさを向けた相手は、全員彼女に性欲を向けてくる。ヴィセーリス、ラリス、クリストン、そしてエイモンドまで。

性欲を向けてこなかったのはレイニラだけだよ……。たとえ本心がどうであったとしても。

キスの後の彼女の涙がつらい。これでエイモンドを守れる。レイニラへの言葉も嘘ではなくなる(エイゴンはいなくなってしまったが)。彼女はやりきった。しかしこの子はホンマにこれでええんか……みたいな。

 

 

海戦すげー

1話目から本当にきついシーンばかりだったので、海戦シーンだけが心の癒しだったよ。海戦シーン、本当にすごかったなあ。あんなにも予算をつぎこんだ、内容的にも濃密で、かつ尺もたっぷりの海戦シーンは初めて見たかも。「ゲームオブスローンズ」の海戦でもあそこまでではなかったもの。

さっきも書いたけど、水中カメラがあらゆる場面ですごくいい仕事してた。役者さんも鎧を着て水に落ちた甲斐があったってもんだよ(すごく危険だし大変な撮影だったのではないか)。

トライアーキーのロハール姐さんの貫禄にぶちあがった視聴者は数知れないだろう。めちゃくちゃいい表情するし、めちゃくちゃいい声だった。一生ついていきます! と思わせるリーダーである。なんで亡くなってしまったんや……。出番は短かったけど、すんごい印象を残した人だったな。

現在、レイニラとアリセントがふたりとも城に籠らされて戦えないフラストレーションを抱えているのと、強烈に対称的だ。レイニラは指先の自傷に走るしかない状態だというのに。

 

レイナとシープスティーラーは……。まあ野良ドラゴンを手なずけるリスクってそういうことよね、という話かな。

ドラゴンが敵味方区別なく燃やしつくすシーンは「ゲームオブスローンズ」にもあったし、S2にもあった。クリストンの絶望顔が思い出される。

しかしシープスティーラーは明らかに、(レイナにとっては味方のはずの)ムーンダンサーとヴァーマックスを動揺させている点で上記とは一線を画す。悪い言い方をすれば、ヴァーマックスひいてはジェイス死亡の一因を作ったのがシープスティーラーだ。

これ、レイナはおうちに帰れる??? どの面下げて帰ればいいの???

ドラゴン獲得で戦力拡大や! と思って帰宅したら途中で味方を燃やした上に味方のドラゴンを墜としたでござる。しかも騎竜者は姉(妹?)の婚約者。最悪だ。

いやヴァーマックスを墜としたのは、正確にはトライアーキーの海賊だ。ジェイスを討ったのもそう。でもそこ、みんな納得できる? 大丈夫? ベイラがよほど上手に説明しないと、帰宅後のお葬式が血のお葬式になりかねない(お葬式であることは確定)。

必然的に、わたしの出勤タイムもお葬式になった。つらい。

ひとまず今日はこのへんにするか。また寝不足の火曜日を迎える日々が始まるよ……。

 

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