なぜ面白いのか

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「ドラゴンの家」の解体「ハウスオブザドラゴン」3-3感想

「ハウスオブザドラゴン」S3も3話目。もうこのクソみたいな出勤スケジュールにも慣れてきた。毎週月曜日には死んだネズミの目で出勤するという新たなルーティンだ。

3話、すごく緊張感があって面白かったな。音楽がずっと不穏オブ不穏。タマネギの無限剥きみたいに、剥いても剥いても難題が次々現れる。ほんと、政治ってこうだよね

本日の「ハウスオブザドラゴン」は~?

1. お金がない!

2. 食べ物もない!

3. 正当性もない!

4. 本人がいない!

の四本立てだよ!

以下、ネタバレ感想!

 

 

 

お金がない!

国庫が空になっていると聞いて、思わずえらい! と叫んでしまった。敵方に財を残さない。今日から使える落城時のマナーである

チームグリーンのマスターオブコインはタイランド・ラニスターだったようだが、金を運び出す手配をしたのはラリスくんじゃね?

タイランドは海賊との交渉に行ったまま海戦に参加していたので、レッドキープの金の算段なんてつけている場合ではなかった気がする。それにラリスくんはレッドキープが落ちるのを見越して、いろいろと画策していたわけだし。

レイニラ側にオットーを差し出しておいて、金は全部引き上げておく。素晴らしい段取りで嬉しくなっちゃうな。

おかげでレイニラ側は貴族と民に対して「戦争が終わった」アピールもできないし、戴冠式にも暗雲がたちこめる。

3話のレイニラはずっと涙目で、生理も始まるし、だんだんやつれていく感じで(メイクの加減がすごい)、本当に気の毒である。彼女だけが悪いわけじゃないのに。

これまでに鉄の玉座に座った人の何割かはあの剣先にひっかかって怪我しているが(GoT含む)、レイニラもそうなりそうな気がする。少なくとも現時点で非常に座り心地は悪そうだ。あーでも、レイニラが晩年のヴィセーリスみたいに朽ちていくのはあんまり見たくないな……。

先日は、ジェイスに比べてジョフリーのメンタルは強かったなと思ったが(ジェイスとジョフリーはほぼ同じ立場だったのに)、レイニラに比べるとサーセイのメンタルも鬼強かったよね。

 

 

食べ物もない!

食べ物がないのはレイニラたちが海上を封鎖したからである。オニオンナイトみたいな勇気ある人はいなかったのか。いたかもしれないけど、飢える民全員分の食糧なんて確保できないよな。

羊を育ててもドラゴンが食べてしまうので、食糧にも衣料にもできない。徴兵されまくったので一次産業従事者もろくにいない。他国から食糧を輸入しようにも金がない。詰みかよ。

貴族たちに貢物をさせるのは良いアイデアではあったが、この文化水準の世界でいきなり高課税&高福祉社会を実現させようとしたら、とんでもない反発を受けるのは当たり前である。やるとしても長い時間をかけて合意形成する必要がある。貴族たちの合意なく一方的に財をむしりとっていったら、どれだけその主張がまっとうでも反発はある。これは反乱やろなあ。

レイニラも政治家をやるなら、自分がスッキリしたいだけのために貴族にネズミを食わせるとかしたらだめだよ。結局貴族たちは誰もあの料理に箸(箸?)をつけなかっただろうから、あの食材は全部無駄になったわけでしょ? ただでさえ食糧難なのに。料理人の苦労も何だと思ってんだ。

「私はあなたの主張を聴く気があります」「あなたの主張に正当性があればいつでも自分の考えを変える気があります」という態度のない人間が、集団の合意形成なんてできるわけがない(今日から使える合意形成のマナー)。

S2を見ていたとき、ハレンホールで何をやってもうまくいかないデイモンが、ようやく玉座につくことの意味を理解し始めたとき、わたしはこう書いた。

王とは、すべての臣民に仕える者だ。あちらを立てればこちらが立たずの状況ばかりの中で全員をとりなして、みんなが喧嘩しないようにみんなにいい顔して、各家の関係性にめちゃくちゃ気を遣って、それがちょっとでもうまくいかなければ即反乱である。そんな繊細で胃が擦り切れる仕事、本当にやりたいか?

血の収穫完了「ハウスオブザドラゴン」2-7感想 - なぜ面白いのか

その点、ヴィセーリスはうまくやってたんだろうな。ヴィセーリスがというよりはオットーが、か。ヴィセーリスが臥せってからはアリセントが。

デイモンはハレンホールで学び、ようやくレイニラがここで学び始めた。なんでターガリエン家は跡取りに政治経済の基礎を仕込んでおかないんだよ。せめて税金と社会福祉の仕組みくらいは跡取りに教えておいてくれや。

たぶんオットーはアリセントにある程度政治を学ばせていたし、アリセントにも(特に王妃になって以降は)学ぶ姿勢があったのだろう。彼女にとっては文字通り生存がかかった問題だったわけだし。

ヴィセーリスはレイニラを跡取りに指名したなら、せめてそれ以降はちゃんとお勉強させておくべきだった。けどS1のレイニラは悪いおじさん(デイモン)にそそのかされてセックス以外に興味がなさそうだったし、ヴィセーリスがお勉強させようとしてもやろうとしなかったのかもしれない。

 

 

正当性もない!

久々に登場したセプトは、レイニラと全面戦争をも辞さない構えである。信仰に生きる人間は、損得以外の感情で動くし、最悪の場合自分たちの命よりも信仰を優先するから怖いね。

(ただこの件については、信仰心がどうとかいう以前に法律と慣習がレイニラの王位の正当性を認めていないから、余計に難しいんだよな)

ウェスタロスには土着の宗教があり、ドラゴンとターガリエンは後からやってきた征服者だ。ゲルマン神話やローマ神話があったところにキリスト教が後から来て共存した、みたいな感じをイメージしている。

エイゴンは死んだことにすればいいじゃないというアリセントのアイデアは悪くないと思ったのに、やはりその理屈は通らないのか。戦国の世の晒し首文化は、「この人は死にました」という公的なお墨付きを得るためのものでもあったんだな。自分にはその視点が欠けていたので勉強になった。

セプトのドラゴン評は、そのまま核兵器評だよね。ドラゴンは壊すだけ。何も生まない。

 

コアリーズ公がアリンとアダムにヴェラリオンの名を与えることにレイニラが否定的なこと、そしてそれに対してヴェラリオンがマジ切れしたのは、なんというか……一視聴者からすれば「それなんてコメディ?」とつっこみたくなった。

両者ともに「お前が言うなオブザイヤー2026」である。七神教徒一同がこの垂れ幕を持ってふたりのまわりで踊るべきだった。

そもそもジェイスたちバスタードが生まれたのは、コアリーズ公がヴェラリオン家の血をターガリエン家に入れるために、ゲイの息子をレイニラと無理やり結婚させたからである(その前はレイナとヴィセーリスを結婚させようとしてたっけ?)。

もちろん、だからといって不倫していいという話にはならない。レーナー自身がいいと言っていたとしてもだ。周囲にバレバレな「ストロング」な息子が生まれた後もレイニラは不倫を続けて子どもを産んだ。「ストロング」な息子たちがどれほど傷つき、アイデンティティに悩み、親への不信感を抱いたかはこれまでドラマで描かれてきたとおりである。

そのレーナーが亡くなり、レイニスも亡くなって、ヴェラリオンの血が途絶えそうだという段階になって、コアリーズ公はバスタードのふたりに名を与えた。そんな虫のいい話があるかよと思ったが、アダムとアリンが納得しているならいいかと一応納得しようと思ってはいた。

婚外子を作ったのは自分たちだし、婚外子に頼らなければならない状況を作ったのも自分たちだ。一方の「婚外子」は正当な世継ぎになり、一方の「婚外子」は名も与えられず、不遇な環境で育った。アルフやヒューなんて、誰の子なのかもわからない。けど「ターガリエン」のはずだ。

「ストロング」な息子たちを認めるなら、アリンやアダムも認めるべきというのはごもっとも。でもそれならアルフやヒューも認めるべきだ。その他の数えきれないほどのドラゴンシードも(大半はドラゴンに食べられたが)。

コアリーズ公の言うことはごもっともだ。だが「お前が言うな」でもある。そもそも不倫をするな。息子に望まぬ結婚をさせるな。長年息子たちを放置しておいて、今更父親面するな。

レイニラが「今はまずい」と言うのもわかる。だがやはり「お前が言うな」である。そもそも不倫をするな。自分の産んだ子どもだけ贔屓するな。子どもたちを「あなたの孫よ」と血のつながってない「祖父」に紹介するな

どいつもこいつも不誠実で、自分の下半身にだけ正直だ。

そしてどいつもこいつもターガリエンの聖性を台無しにしていく

バスタードでもドラゴンライダーになれる。「高貴な育ち」でなくてもドラゴンは受け入れる。バスタードでも王位継承者になれる。その王位継承者が「バスタードだ」と公然と罵られる。

こうして、「ハウスオブザドラゴン」が解体されていく。特別な「ドラゴンの家」だったから受け入れていた民が、彼らを特別視しなくなっていく。

あと実は、ミサリアの髪の結い方がターガリエン風に近づいてないか? というのが気になっている。S2はあんなふうに目立つ三つ編みを頭の上の方に飾っていなかったはずだ。「ゲームオブスローンズ」において、デナーリスの三つ編みは彼女の力が増していくのと連動していた。

ミサリアの三つ編みは彼女の権力の増大に連動し、かつやはりターガリエンの聖性の解体の一端を担うのかもしれない。あの髪型はターガリエンだけに許されるものではないということを、ミサリアが周囲に示している。そしてミサリアがあの髪型をすることをレイニラが許していることも、同じ役割を担っている。

デナーリスといえば、彼女は自分の息子を亡くしたかわりにドラゴンの子どもを三体授かった。そしてその子どもたちを軍事利用し、二体失った。

レイニラは、ここまでデナーリスをなぞっている。ただし彼女は子どもたちを積極的に軍事利用したわけではない。子どもたち自身の意思で危険に飛び込んだのである。ただし、まだ精神的に未熟だった彼らに「そうしなければ」と考えさせてしまったのは、周囲の環境、大人たちの責任である。

デナーリスの子どもたちの最後の一体は、母親の死を見届けて去った。さて、レイニラの子どもはどうなるか。

 

 

本人がいない!

偽デイロンくんには驚かされた。髪なんて数週間で新しいのが生えてきてプリン状態になるだろうに、それまでごまかせればいいと思ってたってことか。本物のデイロンくんを生かすことができれば、庶民の偽者なんて生きようが死のうがどうでもよかったのか。

デイロンくんが本物かどうかは、あの場にいたドラゴンに乗せれば一発で判別できただろうが、そんなことをさせればドラゴン大戦争まっしぐらになるのは明らかである。そんなリスクは避けたいよな。

今回のラストでハイタワー軍がタンブルトンを制圧したというしらせが飛び込んできた。その制圧に、デイロンと彼のドラゴンがかかわっている? やはりここからドラゴン大戦争に突入してしまうのか。

レイニラは、ここまでまだターガリエンの首を獲れていない。エイゴンは逃げ、エイモンドは出陣し、デイロンは偽者をつかまされた。

獲った首はオットーだけ。でもそのオットーが亡くなったせいで、「政治」がまったく立ち行かない。何もかも裏目である。

気の毒だとは思うが、そらそうなるよとも思う。戦争に勝つことと国を統治することは全然別物だ。

民は今のところ食糧支援してくれたレイニラを歓迎しているが、今後はどうなるだろうか。金はない、食べ物もない状態がこのまま続いたら?

なんかこう……このレイニラも国土を焼きそうな雰囲気があるのだけど、さすがにそれはデナーリスの時代までやらないよね? 国土を荒廃させる程度でおさめるよね?(荒廃もやめてくれや)

 

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