なぜ面白いのか

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盗んだバイクで走りだす「ペルソナ5ザ・ロイヤル」プレイ日記3

正論きちゃった

まずはおしらせ。

このたびブログ開設8年目にして、独自ドメインを取得した

そこそこ長く運営を続けてきて読者さんも増えてきたし、これからも細々と続けていけるかなと思えるようになったので! 

自分にとってはやはり書くことも読んでもらえることも楽しい。それに作品に触れて何らかの感想を抱くことと、それを読んで理解できる形で言語化して公開するということはまったく違う。

長年やってみて、自分の感じ方、考え方の傾向とか、その変化とかも感じられるようになった。まさに自分にとって「なぜ面白いのか」を自覚し、多少なりとも説明できるようになってきた気がする。ブログ開設当初の目的はある程度達成されたわけだ。でももちろんまだまだ全然足りているとは思っていないので、これからも精進していく所存。

そういうわけで、ブログへのリンク移動は自動でやってくれるそうなのだが、もしブックマークなどしてくださっている方がいれば、念のためご確認ください。

基本的には「自分が自分を知るため」であり「自分が後で読み返して楽しむため」の場所のつもりだが、閲覧してくれる方、ブックマークやスターをつけてくれたり、コメントをくれたりする方の存在はいつも励みになっている。これからもよろしくお願いします。

 

ペルソナ5 ザ・ロイヤル」の方は、7月に入った。

3人目の標的が無事陥落し、世間からの怪盗団への注目が一気に高まった。ここまでずっと昇り調子だった怪盗団だが、アンチテーゼ的なキャラクターも登場したし、大人たちは不穏な会話ばかりだし、この先どうなってしまうのか。

展開が不安になりつつ、今回は7月初頭までのネタバレ感想!

初回記事はこちらから。

nazeomoshiroi.com

 

いい写真だな



丸喜拓人の研究

まずはこの人の話題から。こんな顔と声の人がいい人のはずがないという確信からめちゃくちゃ警戒していた丸喜先生。

まだその人格の全貌はわからないものの、その研究はとても興味深かった。心の「痛み」についての研究。

医療系学部の後輩が、まさにこういう研究をしようとしていた。ストレスが人間の体調に直接的な影響を及ぼしているのは明らかだ。ストレスは生活習慣病の要因のひとつだし、それ以外にもさまざまな症状を引き起こす。「肉体的には問題ない」状態のはずなのにストレスによって腹痛になったり動けなくなったり、難聴になったりもする。

肉体に明らかな症状が出ているにもかかわらず、なぜ現代医学はそんな状態を「肉体的には問題ない」としか診断できないのか。ストレスが定量的に測定できるようになれば、現代社会のさまざまな問題が解決に向かうのではないか。

……みたいな問題意識から出発して、その後輩は研究を始めた。アプローチ方法をここに書くと一発特定されてしまうので控えるけれど、わたしはその研究に可能性を感じた。もちろんすぐに成果が出る研究だとはわたしも後輩自身も思っていなかったが、「この方法ではだめだった」と判明することだって、長い研究史においては有用な結果のひとつだ。そのことを忘れずに、人類の「ストレス測定史」を一歩でも前進させてほしいと、わたしは後輩に伝えたものである。

しかし後輩はこの研究をするにあたって、笑わずまともにとりあってくれる指導教員を探すのがまず難しかったそうだ。まあ、そうだろうなと思った。でもちゃんと話を聞き、その研究をやらせてくれる研究機関も存在していることにほっとした。無印の「ペルソナ5」が発売されるよりも前の話である。

丸喜先生もこの研究をする仲間をすぐに得るのは難しいかもしれないが、エビデンスを積み上げていく形で論文発表を続けていけば、同志は見つかるのではないか。彼のエピソードがどこに着地するのか、まだ全然見えないけど。

ただ、ちょいちょいパレスを知ってないとこの表現にはならなくない? みたいな言い回しが出るのは気になる。

鞘くんたちはパレスから「オタカラ」や「イシ」を持ち帰り、パレスの主の人格を改変している。「オタカラ」や「イシ」ではなく、それこそ心の「痛み」のもとを持ち帰れば、ストレスが激減しちゃったりするのでは。

いや、もしかしたらメメントスで鞘くんたちがやっていることが、まさにそれにあたるのかもしれない。メメントスで会うターゲットたちは、パレスを形成するほどではない「歪み」を抱えている。その原因となったストレスも、彼らとの会話で示唆される。それを鞘くんたちが回収することで彼らの「歪み」が正されるのなら、それってストレスの、つまりは心の「痛み」の除去を行っていることにはならないか。

また逆にパレスの中に何かを「置いて帰る」とか、パレスの壁に「落書きする」とか、何らかの形で干渉することで、丸喜先生の言う「思い込み」を強制できたりしないかなあ。

まあこのコープエピソードの中で語られた「思い込み」の話は、営業マンとか教育者とか、それこそ医療者なんかは日常的にやっていることだけども。

丸喜先生の話、いったいどういう決着をみるのか興味がわいてきたので、できるだけ優先的に進めていきたいところ。

 

 

明智吾郎というアンチテーゼ

いや面白い子が出てきたね!

ペルソナ5」のプロットは「デスノート」に似てるよなって、彼の登場でやっと気づいた。

デスノート」は、正義感の強い少年が一方的に「悪を裁く」力を持ってしまったお話だ。しかしその方法は、デスノートに名前を書いてターゲットを殺すというもの。これは完全に私刑による死刑なので、警察や探偵は主人公の方こそを「悪」として逮捕を目指す。

ペルソナ5」も、正義感の強い少年少女が一方的に「悪を裁く」力を持ってしまったお話だ。「ターゲットの名前を知っていなければならない」というのも「デスノート」と共通である。「デスノート」と違うのは、ターゲットが死なないことと、ターゲットが改心することである。

この行為は正義か? 悪か? すごく面白いバランスで成立しているストーリーだし、面白い倫理の問題だとも思う。

明智くんは怪盗団がどんな方法で「心を盗む」なんてことをやっているのか知らない。心を盗まれたターゲットたちも、パレスで起こったことは意識にのぼらないので証言できない。

明智くんにしてみれば「怪盗団はターゲットを拉致監禁した上で洗脳し、洗脳について警察に話すなと脅迫しているのでは」みたいな想像をしていてもおかしくない。というか、常識的に考えればそういう発想にしかならない。もし実際にこういうことをしていたとしたら、当然怪盗団は文句のつけどころのない犯罪者である。

でもこれ、そういう話じゃないんだよな。鞘くんたち、暴行や恐喝どころか不法侵入すらほとんどしてないもの(班目の家については微妙なラインだったが)。今のところ法律に明確に違反するようなことはやっていないのではないか。

でも法に反していない=倫理的にオールOKというわけでもない。人の人格を強制的に変えるのは、アリかナシか。それは正義と言えるのか。

今のところ、鞘くんたちは「悪人を改心させる」方向でこの力を使っている。でも、それって結局少人数の基準による「改心」であり「善」なんだよな。その少人数の基準が「正しい」ものである保証は誰もしてくれない。間違っていたとしても、結果はおそらく不可逆である。相手は拒否することができない。やはり恐ろしい力である。

だからこそ、怪盗団のターゲットはプレイヤーが躊躇わなくてすむような「悪人」である。次から次へとレベルの高い悪人が出てくるので、毎回「うわ~……」と思いながらやっている。けどそうでないと、いくらゲームであっても大義名分が成り立たないもんな。これが中世ファンタジーなら「世直しのために斬る」ですむ話かもしれないけど、現代日本が舞台なものだから、余計に難しい。

明智くんの登場で、怪盗団も初めて自己を客観視できた。そしてよりいっそう「他者からの評価」を意識した振舞いをするようになった。「自分の居場所」を得るために始めたことが、「他者からの評価」を必要とするようになるのは、SNSとかを見てもあるあるかもしれない。実に現代的なテーマの作品である。

 

 

あなたならどうする

この倫理の問題を考えるにあたって、わたしもひとつ仮定してみた。

もし自分がこの能力を持ったら、使うだろうか?

ノーリスクであれば、わたしも使うかもしれない。でもこの能力、全然ノーリスクではないんだよね。パレスで死んだら現実でも死ぬか廃人になりそうだし。それに予告状を出さなければならないという条件が大きすぎる。現実的に考えると絶対に予告状から足がつく。

渋谷に大量の予告状を撒いたのを見て正気か? と思った。いったいどこでコピーをとった??? まさかそのへんのコンビニか? キンコース的な場所か?? いずれにしても防犯カメラに記録されてるはず。渋谷周辺のコンビニとオンデマンド印刷所は真っ先に警察が調べるはず。生徒会室に自由に使えるコピー機でもあるのか? でもインクを調べたらコピー機の型とかわかるし、紙も調べればどこのメーカーのものかわかるよね?

あと、わたしは絶対に「パレスで○○という行為をしたら、パレスの主の人格にどのような影響が出るか」を実験したくなる衝動を抑えられない。オタカラをいただいて帰るだけなんてありえない。たとえば壁やオブジェを壊しまくったら? 上にも書いたけど、壁に落書きしたら? 逆にパレスをきれいに掃除したら? 自分の持ち物を置いて帰ったら? 特に影響が出なかったら、影響が出るラインを確かめるためにだんだん規模を大きくして実験したくなるだろう。どこかの段階で廃人化させてしまう未来しか見えない。

だから、できるとしても最初からやらないと思う。

まあそれは、わたしのまわりに鴨志田みたいなクソ野郎がいないからそう思えるのかもしれない。身のまわりに明らかなストレス源となる人がいるとか、明らかに法に反してる人がいるとかで、しかし法にのっとった対処が不可能だったら、やるかもしれない。

作中では鞘くんたちのほかにパレスに出入りしてその力を悪用している人がいるという話だが、その人にはモルガナのような「ガイド役」がいなかったのかもしれない。それで、よくわからないままわたしのようにあれこれ試したくなって、やっているうちに廃人化事例を大量に出してしまったのかも。

むしろ逆に、鞘くんたちはモルガナと会ったからこそパレスに「オタカラ」があることを知り、パレスに干渉することのリスクを認識しながら怪盗活動を円滑にスタートできた。じゃあモルガナって何? という話である。絶対に人間ではなさそうだけど、じゃあ何なんだろうな。シャドウというわけでもなさそうだし。

 

 

蝿の王、金城潤矢

自己の認知が豚で蝿って……。

金城本人のセリフから察するに、以前は実際に周囲から豚だの蝿だのと呼ばれて下に見られてきた人生だったんだろうな。それで自分が上になる「順番」が来たからと、傍若無人になっていった。

そんな過去を、怪盗団の誰ひとり意に介さないのがちょっと面白い。どう考えてもそんな過去が免罪符になるような人じゃないし。

 

 

新島真と冴

どっちも気の毒になあという感想しか出てこない新島姉妹。

前回わたしは真ちゃんについてこう書いていた。

この子もなんだかかわいそうでな……。完全にお姉さんをダシにして校長から脅迫されてるやん。だめでしょこの学校。これだけしっかりした子なら学校を糾弾する方にまわれると思うんだけどな。

学校に心を許せる友達とかいるのかな、とか心配してしまう。まあこんな狭く限られた幼い人間関係の中で、心を許せる友達なんか無理に見つけなくていいとも思うけど。

この時点では、真ちゃんもそのうちコープが開くのだろうとは思っていたが、仲間になるとは思っていなかった。

学校を糾弾するまでにはいかなかったが、校長に対して自分の意見をはっきり言えたのはよかったな。そして心を許せる友達もできた。

学校推薦の話はナシになってしまったが、一般入試でガチればいいだけやんという真ちゃんのセリフはごもっとも。きみならやれる。

子供が生きていくうえで最低限の知識を身につけさせるのは親の義務だが(だから「義務教育」なわけで)、大学に進学する理由は、自らの内に存在していてほしい。「学びたいから学ぶ」もしくは「実現したい将来像のために学ぶ」のどちらかであってほしい。真ちゃんがそんな方向性で成長してくれることを願っている。

真ちゃんのペルソナ獲得は、抑圧からの解放というわかりやすい流れで、これまでのペルソナシリーズのノリにいちばん近い。バイクは驚いたけど。そんなのアリかよ。

「現在」パートで冴とのコープが開いたのにはさらに驚いた。

しかし冴さんも自分の身内が怪盗団だったとなると、この先この事件をどういう扱いにするつもりだろう。そしてこの取り調べの落としどころはどこになるんだろう。

鞘くんの制服が冬服っぽいので、「現在」は冬なのだろうけど、いつ回想が現在に追いつくのかな。

 

 

真っ黒な大人たち

どうやらハンプティダンプティ校長・鞘くんを逮捕させた議員・特捜部長がつながっているみたい。そして特捜部長の話し方からしてパレスの存在を知っているみたい。

じゃあパレスに出入りしている悪人ってこの人たち? もうきみらがラスボスでいいよ!

校長に圧をかけて怪盗団のことを調べさせているのも議員っぽい。この人、鞘くんが秀尽学園にいることを知ってるのか? そこまでは知らないのか。

というかもしかして、鞘くんがペルソナ能力に目覚めるきっかけになったのがこの議員だったり?

しかしいくらなんでも鞘くんがこの男の名前を知らないのは無理がないか。裁判までいったのならさすがに被害者の名前は記録されてるでしょ。

名前を知ってたら今すぐこの男のパレスに行こうぜって話になってしまうから、シナリオの都合上知らないことにしておかないといけないのはわかるが。

それともこの男が警察にも司法にも圧力をかけて、名前がいっさい表に出ないようにしたのか。特捜部長とお友達だったらありえなくはないのか……?

なぜあの流れで鞘くんだけが有罪になったのかも意味不明だったが、そういうことだったのね。最悪だ! もうお前がラスボスだ! 大人はみんなこうだ! いや人類なんてみんなこうだ!(絶望堕ち)

あと気になるのは、鞘くんたちがパレスに出入りできるのは、イゴールにもらったアプリのおかげだったはず。じゃあパレスに出入りしている悪人はどうやって入ってるんだろ? その人もアプリをもらった? 誰から?

双子のコープエピソードも気になりすぎる。鞘くんが「ワイルド」だということは、イゴールも事前には知らなかったはず。では誰が双子のリストを用意したのか。

そしてイゴールと双子の言う「更生」とはいったい何を意味するのか。ペルソナ能力を開花させていくのが彼らの目的なら、なぜ鞘くんの前にしか現れない(たぶん)のか。「鞘くんがワイルドだから」が理由ではないのなら、竜司や杏の前に出てきてもおかしくないのに。

パレスで好き放題やってる人が、イゴールにとっても「敵」だとかそういう話なのかなあ。でも、それならペルソナ使いを囚人扱いする必要はないし、更生とか言わずに普通に成長を願えばいいよね。

いやベルベットルームが監獄テイストなのは鞘くんの心が原因だったんだっけ? でもそれが外見的な作用だけだとしたら、イゴールと双子がその監獄テイストに合わせた発言をしてるってこと? イゴールたちはベルベットルームの雰囲気に自動的に合わせた発言をするように設定でもされてるの?

うーん、謎が多すぎる。もろもろすっとばして早くあの議員を殴らせてくれないかな。

そんなあ

新宿ではめっちゃ不穏な占いをされてしまったし。

もうすでにルブランが盗聴されているということは、かなり追い詰められてない?

それともこの情報は警察や議員にはまだ共有されてないの?

以前からたびたびニュースになっていた企業の顧客情報流出事件とか、ひょっとしてこの人の仕業だったりするのか。今度はこんなのと対決するのかー。名前を調べるのに苦労しそうだなあ。どんどん「デスノート」化するじゃん。でも「デスノート」と同じ結末にはしないと思ってるから、この話がいったいどういう形で決着するのか期待している。早く続きを遊びたい!

 

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