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二体性の世界「グノーシア」キャラ語り

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ネタバレにならないスクショを探したらこんなのしか撮ってなかった

ちまちま進めていた「グノーシア」をついにクリア! とても面白かったので感想を残しておく。

1プレイが5~10分程度で、画面の情報がわかりやすくUIも使いやすくて、とにかく「遊びやすさ」が考えられたゲームだった。こんなにも携帯機との相性が抜群なテキストアドベンチャーがあるとは。

それからこれは特筆しておくべきだと思うのだが、このゲームの男・女・汎(無性)の3つの性が存在していてプレイヤーもそこから自由に自分の性を選べる&性がどうこういうレベルじゃなくいろんな(性的なものも含めた)嗜好が存在する世界観はとても居心地よかった。

SFだとやりやすいと思うのだが、こういうのが増えてくれるといいなと思っている。たとえばキャラメイクして遊ぶようなアクションゲームとかでも、汎があったっていいと思うんだよね。

しかもそういう世界観とシナリオとシステムがちゃんとかみあっているので、ますます居心地がいい。100回以上はループするのが前提なゲームなだけに、この「居心地のよさ」はとても大事だったのではないだろうか。

そんな感じで以下、各キャラに対する感想など。ネタバレあり!

 

 

 

セツ

セツが汎であるというのは、自分的にこの話の中の重要ポイントだった。主人公とどうやっても恋愛関係にならないパートナー。だからこその信頼関係。こういうキャラクター設計は現代社会においてかなり潜在的な需要があるのではないか。今後さらに増えてほしい。

「主人公と違う順番でループしている」という設定も面白かった。今まであまり見たことのないパターンだが、ループものにおいて「主人公に新しい情報を提供するポジション」と「主人公が動いたことで新しい状況を提供できるポジション」の両方を兼ね備えられるいい設定だった。

中盤、セツを生存させてクリアしなければならないパートではかなり苦労した。1日目で凍らされすぎでは?

「頑張るな」と言わなければならないことに気づいたときの「あー……」という納得感よ。そうだよな、セツの性格を考えれば「頑張ろう」と言われたら張り切って目立ってしまうよな。

結局、主人公=プレイヤーはセツと同じ世界ではこの後の世界を生きられないのは悲しい。でも主人公とセツがどこかの世界で生きているということが、このループ、ふたりの成し遂げたことの肯定になるのが救いか。

 

ジナ

彼女の顔が好きなんですよ。アップで見るたびにほれぼれした。

シビアな話を淡々とするときの表情が好き。

一言もしゃべってないうちから疑われがちだった気の毒な人という印象。

システムとシナリオの都合上、二面性(あるいはもっとストレートに「二体性」だったり)のあるキャラの多いなか、比較的ストレートなキャラクターだった気がする。

あと実はSQ・マナンの設定を出す前提として、重要な世界観設定を説明するキャラでもあるよね。

「太らせるのが好き」なだけで「太った人が好き」なわけではないの、どういう嗜好なんだ。でもそういう「嗜好(思考)の自由さ」って、このゲームの特徴の一つだと思うんだよね。

 

ラキオ

キーパーソンなんだけど苦労させられたね!!!

あっ! またラキオが凍らされてる! の連続で。

めちゃくちゃこっちを疑ってくる上にわかりやすく嘘をついているという真っ先に排除したい相手なのに生存させなければならないというあの状況、きつかった。

それ以外のときも何もしてないのに凍らされがちで、でもそんなこと「今回のラキオ」は知らないわけで、態度を改めるわけもなく。

ラキオくんクイズは毎回あれこれ考えるのが面白かった。なんだかんだでお友達になりたいキャラだな。

ラキオの二面性(あるいは「二体性」)は、「まだついてるけど魂は汎」なところかな。「自己を定義するのは自己以外にない」的な態度(ついていようがいまいが自分が汎だと言えば汎なんだよっていう)もすごくラキオらしい。

 

ステラ

割とストレートに好意を寄せてくれた印象だが、人型端末なんだよな。

Leviとステラというわかりやすい二体性を持ったキャラ。

グノーシアになったときの顔が怖すぎる。

しげみちに好かれがちだが、二次元の女の子が好きな彼が人間ではないステラのことを好きになるという納得感

 

しげみち

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事故であんな姿になってしまったという、ある意味で二体性を持つキャラ。本来の姿はどんなのだったんだろう。いや、本来の姿で出会っていたらこんなにお気に入りにはならなかったかもしれない。

とにかく嘘がバレやすいので、敵にいると楽だった。逆に自分・ラキオ・しげみちの三人でグノーシアだったときは開幕絶望したな。

確かエンディング後に行方不明になったはずだが、本当に過去に転移してリトルグレイになったのだろうか。

 

シピ

このゲームが男・女・汎から性別を選べるなどということが完全に些事になるレベルの志向を持つのがシピ。彼がいるからこそこの世界のSF性が抜群に高まるし、その自由さこそが「未来」なのだとも感じる。たぶんこのゲームをやっていていちばん驚いたのがシピの志向だった。いうまでもなく二体性を持つキャラである。

最終的にコメットと旅立つエンドもいいな。きっと彼なら強く生きていけるだろう……。

彼がグノーシアとして味方になってくれると心強かった。たぶんどちらの陣営でも一緒に生存した回数が多かった気がする。

 

コメット

かわいい。好き。

ゲーム中盤までは彼女の直感頼みで疑う人物を決めることが多かった。一度そのままグノーシアコメットにころっと騙しきられ、それ以降やや慎重なプレイを心がけるように。

逆に自分がグノーシアのときは怖いので問答無用で消滅させていた。

体の模様がきれいだな~と思っていたら粘菌だと判明し、以降ぎええ……と思いながら見るようになった。そういえば彼女も本体+粘菌の二体性か。

 

ククルシカ

嘘をついているのが明らかなのになかなか凍らせることができない強敵。

立ち絵のロシアっぽさがすごい。

なぜレムナンと留守番になると全員を殺すことになるのか不思議だったが、最後に判明。中にマナンが入っているから「意思を持つ人形」なのか。そういうことが技術的に可能だということは、ここまでのシナリオで散々見せられてきたしな。

基本的に「いい人」ばかりの登場人物の中で彼女にだけは邪悪を感じていたが、倒すべきラスボスのいない世界でこんな邪悪が存在していようとは。これからもあの愛らしい姿で永遠を愉しむんだろうな。

SQとステータスが似ていると聞いてふおおお……! と興奮した。ページが離れているから気づかなかったなあ。

彼女は明確に「二体」存在している、ある意味主人公にいちばん近いキャラなのかな。

 

オトメ

非常に申し訳ないのだが彼女の優しさとかわいらしさが、わたしはゲームプレイ中ずっと苦手だった。人狼系のゲームなら相手を疑うときは「おめーはあやしいんだよ!!」という態度でいてほしい。

ただし彼女は知性が高いという設定もあったはず。あの「優しさ」と「かわいらしさ」が生き抜くための計算だとしたら納得できるし、そういうことなら好感度も上がる。

「ククルシカの言葉がわかる」というのは、エンディング後に考えると恐ろしい。いったい何を話していたの……。

 

沙明

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ハイパー土下座マン。

イベントの条件をあと少しで満たす! というときに沙明の土下座で何もかも台無しにされること数知れず。ステルスが高いせいで倒しにくい敵だったな。

ちなみに自分はステルスを上げたのが遅めだったので、自分が土下座で窮地を脱する恩恵にあずかれたのは一回しかない。

エンディングで土下座スチルが使われていた点については、開発者のセンスを感じる。

 

レムナン

「かわいそうな人」でありそのポジションがあまりにも似合ってしまう外見・言動なのだが、現在の彼を動かしているのは根本的には「怒り」なのではないだろうか。

マナンへの怒り。自分の置かれた状況への怒り。こんな世界全体に対する怒り。

弱気な言動に混じって時々現れる強い言葉からなんとなくそれを感じていたら、エンディングで革命家になっていて納得した。

ラキオともいいコンビになると思う。「怒り」という感情で動く彼を、理性の化身たる(彼は Racio なので)ラキオがうまくサポートしていたのではないか。

わたしのプレイ中の最後の特記事項が彼のものだった。イベント発生した! と思ったらその晩に消されてしまったりして、なかなか苦労した。

 

ジョナス

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↑ここのパートも苦労したな……。

「能力値は高いがそれを活かす展開にならない」という設定をこれほどうまく表現したキャラがほかにいるだろうか。

本当に無意味に疑われて無意味に凍らされてるんだよな、人間だろうがグノーシアだろうが。

彼に関しては謎が多いまま終わってしまったが、「うやむやにする」のが得意な彼のことだし、それでいいような気もする。英雄だった頃の彼の輝きも見てみたかったな。

 

夕里子

彼女についてもいまだに何が何やらな部分は多いのだが、夕里子様なのでそういうものなのだろうと思っておく。

ラキオ生存と並んで、グノーシア夕里子を追い詰めるのにも苦労した。人狼初心者(人狼系ゲームはいろいろやっているが生身の人間相手にはやったことがないのだ)には強敵だった……。最初からガンガンあやしんでもうまくいかないことを学び、ほか2名のグノーシアを凍らせた後、そこまで積んだ状況証拠からみんなに疑わせるやり方でなんとか勝利。

確かに彼女の話したことは全部事実だったが、もう少しわかりやすく言ってくれ~。

 

SQ

プレイヤーを二周目へと駆り立てる動機を担うキャラ。

いやはや、もう一度やってSQとマナンのときの言動の違い、周囲の反応の違いをじっくり見たい。

彼女を信用して序盤で何度かひどいめにあったので、基本的に何を言われても信用しないプレイに徹していたのだが、そんな……そんなことになっていたなら、もう一度確認したくなってしまうではないか。

「あの人は嘘つきだから」はマナンの危険性を警告してくれていたんだな。

「生まれたて」というのも本当のことで、わけのわからない状況の中でステルス・かわいげ・演技力を最大限に発揮して身を守っていたんだと思うと、やはりもう一度振り返りたくなってくる。

やっぱり彼女こそこのゲームのパッケージにふさわしいよな、と最後までプレイして思う。「二体」どころではなく何体もいたらしいので、そういう意味でもこのゲームの象徴かもしれない。

 

主人公

こんなことが始まった元凶は自分だった、自分こそこの世界のバグだった=プレイヤーの存在こそがこの世界のイレギュラー……という、メタを含む存在。でもこのゲームはあまりそのメタを前面に押し出してこないバランス感覚が良かった気がする。

でもこの構造に気づくことによって真エンドにたどり着けるという展開はとてもきれいだったな。

「二面性」というよりは「二体性」がいろいろな形で表現されていたシナリオは、結局主人公が「二体」存在しているというオチに収束する。

こういうふうに各キャラの過去や背景を深く探っていくゲームだとキャラに二面性があることは少なくないが(というかそもそもすべてのキャラに「人間」と「グノーシア」の二面が用意されているし)、こんなにも「二体(あるいはそれ以上)」の存在が続くのがずっと不思議だった。それがオチにつながっているのは、なるほどよくできている。

Switch版のアイコンのSQも二体いるし、このあたり全部がオチのために配置された要素だったのかな、とクリアしてみると思えるのだった。

 

さて、大変楽しく遊ばせてもらったので同じ開発のメゾン・ド・魔王も気になっている。こちらもSwitchに移植されているし、そのうちやってみようかな!

 

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