本編をクリアしたので、紅鮭団でせっせとデートを重ねている。毎度のことながらこのセリフを本編プレイ中に聞いておけばまた印象が変わっただろうと思えるものもあり、好感度上げシステムと本編シナリオの絡み方の奥深さを感じる。そして今回も増えていくパンツたち。
以下は王馬小吉くんに関するネタバレキャラ語り。過去作のネタバレも含む。
1章の感想はこちら。
【170417追記】
ゲーム発売から数か月たっても相変わらずこのページへのアクセス数は非常に多い。
ちょっと心配になったのでこの記事を書いたいきさつについて補足しておきたい。
この記事を書いた当時、つまりゲーム発売からおよそ1週間後、王馬くんに対する評価は今とかなり違っていた(「今」についてもファンの総意があるわけではないが、わたしの観測できる範囲のファンにおける評価ということで)。あの顔芸がよほど強烈だったのだろうが、王馬くんの名前を検索すると、とにかく狂気と悪意のキャラ、怖い、胸糞、みたいな感想が溢れていた。わたしはそういう感想に対して「それは違うよ!」がしたかったわけだ(なので↓の記事の書き出しは「王馬小吉は狂気のキャラか?」で始まっている)。
いや、100%違うと言いたいわけではない。そうではない見方もできるのでは? と反論したくなったというか。正直、今読み直すと王馬くんに好意的すぎるとは思う。
ところが思った以上にこの記事があちこちで拡散されて(ありがたいことではあるのだが)、「王馬小吉」で検索すると1ページ目にこの記事がヒットするようになってしまった。王馬くんに関心を持った人の何割かは、確実にこのページを見ていると思われる。
で、現状、王馬くんはなんだか「いい子」扱いが定着しつつあるような気がする(これもファンの全貌を把握しているわけではないのだが)。自分でも「この子いい子だろ…」という可能性を感じたしそう書いておいてアレだが、当然ながら彼は「いい子」なだけのキャラではない。王馬ファンの感想がそっちにばかり傾くのもなんだかなと思ったりしている。
わたしがこの記事を書いた1月時点で、当時のわたしと同じようなことを思っていた人はかなりいたようで、この記事はあちこちで同意の言葉とともに拡散された。その中には影響力の大きな人もいたようである。記事をあげてから1週間くらいで、王馬くんを語る言葉はかなり変化した(つまりゲーム発売から2週間たっていたわけで、プレイ直後の興奮が収まって少しずつ冷静に振り返ることができるファンが増えたということもあるだろう)。Twitterのリアルタイム検索を眺めながら、結構どきどきしたのを覚えている。
だから、以下の記事を読む際は発売直後の状況、「王馬こわすぎ」みたいな感想が溢れまくっていた状況を想像しながら読んでもらいたい。そこに一石を投じるには…というわたしの試行錯誤を感じてもらえれば望外の喜びである。そして「自分ならその状況でどう反論するか?」を想像しながら読むと、さらに楽しいと思う。
--------------【追記ここまで】
王馬小吉は狂気のキャラか?
プレイ中に印象が最も上下したのは王馬くんだった。3・4・5章の感想でそれぞれ王馬くんに触れてあり、おかげで自分の中での彼の印象の変化がわかりやすい。
そういう動機を待っていた「ニューダンガンロンパV3」第3章感想 - なぜ面白いのか
前作プレイヤーは手の上で弄ばれるしかない「ニューダンガンロンパV3」第4章感想 - なぜ面白いのか
決定不可能性「ニューダンガンロンパV3」第5章感想 - なぜ面白いのか
そしてクリア後、また王馬くんの印象が変わった。それをまとめてみたい。
王馬くんは今回の公式テーマ「嘘」を体現し、かつ狛枝に匹敵する衝撃と胸糞悪さと恐怖を与えるポジションとしてデザインされたキャラクターだと思われる。
彼に対するわたしの印象を1行ずつでまとめると、
2章まで→十神的ポジション?
3章→狛枝ポジション?狛枝ほどの両義性はないけど…
4章→狛枝というよりモノクマとキャラかぶり?このまま首謀者なわけないよね?
5章→やってくれました!!!!濃厚な悪意をありがとう!!!
5章まではこうだった。5章の感想でわたしはこう書いている。
王馬くんは「嘘」をコンセプトとしたキャラだった。最終的にその面白さは「揺らぎ」にあった。彼をどう解釈するかは、結局プレイヤー次第だ。特に彼の最期の言葉は、どこまで嘘だったのかゲームのテキストだけでは完全な判別が難しい。
王馬くんの面白さは「揺らぎ」にあるとしている。どちらに解釈すべきか決定できないという意味だ。「悪の総統」として首謀者に勝つために自分の命まで使った、悪意と狂気のキャラなのか、すべてを「嘘」にすることで仲間を守ろうとした善意のキャラなのか。5章クリア時点では、8割悪意で2割善意くらいだろうと考えていた。
まさか彼の死後、6章でそれをひっくり返すものが待っていたなんて。
「悪の組織」とは
王馬くんの口にする「悪の組織」と、彼の動機ビデオや研究教室が語る「悪の組織」にはずいぶん差がある。そして実際の王馬くんの「設定」は動機ビデオなどの方、つまり「人を殺さない、笑える犯罪」をプロデュースする組織の方だと思われる。王馬くんのビジュアルデザインも話し方も、むしろそっちのキャラクターに合わせたものと考えた方がしっくりくる。
だとすると、生前の王馬くんが演じていたキャラクターはほとんどすべてが「嘘」ということになる。彼は学園内で目覚めた後、状況を把握するなり「嘘」で身を固めたのだ。もともと「嘘つき」なキャラではあったのかもしれない。その点は「人を殺さない笑える犯罪」組織の総統であっても矛盾しない。
序盤は王馬くんも様子を見ていたのだろう。だが事件の証拠をきっちり持ち帰って調べているあたり、誰よりも正確に状況を把握しようと努めていたことが窺える。おそらく最原くんよりも正確に把握していただろう。王馬くんの部屋にあったホワイトボードには、16人の人間関係が詳しく書き込まれていた。あのホワイトボードを作成する裏ルート解放お願いします。王馬くん視点で日常パートやりたい。
そして割と早い段階で(具体的にいつからなのかについては、2周目をして確かめたい)、このゲームに勝つことを目標に据えた。そこからは自分の設定を最大限利用して、新しい自分の「キャラクター」を自分で作り上げた。すなわち、自分こそコロシアイの首謀者だと思わせるミスリードだ。
そこからの流れは最原ちゃんも知るとおり。
人を殺さない組織の総統としての矜持
王馬くんが「人を殺さない、笑える犯罪」組織の総統だったことをふまえて本編を見直すと、彼の言動の意味がまた変わって見える。王馬くんはどんな気持ちで仲間が次々と死んでいく様子を見ていたのか。「こんなものは笑えない」と思っていたのではないだろうか。笑えない、つまり王馬くん風に言うと「つまらなくなくない」のだ。要するにツマラナイのだ。
王馬くんの組織の部下は、王馬くんにとって家族同然だったという。つまり王馬くんは本来仲間というものをとても大事にし、その仲間たちとイタズラもしながら笑って生きることを目標としていたはずだ。その彼があんなふうに学園の「仲間」を欺き、誘導し、自分も殺されかけ、ゴン太くんに人殺しまでさせた。自分を「首謀者」とみなしてもらうため、そして最終的には自分を殺してもらうために、そこまでしなければならなかった。その心中を思うと胸が痛くなる。
王馬くん自身は、最後まで一人も殺していない。ハルマキちゃんの毒でやられたことで自分の命と引きかえにゲームに勝つことを考えたように見えたが、彼の計画はもともとそういうものだったのではないか。誰も殺さずにゲームに勝つとなると、自分が死ぬしかないからだ。彼はそのためのさまざまなシナリオを用意し、周到に準備していたはずだ。「ろは ふたご」の場所のヒントを「遺書じゃない」ものとして遺したのもその準備の一つだ。時系列を考えると、あの「遺書じゃない」ものを用意していたのはゲーム世界に入る前の可能性がある(ここは2周目で確認したい)。そして準備の最終段階として、王馬くんは百田くんを拉致した。自分が殺される状況を作るために。
少々善意に解釈しすぎかもしれないが(入間さん殺害はほぼ王馬くんが主犯だし)、これが現時点での王馬くんへの印象である。「人を殺さない」「嘘で人を楽しませる(紅鮭団エンディングより)」ことをモットーとしていたはずの彼にとって、コロシアイゲームは何を犠牲にしようとも否定しなければならないものだった。そして絶対に勝たなくてはならないものだった。自分を「総統」と認めてくれた部下たちのためにも、絶対に。
王馬くんが仲間たちとあのスーパーカーを乗り回すところを見てみたかった。最原くんやキーボくんたちと、中庭でラジコンヘリを飛ばすところを見てみたかった。王馬くんが死んでしまってからあの部屋が解放されるなんて。しかし考えてみると、生前にあの部屋が解放されていたら、王馬くんの計画がいろいろと台無しになっていたな。
5章終了時点では悪意8割、善意2割と見ていたキャラが、クリア後には悪意2割、善意8割くらいの解釈になった。以上をふまえてまた2周目をやってみようと思う。またさらに印象が変わるかもしれない。
(追記)
王馬くんにもらったスキル名を見直して泣いた。この子絶対いい子だろ…。
(さらに追記)
モノクマコインで王馬くんの設定画を開いてびっくり。あの服、拘束衣モチーフだったのか…。
(170121追記)
4章について
上でも書いたが、ちょっとわかりにくかった&もうちょっと考えたことがあるので4章について振り返ってみる。
王馬くんの目的は「ゲームに勝って仲間を助ける」ことだと仮定する。そのための手段は「犯人不定、被害者不定の状況をつくる」こと。さらにそのために「自分が被害者になる」展開を考えていた。王馬くんは「人を殺さない」ことをモットーとしていたはずだから。
でも「100%自分が望んだ形で自分が被害者になる」のはとても難しい。ただ殺されるだけではだめなのだから。少なくとも入間さんの犯行計画では、王馬くんの望む展開(=生き残ったみんなを助ける)にもっていくことはできなかった。そこで王馬くんはあの展開を思いついたのではないだろうか。
王馬くんにとって重要だったのは、「自分を首謀者だとみんなに思い込ませる」こと。自分を首謀者だと勘違いした上で、みんなが自分を殺しかねない状況をつくれば、「犯人不定、被害者不定の状況」もつくりやすくなる(シナリオはあらかじめ何本か用意していたはず)。だから王馬くんは4章の裁判であれだけみんなのヘイトをため、自分を首謀者だと思わせた。全部、最終的に自分の望む形で自分を殺してもらうためだ。
結局ゴン太くんと入間さんを犠牲にしているわけだが、そこはもう避けられなかったのかもしれない。何しろ入間さんは完全に殺る気スイッチが入ってしまっていたから。あのとき王馬くんが約束の場所に現れなかったとしても、次の機会にほかの誰かが殺されていたものと思われる。そこで自分が死ぬことも自分がクロになることも許容できない以上、誰かを利用して入間さんを殺すしかない。…という、苦渋の選択だったのかなと。
現時点での解釈はこんな感じだ。
(170203追記)
5章について
コメントから5章の王馬くんの解釈についてご質問をいただいた(ありがとうございます!)。コメントは非公開のままでいいとのことなので、一部引用させてもらいながら考えてみたい。なおわたしは現在二周目プレイ中なのだが、ついすごろくに逃げてしまいがちなため進みが遅く、ようやく1章に入ったところである。そのため実質一周した時点での印象ということをお断りしておきたい。二周目でまた何か印象が変わったら、新しく何か書くかもしれない。
五章の回想で王馬自身が「首謀者のフリをしていたのは首謀者として外の世界の絶望的な真実を見せればコロシアイなんて起きなくなると思ったから」と言っていたのを見てわからなくなり、この発言の真偽について筆者さんがどう思っているかを聞きたくこうしてコメントさせていただきました。
この言葉については4割くらい本気だったのではないかと考えている。残りの6割では「とはいえコロシアイが起きなくなれば、本物の首謀者がさらに手を打ってくるだろう」と読んでいたとか。
もし本当にコロシアイが起きなくなればもちろんOK、しかし起こってしまったときのためのシナリオも何通りか用意し、そのための仕込みも始めておくというのが5章開始時点での王馬くんの立場ではないかと。
王馬くんはコロシアイを見ている誰かがいると想定していたようなので、事件が起こらなくなっては「視聴者」が退屈し、主催者が何かしらテコ入れするだろうということは予想できたのではないかと思われる。これまでも章ごとに記憶を「解放」することで動機を与えてきた主催者なのだから(とはいえ、そこで自分が絶望の残党扱いされることはさすがに予想できなかっただろう)。
この件については、王馬くんは悪の総統としてこの手のゲーム(人が死んだりはしない、参加者みんなが笑って終われるようなもの)を主催したことがあった(という設定)のではないかと想像している。だから主催者の立場からゲームを見たり、視聴者を意識した行動をとることができたのではないかと。
わたしとしては、王馬くんが百田くんを監禁したのは、全員に自分を殺す動機を与えるためだと考えている。その上で、自分を殺すための手段(ハンマーとか)をも与えている(このあたり、前後関係の記憶があやふやなので要確認)。全員が行動を起こせばそれだけ自分のシナリオ(被害者・犯人ともに不定の状況作り)がうまくいく可能性は高まり、状況に付加できる謎も増えるからだ。実際、あの晩はほとんど全員が何かしら行動をとり、状況は非常に複雑になった。最終的に自分を殺す「犯人」役は誰でもよかったのではないかと思っている(とはいえ、状況と適性から百田くんが「犯人」になる可能性が高いとは予想していたはず)。
それをふまえてこの問題も考えてみると、
何かしら武器を手にした百田に襲われることは予想(むしろ監禁も計画のうちであれば誘導になりますね)できても、春川の件は予想できなかったと思う
春川さんの行動もある種の誘導だったのではないかと思えてくる。ここは二周目で確認したいのだが、春川さんは王馬くんを首謀者とみなしたあとも、彼から話を聞きだそうとしていたのではなかっただろうか? だから即効性の毒ではなく「拷問致死薬」を持ち出したという流れだったような。王馬くんも、生き残りメンバーに自分を問答無用で殺すような人はいないと賭けたのではないかと思う(「問答後に殺す」計画を立てる人が出ると予想し、もし問答無用で襲ってくるならそのときは自分の「負け」を認めて殺されたかも)。
王馬くんは各研究教室にあるものをしっかり把握していたはずで、「自分を武力制圧して話を聞こうとする相手」ならどんな手段でくるかについてはある程度予想できたと思われる。可能性は複数あったとしても、5つくらいまで絞れれば王馬くんなら対応可能だろうという謎の信頼感がある。ついでに、最原くんの研究教室で「拷問致死薬」の容器をさりげなく目のとまりやすいところに並べ替えておくくらいのことはしてあったかもしれない。
狙って「即死にはならない致命傷を負う」のはやり直しが効かない上に確実性がなくあまりにも運要素が強すぎるので、あの王馬が取る行動としては違和感があります
確かにそのとおりで、そこまで予想していたとしても、この計画には確実性がないし運要素も強すぎる。ただ、むしろそこが王馬くんらしい計画だという気もしている。「ダイスの総統」としての王馬くんの性格を想像すると、100%うまくいく計画よりも、自分の運に賭ける計画の方を「つまらなくない」と思ったりしないかなと(肝心な部分を運に賭けたのだとしたら、2-5との結びつきも強くなるような……まあ狛枝の「運に賭ける」は「ほぼ確実にうまくいく」という意味だからまた違うケースなのだけど)。
王馬くんはなんだかんだで「ゲーム」の盤上で勝負して勝とうとした(一方最原くんは盤上から降りることを選択した)キャラだから、その勝負に運要素が絡むのをむしろ好むかもしれないとも思うのだ。あるいは運に賭けない限り勝てない相手だと、首謀者のことを認めていたのかもしれない。このあたりについては二周目で確かめてみたい。二周目プレイ後のわたしが「やっぱり王馬くんは自分の計画の成功を確信していたはず」とか言いだす可能性もある。
現時点での考えとあとで確かめたいことをまとめておくと、
・王馬くんは全員に自分を殺す動機と手段を与えていた(前後関係要確認)
・自分を殺す「犯人」役候補が増えるほどよかった
・状況を完成させてくれるなら、「犯人」役は誰でもよかった
(とはいえ百田くんになる可能性が最も高かった)
・主催者のテコ入れ、それによる春川さんの行動はある程度予測されていた
・「ゲーム」に勝つには運の良さも大事
・春川さんが「拷問致死薬」を手にした理由は説明されていた気がするんだけど何だったっけ?
というところだ。
王馬の目的が殺されることだったとすれば辻褄の合う疑問点はあれど、それを否定するような疑問点もまた浮上してくるので本当に頭が痛い……!いやとても気持ちのいい頭痛ですけど。
本当、その通り! 王馬くんの言動は素のように見える部分も嘘の可能性があるため(なにしろ百田くんがあそこまでレベルの高い演技を見せてくれたわけで……)、何を前提とするかによって結論も変わってしまうのが面白くも難しい。
特に4章~5章はいろいろ確かめたいことが多いので、二周目ものんびりペースではあるが進めようと思う(すごろくが面白いのが悪い)。