「ダンガンロンパ霧切」の5巻、読了。
今回は露骨なネタバレは避けて、これからロン霧シリーズに手を出してみようかという人のための参考記事として書いてみたい。
とはいえ「中学生の霧切さんが見たい」と思う熱心な霧切さんファンであれば、とっくに全巻そろえているはず。シリーズは好きだがキャラ萌えしているというわけではないとか、とりわけ霧切さんのファンではないという人向けのつもりで書くことにする。
ダンガンロンパ本編はすべてプレイ済みであることを前提に書くため、過去作のネタバレは普通にあり。
霧切響子、中学生
このへんの基本情報は未読の人も知っていると思われるが、一応ここから始めよう。
1での高校生霧切さんと、中学生の霧切さんは結構キャラが違う。その変化は、1をプレイ済みだと興味深く感じる。一言でいうと、1の霧切さんよりも全体的にSWEETである。言動が1よりも柔らかく、主人公「結お姉さま」に対する態度がかわいらしい。
探偵としての能力は、高校生霧切さんから見劣りするということもない。昔からすごかったんだなという感じである。ただし中学生霧切さんの、事件への態度は、単純に1と比較することはできない。ゲーム本編は、被害者も加害者も閉鎖環境に置かれた者同士、いわば全員が被害者とでもいうべき状況なのに対して、ロン霧シリーズの犯人は事件を起こすことを自ら決めた者たちばかりだ。シチュエーションの違いはかなり大きい。
成長する「探偵」にして主人公
ところで先ほど主人公「結お姉さま」と書いたが、ダンガンロンパ霧切の主人公は霧切さんではなく、五月雨結という女子高生探偵だ。
彼女は過去にある事件で妹を失い、その事件をきっかけに探偵になることを決める。しかし彼女は自分でも認めているとおり、かなり普通の女の子だ。探偵としての能力が飛びぬけているわけではない。探偵小説として読んだ場合、霧切さんがホームズ役で結お姉さまはワトソン役である。
だが結お姉さまは「成長する主人公」だった。霧切さんと一緒に事件に巻き込まれる中で、彼女も探偵としての才能をのばしていく。5巻では一人で事件の謎を解く展開も見せた。
今これを読むと、成長する「探偵」にして主人公といえば最原くんを連想する。わたしは1・2世界とV3世界が地続きだとは考えていないが、たとえば「チームダンガンロンパが最原くんのキャラ設定を作るにあたって結お姉さまのキャラを参考にした」くらいのことはやっているかもしれない。
また最原くんが探偵として認められるきっかけになった事件の犯人は、ロン霧シリーズに登場する某委員会の被害者(と呼ぶのもおかしいが)を思わせるものがある。恨みを抱いた人間が、恨みを晴らすためにトリックを用意して事件を起こすというアレである。最原くんがロン霧世界で探偵になった場合のことを想像するのも面白い。
ただし結お姉さまには、ダンガンロンパにおける主人公の印であるアンテナがはえていないのが気になる(↑の表紙絵の中央にいる、眼鏡の子が結お姉さま)。V3において、最原くんは2章で主人公交代してアンテナが見えるようになる。それくらい、ダンガンロンパの主人公にとってアンテナは象徴的なものだと思っているのだが。
ダンガンロンパ本編の、コロシアイに参加する「主人公」ではないというだけの意味かもしれないが、何か意図があるのだとしたら嫌な予感しかしない。というか結お姉さまに関しては、1巻当初からバッドエンドしか想像できない。彼女が霧切さんの「黒い手袋」の原因だとしか思えないからだ。
ロン霧を追っているファンの大半は、結お姉さまの迎えるバッドエンドを見て絶望することを楽しみにしているものと思っているのだが、どうだろうか。少なくともわたしは「ダンガンロンパゼロ」級のヤツを期待している。
本編との絡み
そのほかゲーム本編と絡んでいる部分といえば、霧切仁さん(1などに登場)、霧切不比等さん(絶対絶望少女)ら霧切さんの身内たち。生前の仁さんが出たのは嬉しいがつらいものがある。
5にはゴスロリギャンブラーについて言及されており、おそらくセレスさんのことだと思われる。こういうささやかな出演は嬉しいのでぜひもっとやってほしい。
不満点
わたしはこの話をダンガンロンパのスピンオフとして楽しんでいる。ただ、いささか不満もある。
短い。
まず、これ。短編ミステリィがダメなわけではない。個々の事件は結構面白そうなのに、ダイジェストを読んでいるかのようなあっさり感。
世界観や舞台の描写があっさりなのは、読者がダンガンロンパの世界観を知っている前提で書かれているからだと納得もできるのだが、事件パートが薄味すぎるのだ。もう少し事件をしっかり書いてほしい。せっかく小説なのだから、ゲームではできないようなねっとりした描写が見たい。
悪意が足りない。
あと、これ。このブログでは再三言っているように、わたしがダンガンロンパに求めるものは悪意である。それもキャラクターをとびこえてプレイヤーを直撃する悪意である。それがこのシリーズには足りない。ないわけではないが、ゲーム本編に比べれば圧倒的に薄い。もっと悪意を!!
ただしこれについては、完結を待たずそんな感想を言うべきではないかもしれない。最後に特大の悪意でもって読者を絶望に突き落としてくれるのなら、わたしは絶賛する。もっと言うなら、特大の悪意さえあれば事件パートはあっさりのままでも全然かまわない。
はたしてこの記事を読んだ人がロン霧シリーズに手を出す気になってくれるかどうか疑問になってきたが、ともかく現時点で書き残しておきたいことはこれくらいだ。