今日は「ダウントンアビー」S4の感想。
ネタバレあり!
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デイジーとアルフレッドの別れ
S4で最も心が打たれたのはこのシーン。S4でというか、「ダウントンアビー」を見始めてこんなに泣いたのは初めてだったかもしれない。
まさかこのドラマでこんなに爽やかで切ない恋心が描かれるとは。いい意味で期待を裏切られた。
それまで自分の恋心をうまく処理できずにいたデイジーが、メイソンとの会話を通してきちんと会ってお別れを言うと決意した。
ものすごい成長だと思う。
功労者メイソン氏の台詞もよかった。好きだと思える人に会えただけでも幸運だと。それをデイジーに言ってやれる彼も、素敵な老紳士である。何しろデイジーはメイソンから見れば息子の嫁なわけで。彼女を娘のように思っていると言ったメイソンの言葉は、言葉だけではなく本心だったのだろう。
「これからもずっと友達だよ」
「あなたを応援している」
なんてシンプルで強い別れの言葉だろうか。
デイジーよりもたくさんの苦い別れや辛い別れを経験しているであろうメイソンだからこそ、彼女にはここでそんな思いをさせたくなかったのだろう。
デイジーにはそこまでの想像はできなかったとしても、彼の言葉を素直に受け入れる力があった。
それはこれまでのデイジーとメイソンの信頼関係が生み出したものでもあり、彼女とアルフレッドの関係が生み出したものでもある。
彼らみんなが積み重ねてきたものの大きさに思い至ると、やはり涙せずにいられない。
そしてデイジーの後を追うミセス・パットモアの言葉。
「お前がバスケットを取り出したとき、本当に誇りに思った」
そう言って彼女は涙ぐんだ。
これ以上ないほど視聴者の声を代弁してくれている。
幼くて失敗も多かったデイジーがこんなに成長して、人の成功を祈ることができる優しい娘になったことを、わたしも本当に嬉しく思った。
アルフレッドが汽車の中でデイジーのプレゼントを口にして、彼女のことを思いだしてくれているといい。これからの彼の料理人としての人生の中に、デイジーの料理がずっと思い出として残るといい。
ベイツさんはやったの? やってないの?
一方ベイツ夫妻に関しては、もうネタバレ検索してしまおうかと思ったくらい先が気になる(まだ踏みとどまっている)。
というか過去の事件についても気になる。
結局前の妻もやっちゃったの? やっちゃってないの?
作り手は明らかに「今回はやってる」と思わせる方で演出しているので、裏をかいて本当に事故だった! というのもアリだと思う。
しかし……。
若干もやもやしたのは、誰もベイツ氏を信用してないという点。
彼が人を傷つけたりする人ではないと本当に思われていたなら、アンナもヒューズもメアリーもあんなに事件を隠そうとしなかったはず。
そしてロンドン行の切符が出てきただけで「あいつやってるわ!」とはならなかったはず。
いくらなんでも信用なさすぎではないだろうか。
せめてアンナくらいは「夫はそんなことをする人ではない」と信じてあげてほしかった。
ヴァイオレット様のご活躍
このドラマでわたしがいちばん好きなのはヴァイオレット様である。
1からずっと彼女の活躍を楽しみに見てきた。
もともと予告を見たときにマクゴナガル先生がドレス着てる! と驚いて見始めたドラマである。わたしの本命は最初から彼女なのだ。
ヴァイオレット様のすごいところは、そのバランス感覚である。
あとほんの少しきつかったら、ただの嫌なおばあちゃんだ。
あとほんの少し柔らかかったら彼女の威厳はなくなり、ドラマ全体の緊張感も緩んでしまうだろう。
嫌味だけど知的でユーモアがあり、愛らしいヴァイオレット様。
この絶妙なバランスがこのドラマにどれほど貢献しているか、ドラマに深みと奥行きと笑いをもたらしているか。
彼女は「ブリティッシュ」という言葉を擬人化したような存在だ。
ヴァイオレット様の台詞を全部書きだして毎日音読し、暗誦できるようになれば、「英会話」は完璧になるだろう。
余談だが、「ゲームオブスローンズ」を見始めた直後のわたしの感想は「ヴァイオレット様のいないダウントンアビー」だった。ヴァイオレット様のポジションにあたる人がいればこの群像劇はもっと面白くなるのに! とずっと思っていた(かっこいい男性年配キャラはそろっているのだが)。なのでオレナさんが登場したときは飛び上がって喜んだものである。
実際、オレナさんはヴァイオレット様ほどの存在感はないが、作中で非常に重要な役回りになってくれた。今後の活躍にも期待している。