かなり時間がかかってしまったが、「善人シボウデス」クリア!
「9時間9人9の扉」に引き続き、こちらも面白かった。すでに「刻のジレンマ」は入手済みなので、このまま流れるように続きをプレイしたい。でもその前に今の時点で見られる範囲の、善デスネタバレ考察サイトも見て回りたいし、自分の感想も書き残しておきたい。
先に未プレイの人向けの簡単な感想&アドバイスを書いておくと、
・前作999が面白かったならこっちもやるべき。
・逆に999をやらずにここから始めようとしているなら、999から始めるべき。
・作り手の言う「前作未プレイでも大丈夫」は信じるな。フォローがあるのは事実だが、絶対に前作からやった方が面白い。
・前作キャラとか前作関連キャラとか前作用語とかバンバン出てくるし、前作のオチが今作の前提になっている。
・999に続きこちらもDSの2画面を想定して作られているため、vitaだと多少の不親切さを感じる。が、画面がきれいなのはvitaだし、DSではダブルパックが出ていないので好きなのを選べばよい。
・話の完結は次作「刻のジレンマ」(発売済み)に持ち越し。
・今回のノナリーゲームがなぜ行われたか、黒幕が誰かなどはきちんと判明する。登場キャラたちがその後どうなるかについては次作で、という感じ。
・あらかじめ「刻のジレンマ」を買ってからクリアすると、そのまま流れるように続編をプレイできる。
・例によって荒唐無稽な設定が出てくるが、ロンパとかシュタゲとかが大丈夫ならこっちも大丈夫なレベル。
・脱出パートは前作より難易度が上がったが、イージーモードに設定すればキャラがヒントをペラペラしゃべってくれるらしい。
・前作ほど数字パズルばかりではない。わたしは一部メモをとる必要があった(電車内で)。携帯機で出しているのだから、できればメモ不要なパズルでまとめてほしかったと思わなくもない。
これくらいかな。
以下はネタバレ感想なので、クリア後の閲覧を推奨。
どんなふうに感想を書いていくか迷った結果(話自体がまだ完結していないし)、キャラ語りの形にしようと思い至った。というわけで一人ずついってみよう。
シグマ
彼の正体はほとんど最後まで気づかなかった。しかし伏線はあちこちにあったようだ。
天明寺&老婆の正体に中盤で気づく人は多いと思うが、それはむしろ本命であるシグマの正体に目を向けさせないための目くらましだったわけだ。お見事である。
シグマの腕はバングルを確認するたびに表示されるし、首から下まではときどき見えるのだが、首から上は見せられなかった。999では脱出パートに入るたびに淳平くんの顔カットが入っていた(あのカットの意味も前記事で深読みしてみたが、よくできている)のに対し、今回は文字カットだけという徹底ぶり。これはまた何かあるなとは思ったが、パッケージのキャラ絵が嘘だったとは……。いや厳密には嘘とまでは言えないか。
最初の脱出ゲームで彼に「老人を数えさせる」仕掛けがあるのは、気がきいているというか皮肉というか。
しかしわたし、パッケージはゲームが届いたときにチラ見しただけで、公式サイトも見ておらず(買うと決めたゲームは一切の情報を遮断する)、K;ENDでKのヘルメットがとれたときに「えっと、誰?」状態だった(ポリゴンの精度もあまり高いとは言えないし……)。シグマが「これは俺じゃないか!」とか言いだすから「あ、君こんな顔してたの」みたいな。
バングルを確認する際の腕アップ、各キャラの個性が腕と手にも出ていて(天明寺は皺があったり、ルナは色白だったり、アリスはマニキュアをつけていたり)、シグマは若々しく筋肉質な腕だと思っていたのに老人だったなんて! と思ったが、よく考えればシグマの腕は作り物。腕だけ若いのも納得である。しかし目につけたアレはさすがに自分で気づくのではないだろうか。一度も顔を触らなかったのか? あとビオトープで何度も水底を覗きこんでいたが、そのときに自分の顔は見なかったのか。
そしてあの老人が「にゃー」とか「スク水」を連呼していたと思うと、痛々しさがさらに増す。よくファイやルナの信頼を得られたな。
つっこみどころとしては、理系大学院生(ドクターの学位は未取得らしいから、マスターを取った後、博士課程後期の学生だと思われる)がシュレディンガーの猫……というか量子論を知らないなんてありえるか? という部分。教養教育レベルの話ではないのか。シグマの専攻は生命科学分野だと思われるが、直接自分の専門とは関係なくても、そういう話にまったく触れずにあの年齢を迎えられるとは思えない。しかも彼は瞬間記憶能力者っぽいから、どこかで見たレベルの話なら覚えていられるはず。おかしい。主人公の知的レベルを幼いプレイヤーの視点に合わせたといえばそれまでだが、そんな主人公がこれから偉大な発明を次々していけるのかと不安だ。
ファイ
君はいったい誰だったの?
ラジカル6の抗体保持者が彼女で、最初から病気にかかっていなかったために大ジャンプを見せたりしたのか? と一瞬考えたが、そういえば彼女も発症した描写があったっけ。
善デスだけを見ると、ファイの存在は必要とはいえない。世界線移動するのはシグマだけでも成り立つ話である。世界線移動で混乱するシグマにとって精神的な助けになったくらいか。
しかしどうやらこの世界線移動には「+α」のルールがあるらしく、ファイはそれ絡みで連れてこられたらしい。というか自ら志願してコールドスリープに入ったらしい。茜たちともともと何か関係があるのか。
K
幼少期のイラストwwwwと思っていたら、あれが事実だったらしい。なるほど、月の重力下で筋力を落とさないためのスーツだったと。
記憶を取り戻したときにシグマのことを「父」と呼ばなかったのは、もともと口止めされていたということだろうか。それができるなら彼の記憶を奪う必要もないような? 彼にも危機的状況を感じ取ってもらう必要があったからか?(最後に謎の人物を体に入れる必要があった?)
彼はABゲームにおいて結構な頻度で「裏切り」も選ぶし、BPを9にして一人脱出してしまうエンディングもあったり、行動がシグマとかぶるのはもともと同じ人物だからか。
最後にカイルに入ってくる謎の人物=プレイヤー(=形態形成場?)だと解釈しているが、この人物がキャラクター化されて「刻のジレンマ」主人公になる展開もアリか。
ルナ
999プレイ済みだとあやしく見える人ナンバーワン。ルナエンド後は彼女に謝ることになった。疑ってすみませんでした。
ルナといえば月なわけで、彼女はどこかで月と絡む話が出てくるのかと思っていたら、舞台が月でしたというオチ。最初から答えは提示されていたのであるなあ。
しかし彼女はロボット三原則を守ったといえるだろうか?
1. ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
2. ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
ラジカル6に感染させるのを黙認した時点で1と2に反しているような。実際に感染させたときには電源を落とされていたのだろうが、ここは若干納得できない。
天明寺
いくらなんでも口調変わりすぎじゃない?
クォークの前ではおじいちゃんキャラでいこうと決めたとでもいうのか。
999脱出後、茜を探し続けていたらしい。今回のノナリーゲーム参加理由も、茜に会うためだった。
四葉とニルスはアリスたちの機関に勧誘されたが、淳平は連絡がとれなかったらしい。一人で茜を追っていたとか。特務機関に入った方が情報は入ってきやすいような気もするのだが、考慮しなかったのだろうか。
しかしせっかく再会できた茜は、もう淳平の知る茜とはかけ離れていたわけで、気の毒である。999時点でだいぶ道を踏み外していたが。
彼は自身が「踏み台」にした歴史のひとつひとつを大切に覚えているからこそ、今の彼が置かれている歴史を簡単に捨てられない。パンデミックが起こったことは悲劇だが、パンデミックがあったからこそ出会えた自分とクォークの絆は手放せるものではないという。善デスは震災後に発売されたが、ある意味タイムリーだったのかもしれない。
茜の方もその感覚を理解できないわけではないとしても、捨てる選択ができる人という時点で、淳平にはもう人外のように見えてしまったと。この歴史の天明寺は、これでやっと茜の呪いから脱却してクォークと余生を過ごせるようになったのではないだろうか。
クォーク
今作の「9の人」枠か? と思ったが、生存エンドもあった。よかったよかった。結局ただのいい子だったわけか。
最初にアーカイブで「クリームソーダが好き」という話を読んだときと、クォークの手紙でクリームソーダを飲んだ話を読んだあとでは印象ががらっと変わる。
パンデミックが起こらない世界ではどんなふうに育つだろうか。
四葉
お兄ちゃんはどうなったんだよ!?
善デスプレイ中もプレイ後もいちばん気になっているのはこの点である。
四葉が拉致された後のニルスなんて、執拗な捜査(しかしこれがうまくいかなかったことは明らか)、発狂、自殺または闇堕ちくらいしか思いつかないぞ!
四葉も四葉で、前作ではあんなにお兄ちゃん子だったのに、今作ではアリスにべったりで(そうなるだけの信頼関係を1年で築いたにしても)、お兄ちゃんの話をあまりしてくれない。もう詳しいことはいいからハープを弾くお兄ちゃんのスチルはよ。
フリーザソウルの教祖の弟の名前が「レフト」と聞いて「まさかブラザー=ライト=ニルス?」と思ったプレイヤーは多いはず。というかそこは製作者も狙っているはず。フリーザソウル自体は第1回ノナリーゲーム開催時点からあったので、そんなはずはないのだが。いや、このシリーズって因果律がめちゃくちゃだからなあ。わからないなあ。Free the Soul of Y のYも、四葉のYか? とか考えられるようになっている。Yは歴史が分岐する様子を表しているような気もするが、これまでに出てきたキャラの中で頭文字Yの人ってほかにいたっけ……。
今作では斧エンドみたいなインパクトのあるエピソードはないし、計算を披露する機会もないし、本当にシグマとファイの能力を強化するためだけに呼ばれた感。
アリス
ICE9とは関係ない普通の人だった。
訓練を受けているはずの特務機関員が素人(シグマ)にナイフを奪われていいのか? と思ったが、ラジカル6を発症していたなら仕方ないのか。
彼女の母親のことを考えると、これまた気の毒だ。夫をフリーザソウルに殺され、娘は拉致されて行方不明。40年以上眠らされていたなら、母親も失意のうちに死んでいる可能性もある。茜よ、反省しろ。
こちらもシグマとファイの能力強化&数学の才能のために呼ばれたわけだが、結局のところ「茜がそういう未来を見た」のがそもそもの始まりで、「全員がその未来をなぞるように呼ばれた」というのが真相なのだろう。因果律をすごい勢いでドブに投げ込む話である。
ディオ
ただの感じ悪い人で終わるわけないよね→ただの悪い人だった!? という意外な人物ナンバーワン。
彼が追い詰められてパスワードをペラペラしゃべってくれるおかげで、シグマたちは能力を開花させたうえに一致団結してノナリーゲームをクリアできました☆という「あんた何しに来たの?」と言いたくなるキャラ。茜はすべてお見通しだった。
しかし茜がお見通しだったなら、同じような能力を持つブラザーだってこの結末は見えていたのではないのか。それも見越した上でパンデミックを起こしたというのか? 形態形成場により、一人がひらめいたことを集団が共有できるのなら、シグマやファイが強い能力を発現できたらそれを人類が共有できるようになって「真に平等な社会」が実現できてハッピーエンド的な?
そもそもブラザーとは何者なのか。アリスや四葉にとっても老人という認識のようだが、その時点で何才だというのか。ディオの知るブラザーはクローンだったり?
ディオはブラザーの弟レフトのクローンだが、彼は前作の誰かと特に似ているようには見えず。それならブラザーもレフトも前作キャラとは関係ないのか?(でもニルスと四葉だって全然似てないしな)
ディオの正体は盲目的な宗教家だったわけだが、その内面と軽薄そうな言動がかみ合わないのがふしぎだ。だいたい何なのその服装のチョイス。これから決死の覚悟で重要な任務に赴く宗教家の選ぶ格好か? これが教団の正装なのかとも思ったが、ブラザーのイラストを見る限りそういうふうには見えない。あと女性に対してももっと禁欲的であってほしいところだ。
序盤から信用できなさ全開の言動で参加者を煽り、ABゲームでも積極的に裏切っていくスタイルなあたり、とても優秀な工作員とは思えない。ノナリーゲームを失敗させるのが目的なら、たとえばKのように物腰柔らかな言動で相手を油断させて、肝心なところで裏切るのが良い手ではないのか。とはいえ「クレイドールズのリーダー」というのもただの自称なわけで、どこまでがブラザーの意図なのかはわからない。ブラザーはこうなることを見越して、使えないボンクラを送り込んだ可能性もある。
茜
サンタはどうなったの?
ニルスの次に気になっているのがこれである。あれだけ茜に執着していたサンタなのに、茜に危険が及ぶ計画(ルートの大半で茜は死ぬ)を立てるのに賛成したとは思えない。999のときだって危険だったが、あれはそもそも茜を助けるための計画だからやむを得ない。では今作においてサンタはどうなっているのか? 生きているなら老人になっているはずだが、パンデミックで死んだ可能性もある?
ラジカル6の話題が出た時点で、今回のノナリーゲームの目的がパンデミック防止にあるのだろうということは見当がつく。Kや天明寺の話から、老婆=茜であることも中盤にわかる。それらが全部シグマの正体への目くらましだというところがこの話のポイント。
茜は未来を知った時点でシグマを拉致し、研究を始めさせた。ここまでのところを茜一人でやれたとは思えない。途中まではサンタも協力したのだろうか?
過去の茜が着ていた黒いローブも気になる。あれは拉致時のゼロが着ているものだ。999では服交換後のニルスも着ていた。で、あのローブ、フリーザソウルのマークが入ってない?? 一度プレイしたきりだからきちんと比較したわけではないのだが、なんだか気になる。
ゼロ3世がウサギ型なのは、淳平との思い出のためだろうか。パスワード GRAPEDOLL といい、彼女の執着心もなかなかのものだ。しかしその執着心は四葉やニルス、アリスたちには向かない。彼らの人生を何だと思っているのか。999クリア時も思ったが、マジで茜は反省しろ。
さてディオの爆弾解除パスワードは、アーカイブのヒントに従って一字ずらすと意味のある文字列になる。
00→ MYB ROT HER
01→ CRA SHK EYS
02→ FRE EZS OUL
03→ CLA YDO LLS
02は「フリーザソウル」、03は「クレイドールズ」でいいとして(そういえば一宮の会社「クレイドル」もここから来ているに違いない)、残りが気になる。00 my brother の my とは誰のことなのか。「ブラザー」もしくは「レフト」でいいのか? 茜だったりはしないよね? そして01は最初 crash keys だと思ったのだが、ひょっとして Crashkeys くらしきーず? 倉敷さんが作った組織的な? この場合の倉敷さんって茜の方? 葵の方? 複数形だし両方だったり?
で、もしこれが本当に「くらしきーず」だとしたら、どうしてそれがクレイドールズによる爆弾解除のパスワードに使われているのか。フリーザソウルと茜の癒着が疑われる。君たち敵対してるんじゃなかったの?
「クレイドールズ」だって「泥人形」という意味で、「ゴーレム」に通じるものがある。なんかいろいろと引っ掛かる。ブラザーはレフトのクローンを「泥人形」と呼んで使い捨てにしている(本当に大切な弟のクローンならそんな扱いにするか?)のに対し、シグマは自身のクローンを大切に育て、ゴーレムも大事にしていたらしい。このあたりは対比に見えるが、まだよくわからない。
表現的なことへの感想
ここまで書いたものを見直すと「?」の多さに笑ってしまう。やはり未完の話の感想を書くとこうなるのは仕方ないか。
全体として、999をプレイ済みなら「そうなるよね」と感じるストーリー展開で、驚きは999に比べて少ないものの納得感はあった。システムまわりが改善されて、プレイ済みの脱出ゲームをやりなおさなくていいのも嬉しい(でも今作は脱出部屋の数が増えて、クリアまでに同じ部屋を何周もする必要はない)。
前作は「まるで〇〇のような……」という比喩表現がやたらと多くて(たぶん30分に1度ペースくらいで登場した)、ごく普通の大学生である淳平(あるいは小学生である茜)がこんな言い回しをするか?(しかも命の危険がある状況でそんな悠長な)と突っ込みまくっていた。今作でも同じような比喩表現はあるのだが、999ほど頻発しない。
命の危険がある状況でその場に関係ない話やギャグを挟みまくるのは相変わらず。これはやっぱり気になるのだが、ライターさんの作風なのだろう。つくづくロンパにおけるモノクマという「発明」は偉大だったと思う。あれのおかげで茶化すのはモノクマの役目になり、プレイヤーとコロシアイ参加者は呆然とそれを見守るという構図を保つことができた。
ロンパの話をしてしまったのでついでに少しだけ書くと、ロンパにおける「通信簿」システム的なものがこのシリーズにもあったらなあと思った。キャラクターの内面や、普段はどんな暮らしをしておりどんなことに興味があるのかといった話をもっと知ることができたら、キャラにもっと愛着が沸いただろう。そしてそんな話を聞かせてくれた(あるいは話の途中だった)キャラが死んでしまったとき、もっと悲しくなっただろう。999の時点でも同じように思ったが、あのシナリオだと「(非)日常編」を挟む余地はないから難しい。だが善デスはCDドアが開くまでに時間がある。あの時間を使えばキャラとの個人的な会話ができたのではないか。見たかった。しかし老人シグマが四葉やルナにプレゼントを貢いでパンツをもらうところを想像すると、あまり嬉しくない。
早く続きをやりたい
いろいろ疑問点も書いたが、ここまでですでに7000字をこえている。一気にこれだけ語れるくらいにはこのゲームにはまったということだ。こんな感想はすぐに終わらせて、さっさと続きをやりたい。999クリア時点でこうなることを見越して「刻のジレンマ」を購入しておいたわたし大勝利である。
ここに書いた疑問の大半は「刻のジレンマ」で解消されるに違いない。というか解消してもらわないと困る。ハードルはかなり上がっているが、それを飛び越えてくれるのを期待している。