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「ゲームオブスローンズ」リトルフィンガー役エイダン・ギレンインタビュー翻訳

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先日の記事で紹介した、Entertainment Weekly さんのエイダン・ギレン(リトルフィンガーの中の人)インタビューがとてもよくて、繰り返し読みたいので訳してみることにした。

いきなりS7のネタバレから始まるぞ! 注意!

なお訳すにあたり、正確さはナローシーの海底に全力でぶん投げて、たぶんこういう意図で言ったのだろう的なニュアンス優先にした。勝手に改行とか補足とかをしまくっているため、正確なところを知りたい方は原文を読むべし。

http://ew.com/tv/2017/08/27/game-thrones-season-7-finale-death/

( )は元記事内にある補足、【 】はわたしによる補足である。

元記事は2017年8月27日のもの。

 

 

 

 

例の悪名高い電話【「今度のシーズンで死んでもらうことになった」という連絡のこと】はいつありましたか?

例の電話ね。何のことを言ってるかわかるよ。(総指揮のダン・ワイスとデイヴィッド・ベニオフは)普通は電話なんてかけてこないんだ。せいぜい半年に一回くらい。

その電話のことは(ルース・ボルトン役の)マイケル・マケルハットンから聞いたんだ。電話をもらってどう思ったかっていうことも、彼は話してくれた。

それでもしその電話をもらったら、僕ならどう感じるだろう? って考えてみた。「もしもらったら」というよりはむしろ「いつもらうか」という話なんだけどね、リトルフィンガーみたいなキャラクターなら遅かれ早かれそういうことになるでしょ。番組はもう長年自分の生活の一部になっているから、「それのない生活ってどうなっちゃうんだろう?」と考えてしまうよね。大きな喪失感があると思うよ。

 

ルース・ボルトンが死んだのはS6で、これの撮影時期は2015年。同じ時期、エイダン・ギレンとマイケル・マケルハットンは映画「キング・アーサー」で共演している。二人はこのときに「死の宣告をする電話」について話をしたのかもしれない。

なお「キング・アーサー」に登場するエイダン・ギレンは、「弓の天才で脱獄王」というとんでもない盛り設定のキャラを演じている。とてもかっこいいので、日本で円盤が出たらぜひどうぞ。「リトルフィンガーにあの弓スキルがあったらウェスタロスは終わってた」と、世界各地で噂されている。

 

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実際に電話をもらってみて、どう感じましたか?

自分の人格や経験を少し奪われたような気持ちが残った。それで初めて、7年以上のあの経験の大きさがわかったんだ。つまりすごく大きいものだったってこと。

 

 

製作総指揮の二人は、その連絡のときジョークを言ったりしましたか? それとも率直に伝えられた?

ジョークはなかった。二人は「血の海」を約束してくれたよ。まあ実際には血の「海」というほどではなかったけど、気の毒なマイケルよりはすごいことになるという話だったね。2話の冒頭で死ぬよりは、(シーズンの)終わりにきれいな弧を描いて死ぬ方がいい。

もし自分の出番が少ないとしても――僕は今回、ほかのシーズンと比べると、出番はたぶん少なかったと思うんだけど――一度その世界の一部として登場してしまえば、みんな僕が常にそこにいるように感じるものなんだ。だから僕にとって、自分の出番がどれくらいあるかということは本当に問題じゃないんだよ。その出番がいいもので、ほかの部分と調和できていて、自分がきちんと貢献できてさえいればね。そうすればみんな、僕が常に話の中にいると思ってくれる。自分の幕を閉じるにあたって、そこにいいストーリーがあって嬉しいよ。

 

 

アリアをサンサと争わせるために仕掛けたリトルフィンガーの作戦は、最初からすごくリスキーに見えました。

慎重に立てた計画であっても、常にリスクは伴うものだよ。リトルフィンガーは、バックファイアの降りかかるかもしれない状況に自分を置き続けてきた。彼はそういうことが好きなんだと思う。(彼の計画には)失敗したときの保険なんてなかった。でも彼はそのギリギリのラインに自分を置くんだ。腕のいいギャンブラーみたいにね。

 

この部分は短いのだが、リトルフィンガーのキャラ解釈について非常に重要な示唆がある。これまでも彼はいつも薄氷を踏むようなことばかりしてきたが、そのスリルを彼が楽しんでいたのだとしたら、行為の意味の解釈をかなり広げることができる。

危機を察知していながらウィンターフェルにとどまり続けた理由も、そのあたりを含むのかもしれない。

 

 

最終回の台本はどうでしたか?

間違いなく、僕が予想していたものだったよ。

 

 

でもあなたはリトルフィンガーがどうやって死ぬか、正確には知らなかったと思うのですが。

それがね、僕はとある雑誌でインタビューを受けたことがあって(2015年のこと)、そのときに「リトルフィンガーはどうやって死ぬと思いますか」と聞かれたの。僕は「手を下すことになるのはアリアだと思う」と答えた。つまり僕が言ったとおりだったってこと。

あのシーンの中でも、リトルフィンガーがあの部屋に歩いてきてアリアがあの短剣を出してみせたとき、彼はゲームはおしまいだと悟ったんだ。

4話でブランが "Chaos is a ladder" と言ったとき、ゲームは終わりだと、彼は少なくともうっすらとは感じていた。ブランがたまたま言い当てただけなんてことはありえないからね。問題が僕の足元へと動きだしたのはあのときだ。こっそりやってきたことがこっそりではなくなったのかもしれないと、僕はあのとき悟った。

 

リトルフィンガーのことを「彼」と言ったり「僕」と言ったりするのが面白い。

また自分のやってきたことを「ゲーム」と言っているのが象徴的。自身の命をかけた「ゲーム」のことであり、自分こそが「ゲームオブスローンズ」のプレイヤーだという自負も感じられる。

 

 

私はまだあなたの最期のシーンを見ていないのですが、すばらしい演技だったと聞いています。リトルフィンガーはこれまで私たちが見たことのない感情をあらわにしたとか。

それについてはあまりたくさんは語りたくないな。自分のカードを卓上に出したくない。人の手を入れたくないというか。

サンサに対する感情は、これまで以上のものがあった。感情が表面化するんだ。心に響く別れだよ。

一方で、あそこに立つのは彼には屈辱的なことだった。彼がは以前にもそういう立場に置かれたことがあった。つまりキャトリン・スタークとの別れと、(ネッド・スタークの兄の)ブランドン・スタークから受けた辱めのことだけど――彼はへそから鎖骨までを斬りつけられて、それでも死ねなかったという経験をしてる(若い頃のキャトリンをめぐる決闘のこと)。リトルフィンガーの出発点はそこだった。彼はその立場に再び置かれることになったわけ。

 

最期の瞬間、ピーターの頭の中に過去の痛みの記憶が蘇っていたとしたら……

 

 

最後の一日はどのようなものでしたか?

僕の最後の一日はあのシーンではなかった。(あの処刑は)2番目に撮ったんだ。そういうふうに撮るのってすごく楽しいよ。(リトルフィンガーの死を)撮影して、それからその前の場面を撮るんだ。後に何が起こるのかをわかっていれば、少しリラックスして、ほかのみんなとどう影響し合っていけばいいかを考えられる。自分の演技に染み出るものはほかにもある――心の平安みたいなものかな。

でも、そうだね、(あの最期のシーンの撮影は)すごく心を動かされるものだったよ。必ずしも僕が悲しかったということではないんだ。でもリトルフィンガーにとっては涙を抑えられない瞬間だった。あのとき彼が感じていたことを僕も感じたんだ。

本当の最終日には、ダンとデイヴィッドはいなかった。でも(副製作総指揮の)ブライアン・コグマン【7-2の脚本も担当】がみんなを呼んで、一言しゃべってくれた。そのとき僕の息子も一緒にいたんだよ。すごくいい時間だった。

それで、僕はマネシツグミのピン【リトルフィンガーがいつもつけていた鳥ブローチのこと】をもらったんだ。以前からあれがほしいと公言してたからね、それがうまいこといって二つもらえたんだ。一つはリトルフィンガーのコートにつけていたもので、もう一つはチュニックにつけていたもの。大きいのと小さいの、二つもらったの。一つは自分用、もう一つは息子にあげたよ。

 

ピンをもらったエピソードがすごく好きだ。彼の手元に今もあの小鳥がいると思うと、なんだか救われた気持ちになる。

ちなみにわたしは去年の誕生日に例の友人からあのピンをもらい、大喜びして普段使いしている。ドラマを知る人に目撃されたら人格を疑われそうだが、今のところそういう事件は起きていない。

 

 

あなたの好きなシーンは、リトルフィンガーがロスを脅すところでしたっけ? 以前何度かそういうふうに話していましたよね。

そこも好きなシーンだね。あれはシーズン2を成り立たせているいい場面だ。それにあの場面から、僕らは彼のことをさらに知ることができたよね。

同じくらい楽しかったシーンはほかにもあって――アイリーの中庭でのサンサとのシーンとか。僕はサンサの母の話をしながら彼女にキスをした。あそこから、リトルフィンガーの頭の中でサンサとキャトリンが混じり合っていることがわかり始めるんだ。

リトルフィンガーは影があって悪い奴で、しかも信用できないキャラだけど、僕はそこに温かさと柔らかさを加えようと努力を続けた。みんなにリトルフィンガーを好きになってもらうのが、僕の仕事だと思っていたからね。

はい、好きです

 

 

結局、ファイナルシーズンの中の大事件の中の一つとして扱われるよりは、シーズン7のクライマックスでの死の方がいい、ということでしょうか?

そうだね、僕は結構うまくやった。リトルフィンガーも結構うまくやった。製作側は話の都合で(キャストを)おろさなくてはならない。それは問題じゃないんだ、本当に。それが起こるときが終わりということなんだよ。それ以上のことは考えてない。

 

 

という感じで、リトルフィンガーのキャラを理解するにあたっては必須ともいえるようなインタビューだった。もう一つ、ロサンゼルスタイムズさんにもインタビュー記事があがっている。こちらも一部の質問と答えは重複しているものの、とても面白いのであわせてどうぞ。

www.latimes.com

 

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