ここのところ、通勤時のゲームタイムが映画タイムになっている。
iPadに映画を一本DLしておくと、行きと帰りのバスの中でだいたい見終えることができる。ただしだいたいいいところで勤務先に着いてしまうため、一日中続きが気になるというのが問題点だ。
さてそんな感じで「裏切りのサーカス」を見た。二連続で。
こんなにも見た直後にもう一度見たくなる構造の映画も珍しい。そして二度目もきっちり楽しませてくれた。
ゲイリー・オールドマンがとにかくかっこいい。
スマイリーと、彼の対になる存在としてデザインされたカーラの関係がたまらなくわたし好みだった。
ただ今日書こうと思うのはそれとは別の件。
ビルとジムの関係について、自分の考えを整理しておきたい。すでにネット上にはたくさん感想があがっているから目新しい内容ではないと思うが、二回見た時点での考えを残しておけば、一年後くらいに自分で読み返してニヤニヤできるだろうという目論見である。
ビルとジムのおかげで二度目を見ることになったという人はおそらく多いはず。あの引きの美しさで、最初からこの二人を追いかけて見直さなきゃ、と思った。
そんなわけで以下は何もかもネタバレした感想になる。
なお原作は未読。そのうち手を出したい。
ジムはハンガリーに発つ前にどれくらいビルの裏切りに気づいていて、最後はどういうつもりでビルを撃ったのか?
この記事はここの部分をぐだぐだ考えるために書いている。
自分の中でもまだこれという結論は出ないので、思いつくままに箇条書きにしてみよう。
1. ハンガリー前:なんかあやしいことしてる?/最後:裏切りは許せない
ジムはハンガリーに行く前からビルが何かあやしいことをしているのは感じていたが、それが何なのかまでは知らなかった。あるいは追及しようとしなかった。
旅立つ前にビルのところを訪れたのは、もし何かしようとしているのなら今はやめておけという警告のつもり。
ソ連から解放された後、スマイリーの訪問によりビルの裏切りを察し、独自に調査するうちに確信に至る。
自分と祖国を裏切った彼のことが許せず、ある種の復讐としてビルを殺す説。
2. ハンガリー前:なんかあやしいことしてる?/最後:どうして自分を誘ってくれなかったの?
ハンガリー前までは1. と一緒。
ジムはビルの裏切りを確信した後、ビルが祖国を裏切ったことではなくむしろ自分に打ち明けてくれなかったことが許せず引き金を引いてしまう。
もしビルが自分にすべてを打ち明けてくれていたら、祖国を投げうって彼についていったのに。
自分はビルのためにすべてを投げ出す覚悟だったのに、ビルはその気持ちを信じてくれなかった。
そのことが何よりも許せなかった説。
ただ、あの自信たっぷりなビルがジムに自分の考えを一切匂わせずにいられたかどうかはやや疑問。たとえば芸術を語りながら、資本主義は堕落したよね的な話をしたことがあったかもしれない。
そのときの反応次第でジムに打ち明ける可能性はあったかも。
そういう会話の端々からジムはビルの内心を察し、旅立ち前の警告に至った。この場合、ビルの「誘い」(もちろんはっきりした誘いではなかったにせよ)を断ったのはジムの方。個人的にはこちらの方がありえるかなと思っている。
以下はそれが前提になる説。
3. ハンガリー前:ほぼ気づいていた/最後:せめて自分の手で
会話の端々からビルの内心を察したジムは、ビルの裏切りにほぼ気づいていた。
ジムのハンガリーでのミッションが成功すれば、ビルが「もぐら」であると告発されることになる。
今からでも手を引いてほしいと思ったのか、あるいは逃げてほしいと思ったのか、ジムはビルに警告する。
ソ連から解放された後も、ビルに生きていてほしいために「もぐら」のことは黙っている。つまり国を裏切っていたのはジムも同じ。
ビルの正体がばれた以上、ソ連に帰る前に厳しい尋問が続くのはもちろん、無事ソ連に送還されても暗殺される可能性はこの先もある。
誰かに殺されるくらいならいっそ自分の手で説。
初見ではこれだと思った。
4. ハンガリー前:何もかも気づいていた/最後:ビルをソ連には渡さない
ビルはハンガリーに行く前からビルの裏切りに気づいており、自分がハンガリーに行くことを彼に伝えれば、コントロールの作戦がソ連側に筒抜けになることを知っていてそうした。
自分の命もサーカスの命運も全部ビルに預けて。
結果、自分は撃たれたが命は助かった。それがビルの尽力によるものだとジムも気づいていた。だから帰国後も、何も告げずサーカスを去った。
ビルが生きていてくれさえすればいいと自分を納得させていたジムだったが、「もぐら」がばれたことによりビルがソ連に送られることになる。
ソ連にビルの身も心も奪われるのはジムにとって我慢ならなかった。自分の知らない土地で、自分の知らないところで彼が死ぬところなんて想像もしたくなかった。
自分と彼の生きたこの地に彼が骨を埋めてくれたなら。
ジムがビルに望むことは、もはやほかにはなかった説。
今はこれかなと思っている。
1~4の間にも無数のグラデーションカラーがあるし、ジム自身の中にも明確に言語化できる動機があるとも思っていない。
ただ「全部知った上でそれを許した」という話の方がわたしの好みだ。
そしてビルの方もジムが知っていることを知っていたらいいと思っている。
だからビルは、あんなあやしげな雑木林のある方に何度も顔を出していたのではないかと。
つまり自分がジムに撃たれるために。
発砲の後流れた一筋の涙。
目の下を撃たれて流れ落ちた血の滴。
その意味するところは同じだったはず。
ハァ……また見よ……(無限ループ)
音楽がたいへん好み
この映画、色調を抑えた画面とオーケストラを使った音楽の曲調がすごくマッチしていて、全体的にとても好みだった。
特に繰り返し現れる溜息のようなクラリネットは、スマイリーの心境とリンクしているように思う。
"La Mer" からなだれこむエンディングのピアノのフランスっぽさが、不思議と作品の余韻を感じさせてくれる。パリでイリーナを待ち続けているのであろうリッキー・ターにも思いを馳せさせてくれる。やはりこのエンディング曲がいちばん好きだ。
ついでに予告編はUS版とUK版があるらしいのだが、わたしはUK版が好きだ!
US版はあの作品からなんとかアクションっぽい場面をつぎはぎして動きのある予告編を作った感じがあるが、UK版の方が作品全体の雰囲気に近いように思う。それになんといっても文字の出し方がおしゃれ!
US版
UK版
だがなんでサムネをこれにした?