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「プロジェクトブルーブック」待機中のみなさまこんばんは。
目下最大の関心事は日本で「ブルーブック」がどの媒体で配信されるのかなのだが、先日読んだエイダン・ギレンのインタビューが写真も中身も最高だったので、また訳してみることにした。
まずはぜひ一度本家で写真の美しさを堪能してからどうぞ!(記事へのアクセスが増えればまた特集してもらえるかもしれないし!)
例によって正確さは宇宙の彼方に投げ捨ててきたざっくり訳。「ゲームオブスローンズ」S7までの重大なネタバレが含まれます。
インタビュアー:エマ・ブラウン
カメラマン:イアン・アンダーソン
2017年7月13日公開記事
「『ツインピークス』が始まりだったとは言いたくないんだ」とエイダン・ギレンは言った。私たちは近年のテレビ番組の「黄金時代」について語っていた。このアイリッシュの俳優がHBOの「ザ・ワイヤー」に出ていたのも、まさにあの時代のことだ。
「僕は今でも『ザ・ワイヤー』が最高の作品のひとつだと思ってるよ」そう言って、彼はさらに付け加える。「僕が出てたから言ってるんじゃないんだよ。僕が出演する前から最高だったもの」
ギレンは現在49歳。彼は出演作品の選び方を知っている。
ロンドンシアターで10年過ごした後、彼は「クイアアズフォルク Queer as Folk」のステュアート・ジョーンズ役でBAFTAにノミネートされた。
そこから彼はロサンゼルスで映画の世界へと移っていく。ハロルド・ピンターの「ザ・ケアテイカー The Caretaker」はブロードウェイで上演され、トニー賞にノミネートされた。そしてもちろん、「ザ・ワイヤー」ではボルティモアの野心的な政治家トミー・カルケティを演じている。
ここ6年ほど彼はHBOの「ゲームオブスローンズ」で、つかみどころのないリトルフィンガー役を演じてきた。今週末、このドラマは最後から2番目となるシーズンが放映される。
私たちが電話で会話していたとき、彼はイングランドのマンチェスターにいた。スティーブン・ナイトのスタイリッシュな時代もののクライムドラマ「ピーキーブラインダーズ」の撮影のためである。
彼は自分のキャラクターやドラマの内容について話すことはできなかったものの、作品に関われたことを喜んでいた。「ピーキーブラインダーズは大好きだよ」と彼は言っている。「ここ最近で最高のもののひとつだと思ってる。最高にクールな作品のひとつだってことは間違いないよね……脚本家のスティーブン・ナイトのやり方がいたるところで見られるんだ。彼は作家としてもクリエイターとしても、僕がずっと好きだった番組作りをするんだよ」
いつ移動するかということも、ギレンのキャリアを支えてきたもうひとつの重要な要素だ。
「『クイアアズフォルク』のあと僕がロンドンを離れた理由のひとつは、外で注意を引いたりキャラクターの名前で呼ばれたりするのが好きじゃなかったからなんだ」と彼は考えている。
「今ではすごく好きだよ。むしろ自分の名前よりもキャラクターの名前で呼ばれる方が好きなくらい――外を歩くときはそういう緩衝材があった方がいいんだ。それにみんながキャラクターの名前で僕を呼ぶってことは、みんなが僕の演技を信じてくれたってことでしょ」
視聴者の関心事のスパンが比較的短いことも、彼は好意的にとらえている。
「新しい役を見つけてそこでいい演技をすれば、みんなそっちに関心を向けるんだ。それっていいことだよね。みんなの注目は『ステュアート』から『トミー』、『リトルフィンガー』と変遷してきて、これからはほかのキャラクターになっていくんだろうね。数年もたてばみんな僕が今誰なのかなんて忘れてる。そういうのもすごく快適なんだ」
ギレンさんのこういうところが好きだ。普通、役者さんといえば自分の役を覚えていてもらいたがるものだと思っていたが、忘れられた方がやりやすいって。
リトルフィンガーと正反対のキャラだからという理由で「プロジェクトブルーブック」のハイネック博士役を引き受けたというのも、このあたりを読むとますます納得感がある。
ギレンさんは何も演じていない素の状態で人前に出るのが本当に苦手らしい。だから他人と自分の間にキャラクターという「緩衝材」を入れることで安心感があるということなのだろう。
リトルフィンガーみたいな究極のデバフキャラが、ギレンさんにとってだけはバフをかけてくれるキャラになるなんて……。
さて、ここからはインタビュアーのエマ・ブラウンさんとの一問一答形式。
「ピーキーブラインダーズ」に加わる以前から知っていたキャストはいますか?
数人いるよ。キリアン(・マーフィー)についてはすごくよく知ってるわけじゃないけど、数年前にちょっとしたことで彼を知ったんだ。
チャーリー・ストロングを演じるネッド・デネヒーや、ジョニー・ドッグズを演じるパッキー・リーのことも知ってるよ。
チャーリー・マーフィー、彼女も今年出てきた本当に素晴らしいアイルランドの女優だよ。アイルランドのドラマシリーズ「ラブ/ヘイト Love/Hate」で共演したから知ってるんだ。
たぶんそれくらいかな。
アイルランドの演劇界はかなり小規模なのでしょうか? 現在成功しているアイリッシュ俳優のほとんどを知っている感じですか?
確かに小規模かつ十分という規模だね。僕が1988年にロンドンに出てきたのは、そういう理由もあったからなんだ。ちょっと開拓してみたいと思ったんだね。
あなたのお姉さんのフィオヌアラも女優で、お兄さんのうち二人は映画関係のお仕事ですよね。みんなが芸能界に入ろうと決めたとき、ご両親は興奮していましたか? それとも兄弟のうち一人は医者になってほしいと思っていたりしましたか?
僕は六人兄弟の末っ子で、うちの兄弟の誰も医者になろうとはしてなかったと思う。そういう感じじゃなかったな。僕といちばん下の姉が最初に芸能界に入って、ほか二人が後から来たんだ。僕らは同じときにダブリンのユースシアターグループに入った。
もしきみが六人兄弟の親だとしたら、末っ子が16歳になろうという頃には、子供の進路希望をめぐって揉めた経験は散々してるわけ。実際、僕はただ励ましてもらっただけだったよ。学校を出てすぐに働き始めたから、一度も揉めたことはなかった。
このちゃっかりした末っ子らしいエピソードがすごく好き。
ロンドンでの最初のお仕事はどんな役でしたか?
「A Handful of Stars」という演劇で、ブッシュ劇場で上演された(1988年)。当時も今も、あそこは新作劇場なんだ――新作の演劇だけを上演する劇場なの。70年代初頭に作られて、今も活動してる。シェパーズブッシュにあるパブの二階にある小さな劇場なんだ。あそこは本当に、才能と発見のたまり場だったよ。
僕は88年にロンドンに来て、演劇をやって、最後には美術監督のジェニー・トッパーの家に転がり込んだ。なにしろどこかに住まないといけなかったからね。そこに三年ほど住んで、あらゆるものを見たよ。90年代までその周辺で暮らしてた。
あそこには刺激的なものがたくさんあった。トレイシー・レッツの「キラースナイパー Killer Joe」の初演とか。「トレインスポッティング」も映画化前のロンドン初演はブッシュ劇場だったんだよ。
あそこはぶらぶらすればいつだって刺激をもらえる場所だった。僕はそこでビリー・ロッチの作品に2、3回出演したんだ。
ブッシュ劇場についてちょっと調べてみたが、なかなかすごいところである。リンク先(Wikipedia)に掲載された写真がいい感じ。シェパーズブッシュはかつてBBC関連施設がたくさんあったところらしく、芸能界関係者も集まっていたと思われる。
「キラースナイパー」は2011年にマシュー・マコノヒー主演で映画化されている。
「ザ・ワイヤー」出演前はブロードウェイにいましたよね。最初の渡米はいつでしたか?
アメリカで最初に仕事をしたのは1998年か99年だったと思う。ちょうどここマンチェスターで「クイアアズフォルク」のシリーズを終えて、さっきも言ったようにそこから離れたいと思ったんだ――僕はそうするのが好きなの。シリーズが終わって、どうやら成功したらしいということがわかってから、出ていくときがきたって決めたんだ。
僕はロサンゼルスで「ペイン Buddy Boy」というインディ映画に出て、しばらくそこにいた。それ以来そこでときどき仕事をしてるよ。あのハロルド・ピンターの「ザ・ケアテイカー」をやっていたときがいちばん長い仕事だったね。それから「ザ・ワイヤー」にキャストされた。
「ペイン」については感想を書いたことがあるのですでにご覧になった方はぜひどうぞ(ネタバレあり)。
「ザ・ケアテイカー」ではギレンさんはトニー賞にノミネートされているくらいなので一度見てみたいのだが、過去の舞台作品となるとやはり難しく残念でならない。ちなみに63回も上演されたらしい。
「クイアアズフォルク」と「キングアーサー」の間にチャーリー・ハナムとは連絡を取り合っていたんですか?
連絡を取り合っていたとまでは言わないけど、取らないようにしていたわけでもないんだ。ここ18年間、彼のことをたくさん見てきたわけじゃない。彼が何をしているのか、関心は持っていたけどね。
たぶん「クイアアズフォルク」が彼にとって最初の主役級の仕事だったんだけど、そのことは面白いと思ってた。それ以前に彼がどんな仕事をしてきたかについては、ほとんど知らないんだ――ニューキャッスルで作られていた「Byker Brove」での役じゃないかと思う。
ドラマの後、僕は何度か彼と会った。彼がうちに来たこともあったし――僕らがサンタモニカに泊まったこともあったよ。たしか数年後にエディンバラでも彼に会った。それから2001年には僕はテレビシリーズの撮影でモントリオールにいて、彼は「ケイティ Abandoned」の撮影でそこにいた。彼にとって最初の、映画での主役級の仕事のひとつだね。僕らは同じ町にいたら会うようにしてたよ。でもそんなにたくさん起こることじゃない。
サンタモニカでハナムさんと再会するギレンさんの図が見たい人生だった。
いや、そんなことが実際に起こったというだけでこの世界は素晴らしい。
「キングアーサー」のエイダン・ギレン、アクションも弓もこなすしかっこいいよ!
「クイアアズフォルク」と出会ったとき、この先ずっとステュアートが自分から離れないような気がしましたか? そういう経験は初めてでしたか?
10話以上の契約をしなかった理由のひとつがそれだったんだ。成功したとわかった途端、ものすごくたくさん続きをやれるんじゃないかって話になった。で、僕はそのとき「ひとつのキャラクターとして認識されるようになりたくない」って思ってたな。
その後オーディションは受けましたか? あなたが演じた作品を見た人が、新しいオファーについて連絡してくるのが普通ですか?
オーディションでうまくいったためしがないんだ。オーディションで仕事をもらった経験はほとんどないんだよ。たくさんオーディションを受けたよ、ほかの役者もみんなやってることだ。でもうまくやれる人もいれば、うまくいかない人もいる。僕は全然だめだった。
最近のどの仕事からでも、きっかけになった最初の仕事のところまでたどれるよ。オーディションでもらった仕事というのは片手で数えるほどなんだ。
ギレンさんの仕事はほとんどオファーばかりという話は聞いたことがあったけど、ご本人がこんなにオーディションに苦手意識があるとは知らなかった。
一方で、ひとつの仕事が次の仕事を生みながら築かれてきた経歴をこんなふうに振り返れるのは素敵だと思う。どのキャラがどのキャラを連れてきてくれたのか、家系図みたいなのがほしい。
ではあなたのキャリアはすごく直線的に続いてきたという感じですか?
直線っていう感じじゃないな――ピンボールみたいな? ともかく僕にとっては、それはいいことなんだ。
ピンボール発言が本当に好きだ。
ここまでまっすぐ来たわけではなくて、いろいろ振り回されたり衝突したりもきっとあったのだと思う。でもそういうのをひっくるめてこんなふうに楽しそうに振り返ることのできる人でよかった。
ご自分のキャリアを考えた場合、どうやって演じる役を選んでいるんですか?
昔から、僕は明らかなタイプキャストは避けようとしてきた。昔からそういうことはあったんだ。あるタイプのキャラクターを演じて成功すると、同じタイプの仕事がやってくる。そうするとその役をやるかやらないかを選ぶことができるよね。僕はそういうのを避ける傾向がある。
確かに同じようなキャラクターをたくさん演じてるってわかってるよ。自分で思ってるほど避けられてないのかも。
まあ確かにヴィランは多い。だがギレンさんのキャリアの中心として上でもご本人が名前をあげていた「ステュアート」「トミー」「リトルフィンガー」の中で、ヴィランと呼べるのはリトルフィンガーだけ。それもややクエスチョンマークがつく形のヴィランだ。意外とタイプキャストを避けられている……?
キャラクターや作品が好きになれない仕事を引き受けたら、やっぱり思ったとおりだったという経験はありますか?
何度かあるよ。みんなにはわかるだろうからそういう仕事は受けたことがないけど、そういうことは何度かあった。いつも正しい選択ができるとは限らないよね。僕は仕事の選択について自覚的だし、慎重なんだ。僕はその役をやるべきでない人でありたくはない。でも何度かそういうことはあったね。とはいえ、10回か15回に1回程度のことなら、たぶん平均的にはいい方なんじゃないかな。
これまで演じる機会はなかったけどやってみたいと思っている具体的な役、または役のタイプがありますか?
ここのところ、温かみのある人物を演じてみたいと思ってるんだ。そういう役もやってきたけど、ドラマとしての知名度はそれほど高くない。「Treacle Jr.」という映画を数年前に撮ったんだけど、これはジェイミー・スレイヴス監督との二度目の仕事なんだ。僕らはさらに別の作品を一緒にやったよ。
彼は僕がヴィランや冷たいキャラクターをたくさん演じてきたことをわかってる。でも彼は僕がブッシュ劇場でコメディを演じるのを初めて見て、それを追求すべきだと思ったのかもしれない。僕らの新しい作品は「Pickups」というタイトルだ。笑えて、でもすごくダークな作品でもあるんだよ。
「ブルーブック」のハイネック博士についてのインタビューで、彼のことを「あたたかくて誠実なキャラ」と評していたのを思い出す。この頃にはもう博士のオファーも来ていたんだろうなあ。
あなたはリトルフィンガーをヴィランだと考えていますか?
考えてないよ。でもそう見えるということはわかってる(笑)。
彼に対する見方は、シリーズを通して変化しましたか?
そうでもないね。僕は最初から、彼のことを信用できるキャラにしよう、好かれるキャラにしよう、彼の味方になりたいと思わせるキャラにしようと思ってた。原作でもそうなってるよね。ああいうキャラは、みんなに信用されるように魅力的で怖がらせない人でいないと、自分がいる場所、したいことはできないものだからね。
私にとっては、サンサとの関係で彼の性格が――つまり彼がある種の恐ろしい人間だということを確認できた感がありました。
そのとき初めて彼を恐ろしいと思ったの?
そうです。
僕としては、だんだん同情されるキャラになっていったと思ってたけどな(笑)。
別のインタビューでも語っていたが、ギレンさんの中ではリトルフィンガーはラムジーの評判を知らずにサンサと結婚させていたようだ。わたしは彼がラムジーの評判を知らないはずがないと思っていたのだが、どうやらボルトン家の私生児は相当厳重に世間から隠されていたらしい。
誰が鉄の玉座を獲るか賭けていますか?
僕はそういうの気にしてないな(笑)。
わかりました。それがリトルフィンガーだったら面白いですよね。
まあね、でもその点についてはある意味でもう明白なんじゃないかな。
「ゲームオブスローンズ」は2017年7月16日、HBOに帰ってきます!
……と、最後はリトルフィンガーの最期について示唆して終わった。
過去のいろいろなお仕事についても幅広く質問してくれたインタビューで、これひとつでギレンさんの略歴を掴むことができた。
読んでいて改めて、考え方も言い回しも面白いし、今後の彼のキャリアがどうなっていくのか楽しみだと思った。過去に出演した舞台作品も見てみたいよ~! ケアテイカーとかテンペストとか!