「ピーキーブラインダーズ」でエイダン・ギレンを堪能したわたし、今度は「ベターコールソウル」を見始めた。これも前から見たかったやつ! というか「ブレイキングバッド」を見終えたときからずっと見たかったのだが、当時はhuluに入っておりそこで「ゲームオブスローンズ」と出会ってしまい、かなりの回り道をしてしまった。
「ブレイキングバッド」を見たのはもう2年半前なので細部を忘れてしまっており、ちょっとずつ復習しながらの視聴である。なにしろわたし、マイクさんの顔をころっと忘れており、「あのステッカーおじさんの顔、どこかで見たことあるんだけど誰だっけな……」と思いながら6話まで見ていたのだ。わたしの目が節穴すぎる。
そんなわけで我ながらダメなファンっぷりを露呈しつつの視聴記録。今回はシーズンごとに記録を残しておこうと思う。ネタバレ全開につき注意。
「ブレイキングバッド」の感想はこちらから。
わたしの好きなキャラの傾向
思い出してみると、ソウル・グッドマンも初登場時からわたしの心をがっつり掴んだキャラだった。
わたしは口と頭はよく回るがHPは常に1というキャラに大変弱い。「ゲームオブスローンズ」ではリトルフィンガーが出てきた瞬間に転がり落ちたタイプだ。
ソウル・グッドマンはリトルフィンガーほどの命をかけたギャンブラーではないし、彼のように世界すべてを敵に回して一人で戦うような気概もない、「小悪党」。でもやっぱり彼のようなキャラはすぐに応援したくなってしまう。そういう人の書いた感想ということでお読みください。
自己否定/自己肯定
わたしは「ブレイキングバッド」のウォルター/ハイゼンベルクを、死を意識することでそれまで抑圧してきた本当の欲求を認めることができたがゆえに生まれた、自己肯定の極致としてのキャラクターだと思っている。その結果、善/悪があんなふうに奇跡の融合を見たのだ。
一方「ベターコールソウル」は、ソウル・グッドマンの織り成すちょっと危険でコミカルな弁護士の日常ドラマ☆……なわけがなくて(最初にスピンオフ情報を目にしたときはそんなのを想像したのだが)、「ブレイキングバッド」の持つこの構造をきれいに裏返した物語のように思える。
わたしはソウルのスピンオフと聞いた当初、確かに彼は人気キャラだろうが、なぜスピンオフの主役に抜擢されたのだろうか? とやや疑問だった。しかし見てみると確かに「ブレイキングバッド」のスピンオフとして、これ以上ない主人公だ。
ウォルター/ハイゼンベルクと同様に、ジミー・マクギルにもジミー/ソウルという善/悪の二面性がある(「ソウル」の名前はまだ一度しか出てきていないが)。それはウォルター/ハイゼンベルクのような融合の仕方とはまったく異なる。しかし紛れもなく「ブレイキングバッド」の裏返しのストーリーを予感させてくれる。
S1を見た誰もが感じることだと思うが、ジミー・マクギルは予想の5倍くらい「いい人」だった。悪徳弁護士というほどの悪さではないし(いや当たり屋行為をそそのかしたり、あのいかれた夫婦から「報酬」を受け取ったりはしていたが)、なんだかんだで「正しいことをする」「弁護士として真っ当に生きていく」という決意を持っていた。なんかお前、BrBaのときとキャラ違うな!? と思ったのはわたしだけではないはずだ。
彼の善性の源がどこだったのかがはっきりするのは、その源が失われたときである。
ジミーはチャックに認めてもらいたがっていた。兄に自分を誇ってもらいたがっていた。自分に「チャンスをくれた」兄と並んで対等に働きたいと思っていた。それが彼の動機のすべてだった。
働きながら通信教育で学位をとるのは本当に難しく大変なことだと思う。さらに司法試験だって簡単に通るものではない。ジミーの地頭がいいのは間違いないが、さらに人知れずこつこつ努力することもできるキャラだった。このあたりを知った時点で、わたしの中のジミーの好感度はマックスである(BrBa時点でもかなり好きなキャラだったが)。
ジミーは「正しいこと」をしようとしていた。病気の兄を支え、かけだしの弁護士として安い仕事を請け負い、いろいろあったが結局横領された金も全額返還した。全部、チャックに認めてもらいたいからだった。そしてきっと、いつかチャックの隣で胸を張って働きたいと思っていたのだろう。
ジミーの本来の性質はどちらなのか、わたしにはまだわからない。S1での描かれ方を見ている限り、まだどちらとも言えない。小狡く立ち回って人を騙すのに快感を覚えるような「小悪党」がジミー本来の姿なのだろうと思わせる一方で、広告撤去作業員が落ちそうになったときは体を張って助けにいった。誰にでもできることではない。あれは彼の中に備わった善性の発露としてのエピソードだ。チャックに対する献身だって、並大抵のことではない。ジミーが本当にただの「小悪党」であれば、あんな面倒な兄はとっくに見捨てているはずだ。
ウォルターは挫折+家族のために「大悪党」としての本質を抑圧し、善性の皮をかぶっていた。ジミーも挫折(あの逮捕である)+家族(チャック)のために「小悪党」としての自身を抑圧し、ときどき取り落としそうになりながらも善性の核を必死に抱えて生きようとしていた。それはある部分では「自己否定」である。それでも彼は、自己否定してでも真っ当に生きようとしていたのだ。それが「正しいこと」だと信じて。
そんなジミーの努力と献身の何もかもを、ほかでもないチャックが台無しにした。てめえ! マジで! 表出ろ!!(文字通りの意味で) そして電磁波にやられてくれ!!!
ウォルターが自己肯定からの自己実現に邁進したのに対して、ジミーは自己否定を否定されたことによって本来性を取り戻すことになる。あるいはジミーの本質を善性と見るならば、チャックの裏切りこそがジミーにとって初めての完全な自己否定にあたるのかもしれない。わたしにはまだどちらとも結論づけられない。
ただウォルター/ハイゼンベルクの裏としてジミー/ソウルという主人公が設定されたのであれば、本来善であったジミーが自己否定によって堕ちていくと理解した方がきれいな裏返しではある。今後の展開次第かな!
マイク・エルマントラウトという男
6話でようやく記憶を取り戻したわたしがジャンピング土下座することになった、ステッカーおじさんことマイクさんだが、彼もまた善/悪が独特の融合を果たしたキャラクターだ。しかし彼については、ウォルター/ハイゼンベルクやジミー/ソウルに比べるとまだわかりやすい。
本来の彼は賄賂を受け取りつつも家族を大事にする、どこにでもいる「普通のおまわりさん」。積極的に悪事を働くわけではないけれど、現実にある矛盾を当たり前に受け入れている「グレー」なキャラ。
そんな彼を「黒」に振り切れさせたのは、「白」だった息子の死だった。
以降彼は、そこまでぶれることなく「黒」であり続ける。彼は自身も言うような「善人だが犯罪者」の典型だ。そしてそれを強く自覚している(自分を「善人」だとは思っていないだろうが)。
マイクさんは本当に一挙手一投足がかっこよく、重く、ずっと見ていたいキャラクターだ。視聴者はすでに彼の最期のことを知っているわけで、あの最期に向けて一歩ずつ進んでいく彼をただ見ていることしかできないのはつらい限りだ。
ステッカーおじさんがどんなふうにガスと出会い雇われることになるのか、楽しみにしておこう。
各話感想
さてピーキー以降、ドラマを見るときは毎話メモをとるようにしている。あとで見返すのが楽しいからだ。せっかくなのでここにも簡単にまとめておこう。
1話
さえない弁護士が一発逆転を狙って一念発起、でもこれはBrBaと同軸アース、上手くいくはずがないよね知ってた!! 視聴者はソウル(というかジミーと呼ぶべきなのか)のキャラを十分知った状態でのスタートだから、1話目からクズオブクズを全開にしてきてすがすがしい! さてここからどこまで事態が悪化するのか楽しみ。
ジミーも大概アレだったけど、ほんと出るキャラ全部ろくでもないなあの世界。1話目から生首ファックとかパンチきかせすぎだろ。
(これを読むと、この時点ではBrBaのソウル・グッドマンの印象が継続していることがわかる)
2話
ジミーーーー!!! お前やっぱり最高の弁護士だよ!! ううー口の回る小悪党ほんと好き…。あとミホくんほんといいキャラやな。心を入れ替えてせっせとつまらない仕事に精を出すジミーかわいい。弁護士のお仕事、大半はあんな感じなんだろうな。展開は割とゆっくりだからもうジミーのキャラで引っ張ってる感じ。スピンオフだからできるやり方なのかも。
(そのミホくんはBrBaのトゥコですぞ……。こっちは顔は覚えていたものの名前は忘れていた模様)
3話
ジミーのことどんどん好きになるな……。いやBrBaの時点で好感度めちゃくちゃ高かったけどね! 愛すべき小悪党……悪人になりきれないところがかわいくてたまらない!
あとあのステッカーおじさんの首から下が初めて映ったときの「あっ(察し)」感好き。ベタなんだけどおいしい。
(まだステッカーおじさん呼ばわり。首から下が映っても思い出さないんだから相当である)
4話
あれ、大事な回なのにメモがないぞ……。
「ソウル・グッドマン」の名前が初めて登場し、看板屋さんを助ける話。このときの描写から、ジミーの本質についてわたしは誤解していたのかも? と思い始めたはず。
5話
いろいろ判明した回だった。お兄ちゃんのことと、あとステッカーおじさん……。おじさん何者なんだ(判明してない)!ジミーを見てると、弁護士の仕事ってつくづく大変だなと…。性的なトイレは笑わせてもらったけど。事態はあまり動いてないんだけど見入っちゃうな。
(おじさんはマイクさんだよ!!! お兄ちゃんの病状についてはよくわからないまま進行して、ここでようやく詳細が判明した模様)
6話
ステッカーおじさんの顔、絶対見たことあるんだよなーと思ってたんだけど、マイクじゃん!!!??? わたしの目が節穴すぎる。マイクさんの回でしたね……。うう……マイクさんごめん……わたし何もかも思い出したよ……マイクさん好きだったのに……思い出せなくてほんとごめん……。と思いながら半泣きで見てました。これはつらい。それであのお孫さんのシーンにつながるの……。
(ようやく気付いたらしい)
7話
ジミーーーー!!!(毎回こうなってる)ああーよくやったえらいよ……。マイクさんと初めての共同作業だね!いや初めては前回か。横領夫婦がもはやギャグで面白い。彼らはBrBa時点でまだ生きてるんだろうか?
8話
あああああお兄ちゃん!!!! なんだろうジミーの、この応援したくなる系弁護士!! S1前半とキャラかわってきてない!?
(そう、このときは確かにチャックの回復をジミーと一緒に喜んでいたのだ。そしてジミーの「善性」もこのときがピークだったように思う)
9話
あああああああああジミーの素足(即死)
でもお兄ちゃん、BrBa前のどこかで死んでしまうのかなって……。
(素足フェチのわたし、素足で芝生を踏むマクギル兄弟に無事死亡。そしてBrBaにはチャックが登場しないことを心配している)
↓↓(視聴後)↓↓
・Howard sucks
・Chuck sucks
・WTF GO TO HELL
つらい……なんで……働きながら通信教育で学位とるのって本当に大変だしその上で司法試験に通るって並外れた努力をしてきたんだと思うのに……OTL
マイクさんのクールな仕事ぶりには痺れました。彼も一発で恋に落ちてしまうはずだ(?)。
あーそっか、キムもそのことをハワードから告げられたんだ……。それでジミーのところに……。
(荒れている)
10話
あああ……つらい……そうか……ジミーの良心をつなぎとめていたものが「もう自分を止められない」になっちゃうんだな……。「ソウル・グッドマン」の誕生がいよいよ楽しみになってきた。
こうして見直してみると、なかなかわかりやすく感情を揺さぶられていることがうかがえる。3話でもう完全にジミー応援モードになり、心を掴まれているようだ。「3話で視聴者の心を掴め」はテレビ業界の常識なのか。
さて思いのほか長文になってしまったが、わたしはこんなものを書いている時間があったら続きが見たいのだ。あとで読みなおすのが楽しいとわかっているから書き残してるんだけどね!
というわけで、しばらくは続きを見ていく予定。