レクター博士の料理本が出るんですってよ奥さん!!
作中の画像を使いつつ、ドラマに協力していた料理人さんのデザイン画を紹介しつつのレシピ本のようなので、パラパラ見るだけでも楽しそう。
しかし肝心のレシピの方がどうなっているのか心配でならない。やはり「死体はご自宅でご用意ください」なのだろうか。それとも「材料は無礼な豚でなくても構いません」なのだろうか。
最近、人気ドラマ関連の妙なレシピ本(↓こんなやつ)が続々出ているが、この本はかなり正統派なファンブックとしてのレシピ本だと思われる。
Baking Bad...タイトルで笑わせにくるのは卑怯……
この公式本はほしい!
さてドラマ版の「ハンニバル」S3がhuluでようやく配信され、もう一気見してしまった。S1、2を見たのがかなり前だったので、二周目に突入。結末を知ってから見ると序盤の博士とウィルの関係はとても新鮮で、あの頃は平和だった……と殺人シーンを見ながら懐かしむのであった。
以下、S3のネタバレ感想。
心中エンドか!
S3で打ち切りになったとは聞いていたが、まさかの心中エンドとは。いや生きてるかもしれないけど。ウィルは平和な3年間を過ごして、自分は博士がいないと生きていけないとやっと理解したようだ。
レクター博士は数年ごしの思いを成就させて、さぞ満足だろう。
あの博士が逮捕されるところは想像できないと思っていたのに、ウィルに自分を追わせるために自ら投降するなんて。S1の博士は押せ押せなように思えたが、だんだんやり方を「追わせる」方向へシフトしていくあたり、人を操ることに関してはさすがの腕前。でも思い人以外から追われたらさくっと料理。
この物語は博士視点から見ると、この世界で初めて出会った「人間になれる可能性を持った人」(少なくとも豚ではない人)に恋をして、でもその人はまだ「人間」になりきっていなくて、自分のこともただの同業者としか見てくれなかったから、とにかく彼を素敵な「人間」にするべく尽くし続けて、自分のことだけを見て考えてくれるように努力して、自分が追うのではなく彼に自分を追わせることで彼を「人間」として完成させた、そんなあまりにも献身的なラブストーリー。同時にクリエイティブな料理番組。
ウィル視点から見ると、頼れる同業者にだんだん惹かれていくが、同時にその人に惹かれてはいけないとも考えていて、しかし「惹かれてはいけない」と考えている時点で強く惹かれていることも理解しており、さまざまな意味で板挟み状態であったが、最終的に彼に好意を抱く自分を認め、許すことにより苦しみから解放されるラブストーリー。
あまりにも二人のためのハッピーエンドすぎて胸がいっぱいになった。二周目で見直すとまた解釈が変わるかもしれないが。
レッドドラゴンさんがんばって
S3半ばでレクター博士が逮捕された後、後半はS2の逆のような形でまた事件が次々起こるのかと思いきや、後半全部を使って「レッドドラゴン」だった(情報を仕入れずに見た)。
この偉大な赤き竜さん、それなりにインパクトはあったのだが、シーズン後半を引っ張っていくには(あとウィルへの「当て馬」としては)やや弱かったような気がする。わたしとしてはむしろトバイアスやメイスンの方が印象に残っている(トバイアス絡みの話はもう少しじっくり見たかった)。
メイスンはかなり頑張ってくれた。博士とウィルの絆を深める意味で。マーゴとアラーナがハッピーエンドに至ったのは驚いた。
あとS3で残念だったのは、博士の料理シーンが少なめだったこと。イタリアでの料理はおいしそうだったし、投獄後に料理できないのは仕方ないのだが。やはり料理と食事は「ハンニバル」には欠かせない盛り上がるシーンだったのだと改めて感じた。
それから、これは単にわたしがまだ理解できていないだけの可能性もあるが、なぜ最後の最後だけ歌詞のある曲(=言語によって意味を固定しやすい)を使ったのだろうか。あれだけ丁寧に「調性音楽と非調性音楽を組み合わせながら45分間で一曲として完成する音楽」を作っていた音楽スタッフが、最後だけどうしてあんな「わかりやすい」曲を??? これは周回して見直したときにまた考えてみたいところだ。
若干の不満はあるとはいえ、二人のハッピーエンドで何もかも帳消しにできるレベルの作品ではあった。特にS3は液体表現への執拗さがさらに増して、一瞬一瞬が本当に美しかった。幸せな気持ちで一話から見直している。続編が見たくもあるが、ここで終わっても二人の関係はこれで完成したのだと思えるエンディングだった。
もし二人があの後生きていたら、博士は時間や社会にとらわれず、しかしウィルにだけはとらわれて、幸福に空腹を満たし続けるのだろう。