「ハウスオブザドラゴン」3話も見た!
3話の前半は「王の森」が舞台となったが、あの森はゲースロ時代にも何度もロケに使ったトリーモア森林公園ではないだろうか。木々やシダ植物がそれっぽい気がした。
2018年の夏にウィンターフェルツアーに参加したときのレポがある。
こちらに写真がたくさんあるので、今回の森のシーンと見比べてみてほしい。
しかしあの旅ももう4年前か。振り返ってみると、あのとき行っておいてよかったとつくづく思う。また気楽にヨーロッパ旅行に行ける世の中になってほしい。
では以下、3話のネタバレ感想。
イノシシ
王が狩りに行くと言い出した瞬間から王が死ぬのでは? と思った視聴者は多いはず。
いやそこまでゲースロをなぞってはこなかった。
しかしイノシシは出た。わたしはあのタイミングで白いシカが出るのかと思ったが、ワンクッションおいたわけだ。
イノシシといえばバラシオン。正確にはバラシオン朝を終わらせるきっかけになったもの。
そんなイノシシがレイニラを襲い、しかしレイニラはイノシシを返り討ちにする(正確にはひとりで返り討ちにしたわけではないが)。
白い肌と髪が血に濡れるあのカットは実に印象深い。あれは何を暗示しているのだろうか。彼女のこれからの血塗られた道?
少なくとも1話における「血まみれの女性」=「お産シーン」というイメージ(=既存のウェスタロスの価値観)を塗り替えることの暗示にはなっているはず。
人類が文明を獲得したその最初期、つまり「分業」が始まった時代から、狩りをして食糧を獲ってくるのは男性の仕事だった。女性は産み育てる役割だった。乳児死亡率が現代とは比較にならないほど高い以上、それが必然であったことは議論するまでもない。
そして原始時代ほどではないにせよ乳児死亡率が現代よりもはるかに高いことが1話においてすでに示されているこの作品世界においても、狩りをするのは男性の仕事のはず。レイニラのしたことは単なる「行動力のあるプリンセスのちょっとした家出」ではなく、この世界の人類史、文明のあり方をひっくり返すくらいの意味があるかもしれない。
「イノシシが死ぬとき子供のように叫ぶのが耐えられない」と言っていたレイニラ。視線の先には幼いエイゴンが。つまり今回のシーンにおけるイノシシは、バラシオンの暗示であると同時に、むしろエイゴンの暗示でもあるのかもしれない。
レイニラがイノシシを刺すシーンを見返すと、たしかにイノシシが高い悲鳴をあげている。「子供(=エイゴン)のように叫ぶ」イノシシに対して繰り返しナイフを振り下ろすレイニラ。
相手が明確に危害を加えようとしてくるとき、レイニラは「耐えられない」ほど不快な叫び声にも構わず躊躇なくナイフを振り下ろせる。そういう意味だったのかな。
レイニラとクリストンが小さな焚火を前にして、アリセントとヴィセーリスは大きな焚火を前にしていた。炎はターガリエンの象徴であり味方。今はアリセントとヴィセーリスの方が圧倒的に大きな炎のそばにいる。そして、このふたつの場面が対比的に作ってあるということは、レイニラとクリストンの関係も何か示唆されていると見るべきか。
(220906追記)
もっと単純に処女喪失の暗示だったりするのかもしれない。
いや実際にはあの場では何もなかっただろうけども、男性と二人きりで一夜を過ごして血に濡れるというのは、ストレートに捉えればそういうことなのかも。
それが意味するところは、これから先のふたりの関係だろうか?
あるいは初めての殺害♡ということかもしれない。少なくともここまでの描写では、彼女は生きたものを焼いたことはなかったので。
(追記ここまで)
白い牡鹿
はい、シカといえばバラシオン。そういえば「バラシオンを食べる会」とかいってゲースロファンのみなさんと鹿料理専門店に行ったなあ。懐かしい。おいしかった。
ゲースロ8-5のタイトル "Bell" にも「発情期の雄ジカの鳴き声」という意味があった。
ちょいちょいバラシオンを匂わせてくるのだが、しかしドラマ本編にはまだバラシオンのご先祖は登場していない? この時代はどこで何をしていたんだろ。
さてバラシオンが王になるのはだいぶ先のことだが、「王の森の王」と呼ばれる(=王権の象徴)白い牡鹿が今回の目玉。
ヴィセーリスの前には現れなかった。もちろんエイゴンの前にも。
白い牡鹿はレイニラの前に現れる。しかし彼女はその鹿が「王の森の王」だとは知らない。
この一連のシーンは何を意味するか。というか、制作側は何を意図して結構長い尺を使ってこのくだりを採用したのか。
まず単純に、王の器を持つのはヴィセーリスやエイゴンではなくレイニラであるということの示唆。しかしこれは鹿なんか使わなくても、2話までの描写で十分見せることができているし、そのことは視聴者も了解済みのはず。
このシーンにはそれ以上の意味がある。
ヴィセーリスの前に白い牡鹿は現れなかったため、代替となる別の牡鹿を殺した。
(槍を持ったヴィセーリスが逆に牡鹿に突き殺されるのではと心配だった)(どうしてもロバートが頭の中でチラチラする)
一方のレイニラは白い牡鹿と出会うが、それを殺すことはなかった。
彼女は自分に明確に害なすもの(=イノシシ)を殺すことに躊躇はないが、自分に危害を与えないもの(=牡鹿)を無闇に殺すことはない。今回のエピソードはこのことを示したかったのではないだろうか。
ヴィセーリスたちが行ったのは食糧調達の差し迫った必要性からの狩りではなく、貴族の遊興としての狩りである。彼らは食糧を獲る必要があって鹿を殺したのでもなく、自分たちが襲われる危険性があって殺したわけでもない。
つまり無闇に殺す者たちと、殺さない者との対比である。
つまり?
これはレイニラとデナーリスの描き分けが始まっていると理解するべきなのかもしれない。
初手でミリ・マズ・ドゥール(=無抵抗な性被害者女性)を焼いたデナーリスとの比較として「無闇に殺さないプリンセス」を描いているのなら、わたしはこの先の物語にも期待できる。
デイモン・ターガリエン
ドラゴンというチート兵器がありながら二年も戦争に勝てないどころか劣勢って無能すぎでは??? と思ったのだが、地の利が相手にある上に洞窟引きこもり作戦をやっているとなると難しいのかな。
ドラゴンが空を飛び回っている間は洞窟に引きこもって出てこない
→「蟹の餌」を与えて誘い出すしかない
→そんな危険すぎる役、誰がやるんだ?
→兄の援軍に助けられるくらいなら俺が「蟹の餌」になったろうやんけ!!!
という流れで突然始まったデイモン無双。いや最初はデイモンの意図がわからなくてびっくりしたわ! やっぱりターガリエン仕草を最も色濃く出しているのはこの人だな。
3話にしてもうかなりの予算をつぎこんだ戦争シーンがある、ということはこの先にもっと予算をつぎこんだ迫力のシーンがあると見ていいか。
で、デイモンの行動が何を意味するかというと、王のメンツ丸つぶれである。
ヴィセーリス的には、苦戦しているところに王の援軍を送って、弟が勝手に始めた戦争の面倒を見てやることで、恩を売りつつ王の権威を見せつけてやんよ、というつもりだったのに。
「戦争を誰が終わらせたか」は、権力の維持にとって非常に重要な意味を持つ。
王は、自分の方が立場が上であることを示すためにも、功労者には功労に見合うだけの褒賞を与えなくてはならない。しかし予定では自分が最功労者になるはずだったのだ。
「ターガリエン」の権威は上がったかもしれないが、「ヴィセーリス」の権威が下がるのは否めない。
さてデイモンくんはこの状況をどう利用するだろうか。またいきなり2年後になっていたりするんだろうか。
王の小指
小指どころか薬指までなくなっとるやないか!!!!!
普通の会話シーンにさりげないグロを混入させるのやめろ!!!!!!!
2年の間に腐ってしまったから切断したということかな。しかも残った部分もかなり黒ずんでいたし、あと2年もたてばジェイミーになってしまうのではないかとわたしは心配だ。そういえばラニスターの双子って今作でもやっぱりそういう関係なんですかね。
しかし2年もたったのにまだ死んでないということは、もしかして本当に毒ではなく事故だったのか??? そんなことってある??? ここウェスタロスだよ??? ただの事故とか存在しうる世界だったっけ???
さて前回の記事で、約束の象徴である小指が死にかけているということは、王が何かの約束を違える前兆かもしれないと書いた。
その「約束」とはもしかして、レイニラを王にするという宣言だろうか。「結婚相手は自分で選んでいい」という言葉だろうか。いずれにしてもおそらくレイニラへの「約束」が裏切られることになるのだろうなと思って見ている。
ただ現時点ですでにヴィセーリスは、散々レイニラの信頼を失う言動を繰り返している。現時点でもう「小指を失う」描写に十分足りるくらいだ。王のくせにほうれんそう不足が過ぎる。2年の間にもっと親子の対話を重ねていればこんなにギスギスしてなかったはずだぞ。
一方のアリセントの指がどうなっているのかは、今回はうまく確認できなかった。しかしクイーンになってもストレスがない環境とはとても言えない感じだし、治ってないかもしれない。
またアリセントはターガリエン家に嫁入りしても髪型をターガリエン風にしていない。
なにしろゲースロでは散々女性陣の髪型にさまざまな意味を盛り込んできた(レッドキープにいた頃のサンサがラニスター風の髪型にしていたり、北部に戻ってようやくスターク風の髪型にしていたり)。女性の髪型には常に注意を払うべきだ。
アリセントの髪型は、まだ「ハイタワー家」側の利益を優先しようとしていることを意味するのだろうか。
またレイニラの3話の髪型も2話までのいかにもターガリエン風な編み方ではなく、シンプルなまとめ方になっていた。2年の間の心境の変化を表しているのだろうか。となると4話以降の髪型にも注目したいところ。
そんな感じで、今回もあれこれ想像の捗る1時間だった。
ただ、ひたすらに小指成分だけが足りない。