なぜ面白いのか

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母の思い出に誓って「ハウスオブザドラゴン」2-3感想

https://twitter.com/HouseofDragon/status/1805289030642192567

「ハウスオブザドラゴン」2-3を見て最初に出た言葉は「もうおしめえだあ」である。

いやもうだいぶ前からおしまいだったけど、改めておしめえだあ。

何もかも手遅れなんだ……。

今回もいい感じに不吉なタイトル(「燃える水車小屋」)がついてんなと思ってたら、開始後3分で回収されてンフフってなっちゃった。U-NEXTのあらすじ欄が結構つっこんだネタバレなのでは? と思ったけど、大したネタバレではなかったな!

ていうか「戦争となり、多くの犠牲者が出てしまう」とかいうあらすじ、誰がどう見てもこの先の全話にあてはまりそうなのでネタバレでも何でもないよな! つよい。

そういうわけで、戦争となり、多くの犠牲者が出てしまった後の、もう何回目かになる「もうおしめえだあ」をネタバレこみでお送りする。

 

 

 

 

 

 

アルフくんがものすごい主人公顔

今回フォーカスされた(実は前回、絞首刑になった人たちを見上げる群衆のひとりにいたね?)ドラゴンシードのアルフくん!! きみ!!! 顔がいいな!!!!!(身も蓋もない感想)

メイクとライティングの影響も大いにあるとしても、ものすごい主人公顔なキャラがここに来て出てきたなと思ったものである。すっごいターガリエン顔だよね? 作中では「似てない」と言われていたけど、ヴィセーリスにかなり似ている。演者はトム・ベネットさんっていうのね。

先日ようやく原作「炎と血」をざっくり読了したので、彼がこの後どうなるのかは大体知っている。すごく期待したいところ。彼の出番中ずっと「顔がいい……」ということしか考えられなかったのでほかの感想はないんだけど、今後の出番が楽しみである。

顔が好みの人が出てくるとドラマ視聴のテンションが格段に上がるよね! ゲースロのときはS1の序盤でピーター・ベイリッシュに一目ぼれして以降すっかりひきつけられてしまったけど、今作もウキウキになった。あ、でもレイニラの顔もめちゃくちゃ好きなので、割とずっと目が幸せなドラマである。

そういえば原作は読んだけど、すでに原作とドラマでだいぶ違う描写が多いし、原作とドラマでは前提となる未来が異なるので、基本的には別の作品として楽しむというスタンス。ブログでも原作の今後には言及しない予定。

 

 

Too late

アリセント、ごめんよ……。わたしは2-1の感想でこう書いていた。

今更レイニラにルークのことを手紙で謝ろうが、ルークを心から弔おうが、それは変わらないのに。それでもそれをせずにはいられないのが、アリセントのキャラクターなのだ。

息子には息子オアアアア!!「ハウスオブザドラゴン」2-1感想 - なぜ面白いのか

 

「変わらない」わけではなかった。彼女の言葉には誠意があり、レイニラの心をも動かすものだった。ただ、レイニラがそれを読むのが遅すぎただけだった。レイニラが2話前にこの手紙を読んでいれば、まだなんとかなっていたかもしれなかったのか。

2話前、というかたぶんデイモンがキングスランディングに潜入する前か、止められるとしたら。でもあのときレイニラは息子を失った悲しみで頭がいっぱいで、アリセントからの手紙を開く気にもなれなかった。それでも手紙を大事にとっておいたのは、あんなことがあってもふたりの間に友情が残っていた証左だ。

それに2-1時点ではレイニラはミサリアと出会っておらず、ミサリアがレイニラに協力する理由もなく、レイニラがアリセントと会いたいと思ってもその手段がなかった。ジェヘアリーズ死亡でいよいよ取り返しがつかなくならないと、レイニラがアリセントに会うためのフラグが立たないなんてな。この掛け違いっぷりよ……。

あとはやっぱり2-2のアリックとエリックの悲劇を目にしたことも、レイニラの行動を促した可能性がある。互いに大事に思っているはずのふたりが殺し合うのを見て、やはり彼女は自分とアリセントを重ねて見ていたのではないか。

 

実際に出会ってみて、アリセントも戦争を望んでいないということはレイニラにもわかったはず。それでもアリセントには戦争を止められないということも、レイニラは理解した。ちょうど、レイニラ自身も自分の評議会を制御しきれない(&デイモンに至ってはお手上げ)と感じていただろうから。このどうしようもない対称性よ。

戦争を始めるのは男たち。女には止められない。レイニラなんて主戦力となるはずのドラゴンを持っているにもかかわらず、第一線から退けられようとしていた。

戦争を止められる力を持っているとすればそれはオットーだったが、彼はクビになった。兵は進軍を始めてしまった。エイモンドはいつドラゴンで出発すると言いだすかわからない。

何もかも Too late である。今後は、届いた手紙はすぐに読もう!!

 

 

I swear it, on the memory of my mother!

今回いちばん悲鳴をあげたのがこのセリフ。

ヴィセーリスが「氷と炎の歌」についてレイニラに語るシーンを見直そうと思い、1-4を途中から再生したわたしは、とあるシーンで凍りついた。

1-4は、レイニラがデイモンと町に遊びにいき、帰ってきて大問題になる回だ。

アリセントはオットーがヴィセーリスにその件を報告しているのを聞き、レイニラを問い詰める。レイニラはアリセントに「何もなかったしデイモンは私に触れもしなかった」と平然と嘘をつき、そのとき「母の思い出に誓って本当だ」と言っていた。

アリセントはレイニラの言葉を信じ、レイニラをかばってヴィセーリスを必死に説得した。

当時の感想はこちら↓

ヴァリリアンナイフとムーンティー「ハウスオブザドラゴン」1-4感想 - なぜ面白いのか

 

その結果どうなったかというと、レイニラの言葉に影響されてオットーがクビになり、アリセントはレッドキープでの後ろ盾を失った。クリストンはレイニラから離れ、アリセントはレイニラとクリストンが関係を持っていたことを、つまり「母の思い出に誓って本当だ」と言ったレイニラの言葉が大嘘だったことを知ってしまった。

その言葉を、今回はアリセントが口にしたのだ。

ヴィセーリスが亡くなる直前にエイゴンの名を呼んだことを、「母の思い出に誓って本当だ」とアリセントは言った。

そのときのレイニラの表情の変化ときたら。あれはたぶん思い出したのだ。それが自分がかつて口にした言葉だということを。そしてそのとき自分が親友にどんな嘘を言ったかを。自分が先にアリセントを裏切っていたことを。

レイニラが「あなたは最後に裏切った」と言ったとき、アリセントは「お前が先に裏切ったんじゃろがい!!」と言うのをよく我慢したよね(絶対言うと思ってたし、自分がアリセントなら間違いなく大聖堂の屋根が飛ぶようなクソデカボイスで言う)。そう言うかわりに、彼女は「母の思い出に誓って本当だ」と返した。ものすごいカウンターパンチだ。

あれはアリセントの「お前が先に裏切ったんじゃろがい!!」というつっこみであり、同時に「お前と違ってわたしは母の思い出を、嘘をごまかすために安売りしたりしない」という宣言でもあった。

レイニラにはその意図が伝わったはず。クリストンが今はアリセントに仕えていることを、つまりレイニラがあのとき嘘をついていたとアリセントが知ってしまっていることを、レイニラもわかっているだろうから。

 

しかしわたしはここまで、ヴィセーリスの遺言についてアリセントはその真意(本当はレイニラに向けて言ったつもりだったという程度の理解ではあっただろうけど)を吟味し理解した上で、あえて「誤解」したのだと解釈していたわけだが、今回の彼女の反応を見ていると、もしかして本当にヴィセーリスは自分に向けて言ったと思っていたのかもしれない。

当時の感想はこちら↓

失われた眼は何を視る「ハウスオブザドラゴン」1-8感想 - なぜ面白いのか

 

あるいは、自分でもヴィセーリスの真意がどちらかわからないまま、しかし自分と自分の子供たちを守るためにはヴィセーリスが「エイゴン」の名を口にしたという事実を、誰もが認める「事実」にしなければならなかった彼女は、周囲に何度もそれを説明するうちに、自分でそれを完全に「事実」と受け入れたということだったのかもしれない。まあたしかに事実は事実だったんだけど。

 

 

エイゴンの悲哀

ヴィセーリスが「エイゴン」の名を口にしたこと自体は事実だったし、アリセントもそれを周囲に力説したのだろうけど、残念ながら肝心のオットーはそれをまったく信じていなかった。たぶん「うまいことやったな」とアリセントを評価はしていただろうけど。

エイゴン自身もどうだったんだろう。自分がヴィセーリスに愛されていなかった、というか関心を持たれていなかったことはひしひしと感じていたはず。なのに急に後継者に指名されて、だいぶ面食らったのではないか。それでも気が進まないまま戴冠して、民衆に熱狂的に受け入れられて、王としてやっていこうと彼なりに心を決めたように見えた(心を決めたところでアレではあるが、それでもだ)。

それでもどこか、「どうして自分が?」という疑問はどこかに持っていたのかもしれない。だからこそオットーに「王の器ではない」と言われて「父上が俺を王にした」という言葉が出たのではないか。一笑に付されてしまったけど。

「ヴィセーリスがエイゴンを王に指名した」というのはエイゴンにとって心の引っかかりでもあり、しかし同時によりどころでもあったはず。それを「そんなもん信じてんのはおめーだけだよおめでてーな!」と笑われてしまったわけだから、それって相当ショックだったんじゃないかな。

2-2のラスト直前でエイゴンがしくしく泣いていたのはジェヘアリーズを亡くした悲しみのためだけかと思っていたけど、彼にとっての直前のシーンを考えると、「ヴィセーリスは自分を王に指名したというのはチームグリーンが生き延びるための嘘だった」「自分はチームグリーンに利用されているだけ」「父親も祖父も自分を愛してくれていない」「それどころか見下されている」みたいなことを考えてしまい(もちろん一部は勘違いなのだが)、ショックの涙も含まれているのではないかという気がする。

 

で、そういう解釈をふまえての今回。

エイゴンは最初からあのヴァリリアのナイフを手にしていた。最後に「氷と炎の歌」(あのナイフに刻まれている)が出てくることを示唆する秀逸な演出である。あのナイフのかつての持ち主はエイゴン征服王。そして後のシーンではエイゴン征服王の鎧を着てご満悦である。

彼自身は、ヴィセーリスが死の淵で口にしたのがエイゴン征服王のことだとは知る由もないだろう。でも同じ名を持つ「王」、誰からも敬われる伝説の「王」を、今のエイゴンが強く意識していることは間違いない。

そして彼は鏡を見つめる。

「鏡を見つめる」というシーンが意味するものは、一般的には「内省」である。自分自身を見つめなおし、自分のあるべき姿は本当にこれなのか、このままの道を進んでいていいのか。あの一瞬の真顔は、やはりオットーの嘲りが響いているのではないかと思わせた。

自分が周囲の大人たちから無能だと思われていることを、彼はこの上ない形で突きつけられてしまった。母親の言うことすら信じられなくなってしまった。自分のまわりにいるのは、王の楯にもかかわらず純潔なにそれおいしいのみたいな倫理観欠落ボーイズばかりだ。思わず真顔にもなるよ。

しかし真顔になったのは一瞬で、出撃はやーめた! で娼館になだれこむあたり、やっぱりダメなんだよなあ。まあS1の頃は手近な侍女に手をつけて妊娠させていたのに対して、プロにお金を払ってやるようになったところが進歩と言えなくもないが……(やる気のないフォロー)。

 

 

罪びとたちの罪びとたる自覚

今やエイゴンやエイモンドも含めて、自分が罪びとであるという自覚のないキャラはほとんどいない状態にまでなってきているが、しかし今回は特にそういう描写が多かった。

まずはアリセント。

彼女はジェヘアリーズが殺されてからずっと、自分は赦されない罪を犯したと思っている。オットーにそれを告白しようとしたが、彼はそれを聞かなかった。おそらくオットーはアリセントとクリストンとの関係を知っているか、少なくとも察してはいるだろう。アリセントは罪の告白も許されず、罪の意識は溜めこまれる。

そして今回、ヘレイナに「赦す」と言われてしまった。きつい。これはきつい。

「赦さない」と言われて責められるよりも、ある意味でずっときつい。責められた方が、責められて謝った方が、まだ気が楽だっただろうに。

ヘレイナは、アリセントがジェヘアリーズへの悲しみよりも自分自身の罪の意識で苦しんでいることを見透かしていた。アリセントがヘレイナに対して「悪いことをした」のだとヘレイナが思っていない限り、「赦す」なんて言葉は出てこない。しかし言葉とは裏腹に、ヘレイナの表情は責めるようなものだった。

あのあと母子の「赦しのハグ」に至るような展開があったとはとても思えない。どうなっちゃうんだろうな、この溝。

 

そしてクリストン。

たぶん彼はこの戦争で死ぬかもしれないという覚悟を持って出兵している。今回の小評議会の結論がどうであったにせよ、近々出兵があること、そこに自分も加わることは以前から覚悟していただろう。

そう思うと、前回「ハァ!?」となったアリセントの部屋での全裸待機(全裸ではないが、時代性を考えれば実質全裸である)は「本当にこれで最後」だったからだろうか。そしてアリセントもそれをわかっていたのかもしれない。

クリストンは自分のことを「赦されることのない罪びと」だと思っている。そしてその罪は増える一方だ。自分が適切に夜警を務めていれば、ジェヘアリーズは死ななかったかもしれない。そして自分が余計なプランを立てなければ、アリックは今も生きていただろう。

今回の、アリックとエリックの死体からクリストンのアップへと変わるカットの残酷さときたら。「汚点」を減らし、少しでも自分の「マントを漂白」できるようにととった行動で、汚点を増やしてしまった。最初から誰がどう見ても汚点を増やすだけの結果になるだろという感じだったが、本人は本気だっただろうに。また「汚点」が増え、罪が増えたことを、クリストンはちゃんと自覚している。

S2に入ってからずっとクリストンの目が死んでるのが気になっていたけど、今回はいっそう死んでいた。今回は目にライトがあたっていても「目から光が消えた表情」を保っていた。役者さんすごいとしか言いようがない。

結局クリストンとアリセントは、両者ともに「赦されることのない罪びと」になってしまったわけだ。

アリセントに願った「祝福の品」は白いハンカチ。純潔の失われた「白マント」である彼に白いハンカチか……。このアイテムが後々どう活きてくるのか。たぶん、すごく泣くことになるんだろうなという気はしている。

アリセントの兄をドラゴンから助けた一連のシーンを見ると、対ドラゴンを前提とした戦場での彼はそれなりに有能っぽい。そもそもレイニラもクリストンの武勇に目をとめて護衛に抜擢したんだよね。戦場での活躍には期待したいところ。

 

最後にデイモン。

突然のホラーやめろ

あの女性は原作にも出てきた人だと思うけど、本当に魔女なのか。メリサンドルみたいなやつなのか。

あの木はウィアウッドかな? 北部で信仰されてるやつ。

デイモンの心情は全然読めないわけだが、今回彼が視た幻影は、彼が多少なりとも罪悪感を抱いていることを表しているのかも。

子役レイニラの再登場はなかなかのサプライズだった。後ろ姿があまりにもターガリエンヘアスタイルだとバレバレなので、あえてあっさりめの髪型にしている。

「尻ぬぐいはいつも私」と言いながらジェヘアリーズの首を縫い合わせるレイニラの幻影はめちゃくちゃホラーだった。でもこれが、今のデイモンが考えるレイニラ像なんだろうな。

デイモンにとってレイニラはいつまでも小さな少女だ。そうあってほしいと、彼女には成長してほしくないと、彼は思っているのかも。もう5人(で合ってる?)も子供を産んだ大人の女性なのにな。

そしてデイモンがジェヘアリーズを殺させたことで、結果としてレイニラが人々に憎まれ、諸侯からの支持も失ってしまった。デイモンはどこまでそれを予想していたのかわからなかったけど(レイニラの支持者を減らす意図がある可能性も考えたのだが)、今回のこれを見ていると、本当に単に考えなしで突っ走っただけだったのか。

レイニラは自分を責めるし(これは幻影でもなく事実である)、死んだ子供も自分を責めているように感じられる(当然オブ当然である)。

デイモンがまさかの涙目で、こっちがびっくりしてしまった。レイニラの気持ちなんてお構いなしだし、当然庶民やよその子がどれだけ死んでも意に介さず、自分が好き放題やれればOKなタイプだと思っていたので。彼もまた、多少なりとも自分を罪びとだと思っていたのであるなあ。

しかしハレンホールのストロングさんに対する「your grace と呼べ」発言はいったいどう解釈したものか。王配殿下に対する一般的な呼び方は my prince でいいの? 王配殿下であり前王弟でもあるせいでややこしすぎるんだけど。

やっぱりあれは王位簒奪宣言なのか? ストロング家一同が思いっきり顔を見合わせていたのはそういう反応なの? ハレンホールに兵を集めてリヴァーランド一帯を制圧したら、王都に軍を進めて「鉄の玉座をとる」のが目標だとデイモンは言った。「鉄の玉座をとる」の主語は「自分」?(一応デイモンのセリフでは主語は we だった)

彼の野心はレイニラに明確に敵対するところまでいくのだろうか?

あの魔女の予言を聞く限りその前に死にそうだが、でも彼女は「いつ」死ぬかは言っていない。デイモンは死ぬ……! 死ぬが……今回まだその時と場所の指定まではしていない。どうかそのことを諸君らも思い出していただきたい。つまり……HBOがその気になればデイモンの死は10年後20年後ということも可能だろう……ということ……!

 

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魔女とデイモンのシーンでみんなカイジのあのセリフを思い出したでしょ?(みんなとは)

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