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血の収穫完了「ハウスオブザドラゴン」2-7感想

https://twitter.com/HouseofDragon/status/1817742842485510539

【祝】アルフくん大活躍!!! 大暴れ!!! 顔がいい!!!!!【朗報】

いや本当に画面に映るたびにウフフってなるわ! お調子者キャラなとこがちゃんと伝わってきてたまらんわ!! 

誰や!! 「アルフよりヒューの方がかっこいい」とかわざわざ送ってくるのは!! そりゃヒューもめっちゃ渋かっこいいけど、アルフくんはめちゃくちゃかわいい系やろ!!! 顔はいいがクソということが十分にあり得るのがこのドラマなので、推しになるかどうかはまだわからんけどな!

(原作アルフくんがどうなるかは知っているけど、ドラマでどう味付けされるのかとても期待している)

そういうわけでだいぶウキウキハイテンションでのネタバレ感想!

 

 

 

 

ジェイスよく言った

わたしはジェイスくんがあれをいつ言ってくれるのかとずっと待っていた。

子供はわかってるし、子供自身が周囲から陰口をたたかれるし、保護者と険悪になるのも避けたいし、本当につらいよな。「見ればわかるじゃん」って改めて子供の口から言わせるの、残酷すぎる。

レイニラは自分が何をしたのか、自分が周囲を欺いてきた結果誰をいちばん苦しめることになったのか、やっとわかっただろうか。いちばんしわ寄せが行くのは子供なんだよ。レイニラは今まであまりにも自分の罪に無自覚で、ヴィセーリスもまた「何も見ない」ことで彼女の罪を自覚させなかった。

ドラゴンシードたちをドラゴンライダーにする計画がジェイスから出てきたとき、わたしは彼が自身が「落とし子」である自覚から発案したのだと思った。でも違ったんだな。ジェイスはそこまでは覚悟してなかった。

ジェイスにとって「ドラゴンに乗れる」というのは、自分が「ただの落とし子」ではなく「高貴な生まれ」であり「統治者としての資格」を持っている証であり、寄る辺だったわけだ。

それが「高貴な生まれ」でもなく「統治者としての資格」もなさそうな「ただの落とし子」たちまで「ドラゴンに乗れる」とあっては、ジェイスの継承権の正当性が危ぶまれてしまう。たしかにそうだ。この作戦はドラゴンから神性を剥奪するだけでなく、「ターガリエン」からも神性を奪う。

ターガリエンの目印である銀髪を持たないジェイスが、自分の継承権に危機感を覚えるのはよくわかる。彼が「ターガリエン」であることは本人も疑っていないし周囲もそこは納得しているだろうけど(ドラゴンに乗れるのだし)、「ターガリエンとヴェラリオンという高貴な血筋を継ぐ者」でないとなれば、「半分ターガリエン」であるほかの有象無象とイーブンな立場になってしまう。

しかしわたしはジェイスがこのことを口にするのは、ドラゴンシードが城に殺到するのを見た後だと思ってたんだよな。銀髪の集団を見て、ターガリエンの血がその子供たちにどう受け継がれるかを見て、やっと自分の身の危うさを自覚するのだと思っていた。ジェイスくん、わたしが思っていたより聡かった。

一方のレイニラは、ここに来てデナーリスと同じように「運命」や「神々」を行動理由にし始めた。このデナーリスとの重なり方、バッドエンド臭がすごい。レイニラは周囲の人々が押し付けてくる「(女性としての)運命」に逆らって自分の道を切り開こうとしていたのに、自身が不利になると「運命」を口実にして自らの神性を貶め、子供を苦しめる。これがターガリエンの限界なのか。

本当に犠牲者を出したくないのなら、本当にそれが最優先だと考えているのなら、今すぐ降伏して自分はペントスにでも逃げればいいじゃん。その選択肢は常に両軍にあるのだけど、結局どちらもそれは選ばない。結局両軍とも犠牲者を出したくないと言いつつ「自分が勝つ」ことを最優先にしている。まあそんなもんだよな。そうしないとドラゴンが滅びる結末に向かってくれないしな

しかしこれで「ドラゴンシードをドラゴンライダーにするための舞台装置」「レイニラに自分の罪を自覚させるための舞台装置」としてのジェイスの役割は完了しちゃったんだよな……。

 

あと改めて思うんだけど、ネッド・スタークって超人的に察しの悪い人だったよね。そりゃヴァリスと小指の両方から探りを入れられて、両方から匙を投げられるよね。「見ればわかるじゃん」だよ本当に。

そして今改めて思う、ジョフリー・バラシオンのメンタルの強さよ。ジェイスくんとまったく同じ立場のはずなのに(むしろジョフリーの場合は「女王」ではなく「王妃」の浮気による子供なので、ジェイスよりもまずい)、ジェイスくんのような不安は欠片もなさそうだった。まあジョフリーについては、メンタル強いとかいう以前の問題だったけど。

 

 

ミサリアの影響

ジェイスくんには大反対されてしまった今回のドラゴンシードオーディションには、ミサリアの影響が大きかった。ミサリアはレイニラに直接「ターガリエンの落とし子なんか80人は知ってる」と言ったけれど、それだけではない。

彼女は前回、レイニラを支持する理由として「自分を対等な存在として扱ってくれた」ことをあげた。息子や議員から王の資質を疑われていると不安になったレイニラにとって、それは新たな指針になったに違いない。

だからレイニラはオーディションの直前、集まったドラゴンシードたちと同じ目線に立って、同じ空間を共有して演説した。剣を持った護衛を制して、ドラゴンシードたちの輪の中に入っていった。あれはターガリエンの態度としては革新的だったはず(だがその場にジェイスはいない)。

ドラゴンシードをドラゴンライダーにするというプロットは原作通りだが、それをミサリア、ジェイスのプロットと絡めてリーダーとしての資質に切り込んでいくシナリオに仕立てたのはお見事。

しかしヒューとアルフ以外の生存者はこの後どうなるんだろう。希望者はキングスランディングに帰れたり、ドラゴンストーンで仕事をもらえたりする?

「ドラゴンに乗れる落とし子」は賓客待遇だが、「それ以外の落とし子」は価値なし? 死んでも惜しくない存在? ジェイスくんと同じ「半分ターガリエン」だけど?

そうだとしたら、「利用価値のある人間は対等に扱う」という君主でしかないんだよな。まあそうだとしてもやはりターガリエンとしては(というかウェスタロスの貴族としては)革新的なのだけど。

あとやっぱりせっかく集まってくれたドラゴンシードたちに、初級ヴァリリア語講座くらいは受講させるべきだったんじゃないかな。最低限必要な挨拶の発音指導くらいやっておいてあげれば、生存者がもうちょっと増えたのでは。

言葉が通じない者同士だけでのお見合いっていうか、むしろ誰が生き残るかのデスゲームっていうか……。実際はヴァリリア語講座をやる予定だったかもしれないけど、講師が全員「やってらんねえぜ!」って辞職しちゃったから仕方ないか。

 

 

デイモンガチギレクラブ代表者委員会@ハレンホー

今回のギャグパート。デイモン嫌われすぎワロタ。あれだけやったらそらそうよ。

オスカー・タリーの立派な跡取りぶりに拍手喝采し、リアナ・モーモントを思い出した視聴者は多いはず。

いやオスカーくんよくやったなあ!

彼は幼い頃に父親を亡くしてグローヴァー・タリーに引き取られ、グローヴァー公の跡取りとして育てられてきた。グローヴァー公の年齢や体調から、そう遠くないうちに跡取りになることを前提とした教育が行われたに違いない。なんでターガリエン家でこれができないんだよ

数カ月前にオスカーがデイモンと会ったときは、まだ頼りない感じだった(エイゴンの火傷の治り具合から、たぶんデイモンがハレンホールに来てから数カ月は経過しているものと思っている。迷惑すぎる)。

あのときオスカーは自身の力不足を痛感し、近い将来あのクソ野郎と再度対決しなければならないと覚悟し、以降臣下たちの知恵を借りながら対処方法を練っていったに違いない。

タリー家を滅ぼすわけにはいかない。オスカー自身も河川地帯の諸侯たちも、ドラゴンに燃やされるわけにはいかない。タリー家の名誉も河川地帯の伝統も失うわけにはいかない。この背反的状況にどう対処するか、タリー家の「手」も(王家以外では「手」とは呼ばないだろうけど)メイスターもみんなで考えたのだろう。

この地において、どちらが「上」なのかあのクソ野郎にわからせる。その上で、グローヴァー公の誓いは守る。これが落としどころである。オスカーにはきっと有能なブレーンがいたのだろうけど、そのブレーンの意見を聞き、採用し、諸侯の前でデイモンを相手に堂々と渡り合ってみせるのはオスカーの実力だ。なんでターガリエン家でこれができないんだよ

 

このあとのヴィセーリスとのシーンと合わせて、ようやくデイモンも玉座につくことの意味を理解しつつある。

王とは、すべての臣民に仕える者だ。あちらを立てればこちらが立たずの状況ばかりの中で全員をとりなして、みんなが喧嘩しないようにみんなにいい顔して、各家の関係性にめちゃくちゃ気を遣って、それがちょっとでもうまくいかなければ即反乱である。そんな繊細で胃が擦り切れる仕事、本当にやりたいか?

……という程度の理解だとしても、デイモン的には超絶進歩である。

だってデイモンにとってもともと玉座=母の子宮だったわけだから。彼は胎内回帰願望から玉座を望んでいただけで、特に実現させたい政策も将来のビジョンもあるわけじゃないし。

ようやく玉座の本質を理解したとして、もう妻であるところの女王はデイモンのことを身も心もドラゴンも必要としてないんじゃないか。まあドラゴンはギリギリ要るかもね。

レイニラがハレンホールに送りだしたおじさんもそろそろ到着するだろうか。ドラゴンが増えて海上からキングスランディングを目指せるようになった今、河川地帯における数的優位状況はどう活きるのだろうか?

 

 

ラリスとエイゴン

ここのところラリスくんのスパイ網が急激にポンコツ化しすぎている気がして、わたしは心配だ。新ドラゴンライダー登場とか、ドラゴンシードオーディション開催のおしらせとか、ラリスくんのスパイが真っ先に把握してないとダメでしょ? あんなに海岸沿いに舟を並べて大勢を運んでいたのに、スパイが誰も気づかないとかある?

エイモンドがスパイからの情報を信用しないというか、ラリスのことを信用していないから、あえて情報を出さずに様子を見ているのかもしれない。エイモンドが情報の価値を理解するまで。

あるいは、諸々の情報を知った上で、ラリスはすでにエイモンドを見限る判断をしたのかもしれない。ラリスの関心はエイゴンに向いている。

明らかにエイゴンのリハビリを急がせているのはたぶん、スパイからの情報でキングスランディングングがもう長くはもたないことを悟っているから? 近いうちにチームブラックが新ドラゴンを従えてキングスランディングに乗り込むであろうこと、民の不満が限界状態なことをわかっているから?

そうなったときの「次の手」を準備しようとしているのかな?

今回わたしがいちばん興奮したのは、エイゴンの方に身を屈めていたラリスが体を起こしたあとの髪を耳にかける仕草なんだがな! たまらん。デュフフ。あの髪質がジェイスと同じなんだよなあ。現存してるキャラクターの中でいちばんジェイスくんに似てるのはラリスくんなんだよなあ。

その直前の、後光というか横からの光を浴びてエイゴンを励ますラリスの神々しさよ。すっごい構図。ラリスくん、チームグリーンの希望になってしまうのか。

 

 

アリセントがオフィーリア

急に城を出てオフィーリアスタイルで水浴びするアリセント。一瞬マジで入水するんじゃないかと思った。

S2以降、アリセントはやたらと入浴シーンが多かった。

最初は侍女たちに洗ってもらっていたけれど、その侍女が信用できず自分ひとりで入浴するようになった。今回のシーンと似た、浴槽の中に沈んでいくシーンもあった。

そして今回「何もかも汚れてる」と言って城を出てしまった。

アリセントにとって入浴は、文字通りの禊。体を洗い清めること。罪や穢れを洗い流すこと。だから彼女は自分が「汚れた」と思うと入浴していた。たとえばサー・クリストンとの情事のあと。たとえば言うべきでないことを言ってしまったあと。

でももう限界だったんだな。決定的だったのは民の暴動だったのだろうけど、おそらくそれ以前に、お兄ちゃんから「レッドキープは男子の成長には健全な場ではないのかも」と言われたのがかなり効いている。

それはまったくごもっともである。聞くべきでない噂は常に耳に入ってくるし、ドラゴンの有無でいじめられるし、王位継承者同士で比較されまくるし、「見ればわかるじゃん」レベルの不倫の証拠が目の前を歩いているのにそれを糾弾どころか指摘もできない。親の子育てスキル以前に、こんな環境じゃ感性も倫理観も歪みまくるわ。

それを客観的に指摘されて、「そりゃそうだよな」とやっと思えたんじゃないかな。あれもこれも、「私だけ」が悪いのではない。そう言ってもらえた気がして、アリセントは久しぶりに、すごくほっとしたんじゃないか。

それで、「穢れ」はレッドキープ自体なのだという発想に至った。だから「何もかも汚れてる」のだ。

とはいえ、当然ながらレッドキープを出てお外で沐浴したとしても、レッドキープの問題は解決しない。それくらいはアリセントもわかっているはず。

アリセントの行動理由はわかるけれど、このシーンにこれだけドラマの時間を割いた理由がまだわからない。この先に何か影響してくるのかなあ。たとえばアリセントの死因とかに(もちろん死ぬの前提である)。

ひとつには、レイニラの属性を「炎」とするならば、アリセントの属性を「水」にする意図があるのかも。これだったらちょっと面白いな。アリセントの「水」にまったく攻撃性がないところも(今のところは)。

今回、レイニラの衣装もキングスランディングにいるレイニラの侍女の衣装も赤くなった。いよいよ赤いターガリエンと緑のハイタワーという補色関係が打ち出された。

 

 

アルフのかわいさを語る

いやもう、最初から「来るんじゃなかった」感をバリバリに出しながらレイニラの話を聞いてる時点で面白い。

ヴァーミサーから逃げ出すのも別に機敏な動きを見せるでもなく、転がり落ちてて面白い。ホント、ドラゴンの乗り手を選ぶ基準が謎。高貴さとか威厳とか関係ないのね。血と相性がすべてなのか? 

「怯えた様子を見せてはダメ」もたぶん関係ないよね。アダムとアルフはドラゴンと目が合って漏らす勢いだったでしょ? あんなにも「オワタ」って顔した人、初めて見たよ。アルフにじゃれつくシルバーウィングは最高にキュートだったけど。

自分は本当にターガリエンなのか? とどこかで疑問に思っていたところもあっただろうけど、ああ本当だったんだ、って安堵の表現がとても好き。もちろん第一には「ドラゴンに食われずにすんでよかった」という安堵だったのだろうけど、自分に対して「あなたはドラゴンシードよ」と教えた人(おそらく母親?)が嘘をついていなかったのだと確信できたことも、きっと嬉しかったんじゃないかな。母親の言葉を疑うのはつらいもの(ジェイスを見ながら)。

久しぶりに人間を乗せてウキウキでキングスランディングまで飛んでいっちゃったシルバーウィングもかわいくて、初めて推しドラゴンができたかもしれない。お調子者同士、きっとアルフくんとの相性もいいのね。

初めてのドラゴン飛行でヒャッハーしちゃうアルフくんもかわいいね。ヒューがアレやったら解釈違いすぎる。

 

次回がS2の最終回。さあ、誰が生きてS3を迎えられるのか

新キャラも増えたことだし、メインキャラが何人か減ることになるのかな。心して見ねばだ。

 

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