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エデンとパラダイスロスト「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」クリア後感想

これはマイパレスのスクショ

ペルソナ5 ザ・ロイヤル」クリアしたーー!!!

楽しいゲームだったなーー! すごく充実感あるゲームで毎日彼らに会うのが楽しみだったし、それだけにクリア後の喪失感が重い。けどそれが心地よくもある。エンディングに納得感もあった。

クリスマス以降はスクショをすることができなかったので、わたしはかわりにノートをとっていた。手書きで。ゲームをするときはいつも手元にB6サイズのノートを置いていて、おつかいの内容やヒント整理、TODOリストや買い物メモ、達成したことの記録(主にFF14での)として活用している。それを今回はスクショがわりに使った。

今見直すと1月8日のプレイからメモをとり始めて、10ページ分びっしり書かれている。後で見返すために書いているはずなのに、読みづらさが極まってる。

完全に「スクショのかわり」のつもりでセリフの内容や描写を書き写すことに徹したメモなのだが、ほんの数か所書き残された「わたしの呟き」が笑える。「何なんだよこのゲームは地獄かよ」というのたうった文字があまりにもわたしの本音である。普段このノートには感想は一切書いていないのに(感想は片手ではなくキーボードの上の両手が考えながら書くので)、これだけは書かずにはいられなかったんだな。

そういうわけで、無事クリアした記念のネタバレ全開感想。ロイヤル未クリアの方は、クリア後にまたおこしください!!

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マイパレスで見られるイラストがどれも良い

 

明智吾郎の帰還と喪失

何の話からするべきか迷ったけどやっぱりまずはここからでしょ。

前回記事でわたしはまさにこれを疑ってたんだよ。

でもこの明智くんも鞘くんの認知や希望が生んだものだったりしない? 鞘くんが「もう一度会いたい」と望んだから再登場したとかじゃない? 本当に生きてる?? どうやって生き延びたか聞いたらはぐらかされたんだけど大丈夫???(疑心暗鬼)

長いクリスマスイブが終わり年が明けた「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」プレイ日記8 - なぜ面白いのか

 

やっぱりそうだったんじゃん!!

しかもほかならぬ明智くん自身が、そのことに気づいた状態で3学期を過ごしてたんじゃん!!! 何これしんどい。

というか、3学期の明智くんは明智くん本人ではなく鞘くんの認知上の明智くんなわけでしょ? 世界の真相にひとりでたどり着く明智くんも、「もう王子様な自分でなくてもいい」という態度でヒャッハーしてるロキ智くんも、「誰かに創られた現実で一生飼い殺されるなんて御免だよ」「君が迷うことは僕への裏切りだ」と言って丸喜の創った「現実」を否定し自ら消えることを選ぶ明智くんも、鞘くんが11月26日までに築いた明智くんのイメージから生まれてるってことでしょ?

明智くんの存在がしんどいのではなく、鞘くんから明智くんに向けられた未練、あるいは情念がしんどい。

3月19日の吉祥寺(P5Rの舞台のうち、ここだけは何度も訪れているので再現度が理解できる)でジャズクラブの店長に「明智くんの友達だよね?」と問われたとき、鞘くんは「…わかりません」と答えた。

ふたりの関係は、名前をつけ難い。友達、ではなかったと思う。ライバルではあったかもしれない。でも現代日本の、たとえばスポーツなどの場で一般的にいう「ライバル」という存在からは、だいぶ遠かった。

「ライバル」というよりは、もっと明白に「敵同士」だった。明智くんが鞘くんを殺そうとしていたのは本気だった。明智くんが大量殺人犯なのも紛れもない事実だ。鞘くんはそんな大量殺人犯から、本気で自分と仲間を守ろうとしていた。

だけど、そんな明智くんと、心を通わせ合う部分もあったはずなのだ。吉祥寺のカフェで、ケーキを食べながら(3月19日の鞘くんがちゃんとそのことを思い出していて嬉しかった)。あるいはダーツをしながら。あるいは冴さんのパレスで共闘しながら。

ふたりは似た者同士なのだと、鞘くんの方も気づいていたはず。明智くんが「なんであと数年早く出会っていなかったのか」というのを、鞘くんだって想像したことがあったはず。

明智くんが「ゲームの駒」としてヤルダバオトに選ばれたことを、鞘くんはどう感じていたんだろう。ヤルダバオトを恨んだ? でもペルソナ能力に目覚めていなかったとしても、明智くんが恵まれない環境で「腐って」いったことは変わらなかっただろう。もっと悪い形で獅童と会っていたかもしれない。だがあんなにもたくさんの被害者を出すことはなかったかもしれない。一方でヤルダバオトの駒同士だったからこそ、ふたりは対等な「ライバル」として出会えた部分もある。

シドーパレスで明智くんは、「既にライバルだ」と言った鞘くんに「君、最高だね!」と笑った。モルガナはそれを見て、「あれは本心なんだろ?」と言っていた。

そして明智くんは、鞘くんたちを逃がすために犠牲になった。最期の直前に、コープをMAXにして。それがどれほど鞘くんの心に傷を残したのか。決着をつけようと言っていたのに、というかあと一歩で決着がつきそうだったのに、それを永遠にお預けにされて。そのおかげで鞘くんたちは生き延びることができて、「世直し」もできた。鞘くん視点で考えたら、明智くんの「勝ち逃げ」に等しいんじゃないか。

そもそも怪盗団は、「世直し」のために人を殺したりはしない。明智くんは大量殺人犯だが、「だから死んでもいい」なんて思っていたメンバーはいなかったはず。法で裁かれて、罪を償うべきだと、最初の鴨志田のときから一貫していた。明智くんに対しても皆が同じ気持ちだったはず。

明智くんは罪を償う機会も奪われたのだ。後悔する機会も、やり直す機会も。そして決着をつける機会も。

そこ、なのかな。鞘くんの未練は。

友達だったわけじゃない。仲間だったわけでもない。

でももう一度会いたかったし、会って話したかった。決着をつけたかった。

たしかシドーパレスから戻ったあとの夜、鞘くんが「明智と決着をつけたい」みたいなことを考えるシーンがあったよね?(なぜわたしはスクショを撮らなかったのか)その願いを丸喜先生に感知されたのかなあ。メメントスに直接接続できる丸喜先生なら、感知できるのかもね。しかも丸喜先生は鞘くんと長い間「カウンセリング」する関係にあったし、鞘くんが怪盗団だと最初期から察して目をつけていたわけだし。「なんとなく感知できた」ではなく「鞘くんの望みを積極的に探った」のかもしれない。

ちなみに丸喜先生は鞘くんと明智くんの関係を「敵対してても憎み合う関係とも違う」「君は後悔していたんじゃないかな、理解を深め合った存在である彼を助けることができなかったことを」と端的にまとめている。丸喜先生こそが鞘くんと明智くんの関係性の最大の理解者であるという現実を、わたしは受け入れなくてはならないな……。

 

ラストシーンの明智くんらしき人影は様々な解釈が可能だし、実際にどれが正解ということはないのだろうけども、わたしの中でこうかな、と思ったものを書いておく。

あれは鞘くんの未練が一瞬見せた幻。

P5Rにおける「眼鏡」は、冤罪によって堂々と表を歩けなくなってしまった(少なくとも地元では)鞘くんが、やむなくつけることになった「仮面」。文字通りの「仮の面」だ。身を守るための手段であり、世界と自分を隔てる壁でもあった。

P4における「眼鏡」が、真なるものを見極めるためのアイテム、「世界をよく見るための手段」だったのとは正反対である。

世界があるべき姿に戻り、しかし鞘くんはその代償に明智くんを再び失った。続けてさらに、パレス衣装の自分も窓に映る。メメントスもパレスもなくなった世界で、そんなものが見えるはずがないのに。

明智くんへの未練、楽しかったこの一年への未練、一緒に過ごした仲間たちへの未練、そして東京という場所への未練の総体が、あの幻を作ったのではないか。

だけど鞘くんはほかの仲間たちと同様、喪失を受け入れた上でそれを乗り越え、前に進んでいくことを決めた。だから彼は「眼鏡」をはずすのだ

仮面をはずし、自分と世界を隔てる壁を退ける。窓を閉じ、鞘くんは「前」だけを見て進んでいく。そういうエンディングだったんじゃないかな。

モルガナがこの世界に残ったように、明智くんもイゴールに類する不思議パワーによって生存していることも考えられる。

3学期の明智くんはコープランク10で習得する「食いしばり」スキルを持っているから、これによって消滅を免れたということも考えられる。けどその場合、結局生存しているのは明智くん本人ではなく鞘くんのイメージする明智くんなんだよな……。

生存を望むプレイヤーにとっては、あれは明智くんだということでいいと思う。

けどわたしにとっては、2月2日にあんなふうに言い切った明智くんが生存しているのはちょっと解釈違いだ。シドーパレスで別れた明智くん(本物)が実は生存していたというなら許容できる。

でも3学期のストーリーを前提としてきれいにまとめるとしたら、わたしはやっぱり「鞘くんは明智くんの喪失と引き換えに世界を元通りにした」「鞘くんは明智くんの喪失も受け入れて前に進み続ける」という結末を選ぶ。

それだけ、鞘くんにとって明智くんの存在が重かったということだから。世界と天秤にかけるくらいに重かったってことだから。これからの自分の人生の原動力にするくらいに重かったってことだから。

うん、これがわたしのエンディングだな。

 

 

最高に最悪なバッドエンド:エデン

2月2日に丸喜先生と会うとき、わたしは割と最初から「ここでバッドエンド分岐があるはず」「ここにバッドエンドがあるなら見てみたいな」と思っていた。

わたしは普段、あまり「セーブしておいて別の選択肢を確認」みたいなことはやらない。割とゲームの一回性原理主義なところがある。単に面倒くさいからでもある。

ただ話の流れからして、ここで丸喜先生との戦いを避ける選択をした場合、「理想の世界」を見ることができるだろうという予想はしていた。そしてその世界に興味がわいた。彼らにとっての「理想の世界」とはどんなものか。大体のところは年始に見せてもらったわけだけど、その続きはどんなものになるのか。そして鞘くんの望む理想とは何なのか。

だから非常に珍しいことだが、わたしはバッドエンドを見るべくセーブを分けておいた。

そうしたらあの展開よ。明智くんが人質にとられてしまい、しかしその明智くんこそがこの世界を拒絶する。

そして鞘くんはほかならぬその明智くんに、自分の選択を告げなくてはならない。なんてことをさせるんだ。アトラスは悪魔かよ。丸喜先生に同意する覚悟は決めていたが、明智くんに「消えてくれ」と告げる覚悟はできてなかった。もちろん明智くんに「裏切り」を告げる覚悟も。

そこからのあの天国のようなバッドエンドな……。

あれは「エデン」だよね。ちょうど今FF14で絶エデンがトレンドでさ……。

原罪を背負う前の人間の姿。無知であるがゆえに幸福な。

痛みを知らない、だから成長もしない、みんながずっと一緒にいる幸せな世界。エデンにおいて、人は不死であり、不変である。

卒業式に現れた丸喜先生がカメラにおさめたあの景色こそが、彼の創りだしたエデンだ(丸喜先生のパレスの最終層がエデンという名前だった)。なんて幸福で、なんて禍々しい。作中に写真は多々あれど、明智くんのいる集合写真はたぶんあれ一枚きりだよね。

そしてバッドエンド限定イラストのエンディング……。画面の前で呆然とするしかなかった。こんな力の入った「バッドエンド」、ある? こんな笑顔溢れる「バッドエンド」、ある?

これもマイパレスのスクショ

ここで泣いた。どうしてこうならなかった……? どうしてこれが「バッドエンド」なんだ……? なぜわたしはこの世界を否定しなければならない?

このエンディングのメモの後に、わたしは「何なんだよこのゲームは地獄かよ」と書きなぐっている。

わたしは自らパラダイスロストを選ばなければならなかった。鞘くんと明智くんこそが、人々に知恵の実を食べさせる蛇の役、すなわちトリックスターだ。

だってなー、あの「エデン」は、この10カ月の、これまでプレイヤーが100時間以上積み上げてきたストーリーの全否定だもの。「知恵の実」、すなわちペルソナを得て自我を目覚めさせ、たくさんの苦悩と苦難の末に成長してきた仲間たちの、すべての成長の否定だもの。

すごいよね。

パラダイスロストをプレイヤーに選ばせるパワーが凄まじいよね。

 

 

丸喜先生のバカ! おたんこなす! 自己の客観的評価が致命的に下手な愚者!

「バッドエンド」の話の続き。

なんといっても、わたしの目には丸喜先生が幸せには見えなかった。帽子で表情が見えなかったから、もしかしたらあの写真を撮りながら丸喜先生は笑顔だった可能性もある。でも、そんなことないんだろうなって思ってる。

丸喜先生はひとりだった。自分が「幸せにした」生徒たちは、誰も自分のことを覚えていない。愛した婚約者も、自分を忘れて幸せになっている。

曲解の力を行使されると、つらい記憶とともに丸喜先生の記憶まで「なかったこと」にされてしまうんだな。

だから丸喜先生は、このまま世界の改変を続けると誰からも忘れられてしまうのかもしれない。彼はどこまでいっても孤独だ。彼の努力は誰にも知られないまま。彼の苦悩は誰にも理解されないままだ。

丸喜先生は「自分はどうなってもいい」というスタンスで世界の改変をしているから、自分が忘れられることは仕方ないと受け入れているのだろう。

でもさあ、それって自己矛盾してない?

マルキパレスの心理検査室で、二択だか三択だかの検査があったじゃない。あれで丸喜先生は自己犠牲的な選択を要治療扱いにしてたじゃない。「自分はどうなってもいい」って考え方の危険性を、ちゃんと認識してたわけじゃない。

もちろん「本来自己犠牲などすべきではない」「しかし本来すべきではないことをあえてしてでも、この世界を改変して多くの人を救いたい」という発想は十分にありえる。でもこの自己矛盾を、丸喜先生だって自覚していたはずなのだ。

「苦しんだのは僕じゃない、留美だよ」と言っていたけど、そうじゃないでしょ。丸喜先生だって苦しんだんでしょ。だから丸喜先生のイシは「悲嘆」なんでしょ。だから丸喜先生のオタカラはあの事件の新聞記事なんでしょ。

そして、すみれは留美の代替なんだよね?(恋愛的な意味ではなく)

すみれは、留美のように壊れてしまう前に「救う」ことができた最初の人だったんだよね? 留美のそばを離れたかわりにすみれのそばに留まって、彼女にかけた「曲解」が保たれているのを確認してたんだよね? SUMIRE の中に RUMI の文字があるのは、偶然かな……?

そういった諸々を客観的に自己評価できていたら、こうなることはなかったんじゃないかな。

でも、カウンセラーだって万能じゃない。他人と心を通わせることはできても、自分の分析がうまくいかないことだって普通にありうる。

実際、ラストバトル時に「分かってるさ、バカげてるのは。僕自身、気づかないように生きてきた」と言っているから、本当に客観的視点を避け続けてきたってことなんだろう。

わたしは丸喜先生にとって必要だったのは、「より大人」なメンターだと思っている。研究の最大の相談相手が高校生て。そりゃ認知訶学の分野においては「素人」ではない高校生だけど。

丸喜先生は高校生から見れば「大人」だが、研究者としては全然かけだしと言っていい年齢だ。志を同じくする研究者仲間と、適切な研究倫理を備えた指導者がいればなあ。何もかも、認知訶学研究を潰した獅童が悪い。

もしそういう人が周囲にいたら、9月の丸喜先生とのコープイベントを見たときのわたしの感想に近いことを言ってくれていたんじゃないかと思うんだ。

素早くかつ適切に人の心に干渉したい?

それはカウンセラーとして言ってはいけないことじゃないかな……。

人の心に触れるなら慎重にならなくてはいけないし、時間をかけることを避けてはいけないよ。ひとりひとりに向き合ってこその仕事でしょ。誰にでも共通の処方箋なんてないからこそカウンセラーという仕事があるんでしょ。

もし高校生が匿名で国民的インフルエンサーになったら「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」プレイ日記5 - なぜ面白いのか

わたしはクリアした今も同じように思っている。もちろん、その後に書いたことも同時に思っている。

まあそれはそれとして「時間をかけてゆっくり治療しましょうね~」という態度では救えない人、現実に「今」強い苦しみを感じている人がいることも間違いない。そういう人たちを「今すぐ」救いたいという切羽詰まった気持ちもわからなくはない。

だから丸喜先生の発想を安易に否定することもできないんだよな。

 

もうね、つらい。

丸喜先生は保健室でのカウンセリングのときにおやつをいろいろ用意してくれてた。「甘いものしょっぱいもの」を取り揃えて。それって、留美の好きなものだったんだね。

すみれだけではなく、生徒すべてが留美の代替だったのかな。ひょっとしたら人類すべてが代替だったのかも。

人類すべての「原罪」を背負って、死んでもいいって思ってたメサイア

でも、その役は明智くんに盗まれた。

丸喜先生のペルソナがアダムカドモン(神が最初に創造した人類。原罪を背負っていない)になり、それに対して「僕を好きに使っていい」と言ったあと、彼は明智くんに「同じことを考えてるみたいだね」と言っている。

同じこととはすなわち、自己犠牲だ。あのとき明智くんは、「どうせ自分は消えるのだから、刺し違えてでも丸喜を止める」と思っていたみたいだった。それ自体は丸喜先生に阻まれてしまったけど、一連の流れは結果として、「明智くんの犠牲をもって世界が救われた」形で終わった。

明智くんの発言が鞘くんの選択の背中を押したのは間違いないし、鞘くんはロキ智くんをパーティに入れてラスボス戦に臨んだしね。

まあ明智くん、人類すべての「原罪」を背負うっていうか、普通に大量殺人の罪を背負ってるけどな! あとそんな「自己犠牲を発揮する明智くん」も結局は鞘くんの認知から生まれた存在なんだけどな! ガハハ!

はぁ……。

 

自分、もうちょっと寝込みいいすか?

P5Rをクリアしたらメタファーやるぞ! と楽しみにしていたのだけど、ちょっと今すぐ気持ちを切り替えて次のゲームって気分じゃないんだよね……。

まだすみれちゃんのこととかバッドエンドじゃないエンディングとか全然語れてないし、あと1回は何か書きたいところ。

 

書きました。

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