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「ハンドレッドライン Hundred Line 最終防衛学園」全エンドクリア後キャラ語り2

前回に引き続き、今回は第二防衛学園のメンバーとその他のキャラについて語っていくよ。この記事を先に開いてしまった方は前回記事から読んでもらった方がわかりやすいのでどうぞ。

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もちろん何もかもネタバレしているので、未プレイの方、プレイ中の方は読まないようお願いします。

初回記事はこちらから。

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霧藤希

多くの人が疑問を持ったと思われるのだが、霧藤希は本当にイレギュラーだったのだろうか。もし本当にイレギュラーだったのなら、学生鎧の通し番号(たしか10だったよね)の途中に希ちゃんが含まれてるのはおかしくない?

イヴァーは本当にイレギュラーだから、通し番号が最後(15)なんでしょ? もし希ちゃんが本当にイレギュラーだったなら、14でないとおかしくない?

誰かがどこかでその疑問を口にすることをずっと期待していたのだが、最後まで誰も疑問に思わなかったようだ。なんで????

もし彼女の存在が計画的だったなら、だいぶ面白い。真相解明編やリスタート編のような状況になることも想定して、最初から特防隊に純正地球人を入れておくというのは、あり得ない話ではない。SIREIの言うことはひとつも信用できない。

そうなると、カルアの思い出が完全に粉砕されて拓海くんが再起不能になりそうだけど。記憶の設定が思いのままだとしたら、「希」としての記憶に対応するように拓海くんの思い出を設定するのも可能だろうし、これもあり得なくないんだよな。

なおわたしの中では最後まで、ヒロインは比留子さんということになってしまった。

希ちゃんがいい子なのは間違いないのだけど、わたしのような魂の穢れた人間には眩しすぎた。あとは単純に、2周目以降は希ちゃんにふられるか、嫌われるか、拓海くんが別の子を好きになる展開の方が多くなかった? メインヒロインとしてはやや不遇だった気がする。

不遇といえば、希ちゃんはどうしても「足を引っ張るポジション」になりがちだ。毎回絶妙に水を差すタイミングで異血の拒絶反応が起こる。で、諸々を後回しにして敵の拠点に攻め込まなくてはいけなくなる。蘇生もできないから無茶はさせられないし、その割にはだいぶ無茶するし。

最近はこういう「設定上どうしても足を引っ張るポジションになりがちなヒロイン」自体がだいぶ少なくなっているので、今時珍しいなと思いながらプレイしていた。

わたしのプレイでは、いちばん最後に出会った分岐が拓海くんではなく希ちゃんによる選択だった(血みどろ編のラスト)ので、こういうパターンもあったのか! と印象的なラストになった。

で、「特異点」って何だったんだ? プレイヤーから見ると特異点は拓海くんの方だろと思うんだけど。

 

大鈴木くらら

くららちゃんも微妙に不遇だったような……。多くのTLで早めにお亡くなりになってしまった印象。真相解明編に進むために彼女を見殺しにしなければならなかったときの罪悪感は計り知れない。ごめんよくららちゃん。

恋しちゃったんだ編でかわいい姿を見られて、彼女の魅力は十分伝わったけどね。恋しちゃったんだ編で彼女だけエンディングが2種類あったのは、作り手のこだわりが感じられて好印象だった。

その恋しちゃったんだ編についてだが、わたしはこれもサイワイの箱の効果がブラッドスペースを経てこのTLに作用したのではないかと思っている。拓海くんとくららちゃんと狂死香ちゃんとつばさちゃんが同時にみたという謎の夢は、サイワイの箱によってもたらされたのだ! と説明されたら、まあ納得する。結局謎のままだったけど。

でもサイワイの箱編の楽くんハーレムエンドを見る限り、マジであり得なくないんだよな。異血の力はTLや時間を超えて作用することもあるらしく、その異血をもたらしたのがサイワイの箱だというのなら、それくらいはあるでしょうという感じ。なんだかんだで恋しちゃったんだ編も全員生存エンドなので、拓海くんの願った「100日目を生き延びるための道標」があの夢だったというアンサーも一応納得である。

マスクをかぶっているにもかかわらず、誰よりも表情豊かだったのが面白い。ほんと、あのトマトいい顔するよね。どういう技術なんだよ。

そしてマスクをかぶっているがゆえの入れ替わりトリックとかいう、ベタベタだが直球の殺人事件があったのも面白かった。いやこれがこのゲームのメイントリックだったらブチ切れたかもしれないが、これだけたくさんルートがある中の1つとしてそういうのが含まれているのは、フフっと笑えるネタであった。くららちゃんが殺されてるの自体は笑えないんだけど。

そしてこの件以降、過子Gがくららちゃんの衣装を着ているのがとてもかわいかった。あの服、トマト頭が着るよりもツインテール美少女が着た方が似合うんだよな……。

血みどろ編で狂死香ちゃんをかばって死んでしまうシーンを見て、その後恋しちゃったんだ編で失恋した狂死香ちゃんをくららちゃんが慰めるシーンを見て、くらら×狂死香に目覚めたのはわたしだけではあるまい。普段はくららちゃんが一方的に暴言を吐くばかりだったけど、このふたりの信頼関係はかなり好きだった。かえすがえすも、真相解明編にこのふたりが不在なのがつらい。

 

凶鳥狂死香

何度も書いているように、彼女こそわたしの本命である。

わたしが狂死香ちゃんにキュンとしたのはたぶんこのシーンがきっかけだった。わたしが2周目に見た血みどろ編の終盤、ゾンビ化した希ちゃんが狂死香ちゃんを襲い、彼女を助けるために希ちゃんの首を落としたあとのシーン。拓海くんはめちゃくちゃ落ち込んでいたけど、それと同じくらい狂死香ちゃんも自責の念で苦しんでいた。

狂死香ちゃんは拓海くんが希ちゃんを大切に思っていたことに気づいていただろうし、このときはつらかっただろうな。「自分のせいで拓海くんが大切な人の首を落とすことになってしまった」ことに対して自己弁護することなくストレートに悔やみ、自分を責め、誰にあたることもなくひとりで泣いていた彼女にぐっときちゃったんだよね。我ながら、萌えツボってどこにあるかわからんなあ。

この後の、くららちゃんが狂死香ちゃんをかばって死ぬシーンでさらに追い打ちをかけられたかも。いつもくららちゃんに騙されたりからかわれたりしていた狂死香ちゃんが、「拙者…バカだからぁ…また騙されて…(死んだなんて嘘でしょ?「騙されたわね!」って笑ってよ! の意)」と泣きながら呟くやつ。この一言にくららちゃんと狂死香ちゃんの関係性が詰め込まれてて、好き……ってなった。

わたしが最初にたどり着いたエンディングでは、狂死香ちゃんと拓海くんが100日目まで生き残るも、狂死香ちゃんを守りきれず拓海くんだけが脱出ポッドに乗るエンドだった。もうね、せっかく好きになった彼女を守れなかったことがショックでね。たぶんそういった諸々の経験で、彼女が本命になっちゃったんだな。

プレイする順番が違っていたら、ここまで印象に残らなかったかもしれない。数周目にこのルートを見ていたら「あーこのエンディングも死人が多かったなー」くらいのテンションで、サクサク次の周回に向かうだけだったかもしれない。やっぱりこういうのって、生まれて最初に見た動くものを親だと思うみたいな刷り込みで、最初に見たルートが大事なんだよな。

あとは恋しちゃったんだ編については、当時の感想でも書いたとおり、狂死香ちゃんをくららちゃんが慰めるシーンがめちゃくちゃお気に入り。「アンタみたいな女こそ、生涯の伴侶にふさわしいわ」というくららちゃんの台詞に、本気な部分が結構あるのがイイ。拓海くんが訪れる前の、第二のメンバーだけでの交流シーンとか見たいよねえ。ふたりがどんなふうに信頼関係を築いていったのか知りたい。

 

面影歪

おもしれー男大賞、面影歪。このゲームのベストカップル賞は拓海くんと歪くんだ(サムネ画像参照)。異論は認める。

すべての台詞がいかがわしく、すべての立ち絵の手がエロい和装にチョーカーとかいういかがわしさ大爆発の服装。しかもその羽織りに描かれた手までエロい。

暗殺者なのに他人との距離の詰め方がスピーディ。あれか、出会ってすぐに殺してしまうことになるから、早急に人となりを知る必要があってこうなったのか(?)。

拷問するのもされるのも大好きなんだよね。結局そんなシーンはなかったが。いやセルフ開腹手術は2回やってるか。やっぱりされる方が好きなのかな……。自分が変態なことを自覚しているところには好感が持てる。

変態なのは間違いないが、拓海くんへの好意はかなりまっすぐでまっとうなのも好感が持てる。なぜ拓海くんは歪くんにキュンとしないのか、わけがわからないよ。好意以外の部分があまりにも大きいからか……。

臥せってしまった拓海くんの慰め方が「つばさちゃんじゃなくてガッカリした?」からのコレ↑なの、めちゃくちゃよくない? 本当は自分こそが拓海くんを元気づけたいのだけど、拓海くんが望んでいるのはつばさちゃんの励ましだとわかっているからこそのこの言葉。お前がベストカップル賞だ。

こんなにもストレートに、拓海くんへの好意を伝えてくれた人がいただろうか。いたような気もする。ただ「あなたが好きです」は自分主体の感情で、「あなたの幸せを願う」は相手主体の感情だ。歪くんは相手を主体とした好意を持てる人だ。

その割に拓海くんの死の恐怖に絶望した顔が大好きで、拓海くんの意に反して追い回したりしていたが。そのへんも好きだからこそか。いやむしろ、他者を主体とした視点の切り替えが得意だからこそ、絶望顔が好きという嗜好は理解できるな。わたしもそうだから(急に物騒になるブログ)。

それにしても暗殺者設定は本当に活きなかったな。むしろ医療者ポジションだったじゃん。あとはマッドサイエンティスト

カリスマ澄野編を見たあとの周回でふと話しかけたらこんな台詞があったので、ヒェ……ってなった。そういえば、カリスマ澄野編以前にもこの台詞言ってたわ。

つまりこの台詞が出るあらゆるルートにおいて、歪くんはカリスマドーピング薬を開発してるってことでしょ? そしてカリスマ澄野編以外の、つまり厄師寺くんが中盤まで生きてるルートでは、厄師寺くんがドーピングを止めてたってことでしょ? 前回記事にも書いたけど、厄師寺くんが裏のMVPなんだよな。厄師寺くんがいなかったら、全ルートがカリスマ澄野展開になるところだった。

歪くんは名簿上の登録情報が「人体実験」なわけだけど、そんな彼のキャラ設定を作った神座総合病院の連中こそが人体実験マスターであるという歪な入れ子構造よ。グロテスクだねー。

 

喪白もこ

もこちゃん、実質隠しキャラみたいな扱いじゃなかった? 1周目ではプレイアブルにならないし、2周目以降も序盤に死ぬ展開が多いし。絆を上げきるのがだいぶ後の方になった。

恋しちゃったんだ編は、実際のところもこちゃんルートだと思っている。あのルート、彼女の魅力全開だったよね。最後にもこちゃんを選んだプレイヤーも多かったのでは。

もこちゃんっていったい何歳設定なんだろう。拓海くんたちと同じ年ということでよかったんだろうか。異血兵器たちは一斉に育てられたのであろうことを考えれば(九十九兄妹だけ遅い)、やはり同じ年なのか。

彼女だけだいぶ精神年齢が高いし、人生経験も豊富すぎる。あの年齢で、いったいどれほどの興行を重ねてきたのか。学校には行かずに、興行に専念してきたってことなのかな。まあ全部「そういう設定」なのだからなんぼでも盛れるのだろうけど。

わたしはプロレスネタは何一つわからないので、もこちゃんの台詞の大半は意味不明で申し訳なかった。でも察するに、もこちゃんの世代からみるとだいぶ古い時代の話ばかりしてない? 東京団地でどんなプロレスが人気なのかをもっと語ってくれ。

1周目で彼女をコピーしたのは、調和の化身ゼンタだっけ。彼女の能力はノモケバを思わせる。肉体のコピーも記憶のコピーもできるっていう。サイワイの箱とノモケバと異血の関係は説明がほしかったな!

 

イヴァー

多くのルートで無為に殺されたりむちゃくちゃな洗脳をされたりと、とにかく気の毒な人だった。転校生として紹介されたときはびっくりしたな! イヴァーの名簿上の登録情報は「☒☒☒(文字化けしてる)」なのに、希ちゃんはちゃんと「看護」で登録されてるのを見て、やっぱり希ちゃんはイレギュラーではない説を推したくなる。

イヴァーはデスゲーム編でカミュンの手がかりを遺して死んだときがいちばんわくわくさせられたかも。そこからの新キャラ登場でさらにわくわくした。カミュンの居所がルートごとに違うのは、何がどう影響してたんだろう。やはりすべてのルートは独立したパラレルワールドなのか。

しかしデスゲーム編でのイヴァー・希・カミュンの疑似親子のベタベタっぷりは、わたしの目には割とホラーだった。特に希ちゃんの依存性が強すぎる。実母との関係が今に影響してこうなっていることがわかっているだけに、生々しいホラーである。この描写を見て余計に、拓海くんが希ちゃんとお付き合いするのはやめた方がいいと思っちゃったんだよね……。

イヴァーの家族構成は、育ての親(ヴェシネスに殺される)・兄(ヴェシネスに殺される)・姉(ヴェシネス)・カミュン(兄夫婦の遺した娘)だったかな。こっちはこっちで地獄じゃない? 身内が「偉大な私が神になりたいと思ったんだ。私は神になるべきなんだ」とか言いだしたら嫌すぎる。

ヴェシネスのもとでこっそり混沌軍の支援をしていたのはマジでファインプレーだった。地球人とフトゥールム人が休戦協定を結ぶ系エンディングでの裏MVPはイヴァーだよ。

 

シオン

「神の再臨」とは何だったのか。ケースに入れていなければ自分の炎で焼かれて死ぬという話だが、生まれたばかりのシオンはどういう状態だったのか。親とかいるのか。地球人はどうやってシオンをさらったのか。謎が多すぎる。

放っておいたら死ぬのがデフォルトの子なので、自分の死を前提とした作戦を受け入れているのはまあ、わかる。

シオンだけはどのルートでも基本的に「いい子」でメンタルド安定なので、SIREIの育て方がよほどよかったのだろうと思っている。AIがこれだけうまく子育てできるのなら、特防隊のみなさんももっとメンタルを安定させられなかった? 

彼がフトゥールムでそのまま育った場合(炎を遮断するケースを作る技術が彼らにあるのか不明だが。そんなもんがあるなら炎の壁をもっと楽に越えてくるだろうし)、ヴェシネスなんて片手で捻り潰せる部隊長になっていたのでは。

シオンが「神の再臨」と呼ばれているのなら、フトゥールムにはやはり異血の始祖的な「神」がいて、その人が異血を分け与えたんだろうか。それがサイワイの箱とどんなつながりを持つのか。サイワイの箱を集めると、実は神龍的なやつが出てたんだろうか。

結局異血は「神」由来なのか、サイワイの箱由来なのか、ノモケバ由来なのか、いまいちわからない。作中ではサイワイの箱由来だと言われていたけど、じゃあ最初に箱を集めた人は何を願ったの? 最初に願ったのが「神」の顕現だったの? じゃあサイワイの箱が願いをかなえるのは、「神」以外のどんなパワーを根拠としてるんだろ? 謎が多すぎる。

キャラクターとしていちばん印象に残ったのは、実は連続防衛編。拓海くんたちの仲間になれなかったことに一応納得はしたものの、やはり寂しさや悔しさは感じていて、それを衛人くんにぶつけてしまうやつ。当時の記事に詳しく書いたけど、あのときのシオンの心情を想像すると胸が痛い。

 

ヴェシネス

ヴェシネス編がよくできていたおかげで解像度が上がった。

この手の女性ヴィランで母性アピールをしないキャラは珍しく、非常に好感が持てる。母性アピールは全部イヴァーが持ってったもんな。

ヴェシネス構文は汎用性が高いので、わたしも積極的に使っていきたい。「偉大な私がビールを飲みたいと思ったんだ。私はビールを飲むべきなんだ」とか。

自分の欲望に従って生き、自分の欲望に従って死ぬという、王道ヴィラン人生な人だったな。「ほしいものは絶対に手に入れる」マインドなのだが、彼女が望むのは「彼女が彼女であるがゆえに絶対に手に入らないもの」だという大いなる矛盾。

ダルシャーとの因縁とか、もっと詳しく見てみたかったな。あと部隊長たちの素顔も見たい。偉大な私が部隊長たちの素顔を見たいと思ったんだ(以下略)

ヴェシネスたちの育ての親って結局何だったんだろうな。ヴェシネス編をやった当時は、あの謎の老人が育ての親だったのかと思ったのだけど。結局その後何も情報がなかった。あんなに意味深に打ち明けられたのに。

 

ダルシャー

ワザワイの箱編で例の人影と喋って帰っちゃうのはなぜだろうとずっと思っていたのだが、ワザワイの箱編をすべてクリアした後にようやく理解した。

ダルシャーの目には、この人影はたぶんムヴヴムに見えているのだろう。息子さんだ。

この人影は、拓海くんの異血が作りだしたボディ。シオンのボディと同じ原理。で、シオンのボディと同じく、人によって見えたり見えなかったり、声が聞こえたり聞こえなかったりするのかな?

そしておそらく、相手によってどんな姿をとるのかが変わる? もともと拓海くんの罪悪感が具現化したボディなので、見る人の抱く罪悪感によって姿が変わるのではないか。で、ダルシャーの目には、死に目にあえなかった息子の姿をとったというのがいちばんしっくりくるかなと。もともとダルシャーって、学園に最初にひとりで来たときは、ムヴヴムの墓参りが目的だったくらいだし。

それで息子の姿をした人影から「この人たち、自責の念と悲しみと迷いでボロボロだよ? こんな人たちを倒したところで偉大な戦士としての誇りは回復できなくない?」的なことを言われたのではないか。それでダルシャーも「一理ある」と答えたという流れなら、話が通るかなと。

そう考えると、じゃあヴェシネスにはこの人影はどんなふうに見えていたのかが気になる。彼女は罪悪感とかないでしょ。拓海くんが異血で謎ボディを作ってて、それが拓海くん側のデバフになってるのがそのまま見えて、それが「面白い」みたいな認識だったのかな。

 

カミュ

かわいくて好きだったのだけど、あまりにも舞台装置だったかな……という印象。

イヴァーが生存する動機としての舞台装置であり、フトゥールム側の「話せる代表者」としての舞台装置であり、異血には「叡智」の効果もあることを示す舞台装置である。

それ以外の彼女の描写って、結局「かわいくて物分かりのいい子ども」としてのものでしかない。「叡智の巫女」に期待するのは叡智の叡智ぶりであって、かわいさじゃないんだよな。

だけどこれはわたしの嗜好がそっちに偏っているだけあって、一般的には「のじゃロリ」と呼ばれる存在に求められるのはかわいさなのかもしれない。わたしはそんな記号的かわいさからはずれる部分こそを求めている。

デスゲーム編で彼女の理系分野における叡智ぶりは垣間見られた。しかし独裁政権編のように彼女が指導者になる場合、求められる叡智はまったく別分野である。叡智の異血が政治経済外交分野でどう発揮されるのかを見てみたかった。

 

SIREI

SIREIの魅力についてはこちらの記事でたくさん語ったのでここではいったんおいといて。

わたしの中ではSIREIもまた、作戦の中の都合のいい部分だけしか知らされていないと思っている。

あと人類の総意シミュレーターというのも、SIREI作成者がそういう自我を与えたというだけで、本当は「現状から最も望ましい作戦をシミュレートするAI」でしかないと思っている。人類はもっと愚かで矛盾まみれなので、合理的な判断なんかできないし、人類の総意などに意思決定させたら早々に作戦は破綻するに決まってる。世界死をもたらした実績のある人類なんかの総意を、人類の存亡を懸けた作戦に使うわけがない

そういうわけで、SIREIの話は話半分どころか話二割くらいのつもりで聞いていた。それもあって、前の記事でも書いたとおり、わたしはこの話をフトゥールムとの戦争だけが目的の作戦ではなかったと思ってるんだけど、どうなんだろうね。

 

謎の老人

わたしの中で作中最大の謎はこの人。何だったのこの人は。ほかのフトゥールム人にはこの人が見えてるの? 最後は消えてしまったんだけど、もはやこの人自体が超常現象だったんじゃないの。

『呪輪廻考』という書について「名前が『呪術〇〇に似てるな』って思ったじゃろ?」という発言があったせいで、この老人は地球の文化を熟知した人であることを前提にすべきかという悩みが出てくるんだよな。こんなもんはただのゆるいネタであって、本気にしちゃいけませんよとか言われたらぶっとばすぞ

(もしこの台詞が老人の正体を示唆するヒントだったとしても、ゆるいネタの可能性が残るのがもったいない)

思いつくままに説をあげていくよ。

 

①未来からやってきた澄野拓海だよ説

最初はこれだと思ったんだよね。将来的にタイムマシーンが発明されるみたいだから、だいぶ先の未来でフトゥールムの伝承に熟知し、ノモケバの幼生とノモケバ移植用注射を用意した拓海くんが、衛人くん生存ルートの2日目あたりにやってくる。

比留子さんが「あの老人は会えるTLと会えないTLがある」的なことを言っていたけど、未来からやってきたなら、衛人くん死亡ルートで会えないのは納得できる。

(老人に会えるのはノモケバ編、サイワイの箱編、SF編だけかな?)

「呪術〇〇に似てるな」発言もこれなら受け入れられる。

 

②ヴェシネスたちの育ての親だよ説

次に考えたのがこれ。育ての親の話があまりにも意味ありげだったので、それまでに出てきたキャラの中に育ての親がいるとしたら、あの老人しかいないよなと思って。

それこそノモケバみたいな存在がいるなら、ヴェシネスに殺されたとしてもどうとでも蘇生できるかなと。

でも最終的な印象としてはもっと超常現象よりな気がするので、この説は弱いかなと思っている。

 

③初代シオンだよ説

初代シオンというのも変な話だが、シオンが「神の再臨」であるならば、「初代神」がいたのではないかと。そのレベルの超常的存在であれば、異血によって時間をこえるなりめちゃくちゃ長寿なり、呪輪廻を見破るなり、大体いけるっしょ(雑)。

長い時間を経る中で異血のコントロールもできるようになって、あるいは人々に力を分け与える中でだんだん弱まっていって、自分の炎で焼かれることもなくなって、あんな感じにしわがれちゃったんすよ。

シオンがああいう感じで何も知らなかったので、初代神も自分の力について詳しくは知らないし、ループを止める方法も具体的には知らない、みたいな。でも異血パワーで地球の漫画は大体読了しているので、『呪術○○』は知っているっていう。無理があるな……。

あっ! 前回の衛人くんの項目で書き忘れてたけど、ループを止める方法が本当に「全員生存した状態で100日目を迎える」なのかについて、わたしは割と疑っている。ソースが衛人くんの証言だけしかないので。あの発言をしたときの衛人くんはドルメン式洗脳の改良版で拓海くんたちの仲間になっていたけど、それでもあやしい。

ループを止める方法なんて書いてなかったけど、拓海くんたちの戦意を挫かないために全員生存すればいいという嘘をついたとか、普通にあり得そう。てっきり別TLの図書室で『呪輪廻考』を探して確認するのだろうと思っていたのだけど、なぜやらなかったのか。神座総合病院は、一次資料にあたることの重要さも学ばせておくべきだった。

なんといっても、全員生存エンドを迎えてもプレイヤーは普通に次の周回に向かっちゃうもんな。全然ループが終わった様子がない。やっぱり前の記事で書いた「この100ルートの中には真エンドはない説」を推していきたい。

自分で書いてて思ったけど、わたしは何もかも疑いすぎだな。でもこのゲーム、確定事項がほとんどないから仕方ない。プレイした人たちがああでもないこうでもないと説を捻りだすところまでが、想定される遊び方なのだろう。こちらの説もネットの大海に放流して、本日はこれにておしまい。

 

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