なぜ面白いのか

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プレイヤーと主人公の垣根を超える「メタファー:リファンタジオ」プレイ日記10

あまりにも多くのことが起こった……(5日ぶり2回目)。

ああこれは「メタファー」なんだ、と納得できたし腑に落ちた。そしてたぶん現時点でわたしが理解している「メタファー」は、この作品の内包する「メタファー」の一部でしかない。この先にさらにどんな「メタファー」が待っているのだろうか。

「メタファー」というタイトルだけで購入を即決したわたしのような人間にとっては、今のところこの作品、この作風はとても楽しい。こんなにも大見栄を切ったタイトルが、かつてあっただろうか?

まさに初回記事で書いたとおりだった。

わたしたちにとってはアンジェロくんの世界こそが「異世界」だが、その世界で起こる「幻想」は我々の世界の比喩であり、作り手のメッセージがこめられている。この作品はわたしたちの生きる現実世界に何らかの良い変化を期待して作られているというわけだ。

ただまあ、そんなのはあまりにも当たり前の話で、ストーリー性のあるゲームなら何だって、何らかの形で現代社会のメタファーになっているはずだし、クリエイターは作品を通して世界にささやかな変化を期待する。そんなの誰だってやっていることなので、それをわざわざタイトルにする必要はない。

じゃあ何だろう? それ以上のどんな意味があるんだろう? というのがわたしのわくわく感の根本だ。

見る者が同時に見られる者に「メタファー:リファンタジオ」プレイ日記1 - なぜ面白いのか


わたしはここまで何よりもこの部分にわくわくしてきたわけだけど、その一端がようやく理解できた。今日はその部分にフォーカスして書いてみたい。

当然ながら致命的なネタバレを含むので、9月が終了していない人は以下を読まないようお願いします!

 

 

 

 

 

 

久々のビッグサイト

 

 

おおおうじよ しんでしまうとは なさけない!

まあ一応ここまでの流れをふまえて、これはやっておこうかなって。

1つ前の記事では「おおフォーデンよ しんでしまうとは なさけない!」、2つ前の記事では「おおルイよ しんでしまうとは なさけない!」という見出しをつけたので。しかしこの見出しのうち実際の死亡率は33.3%である。

わたしも含めた多くのプレイヤーが、「王の資質」とかいうパラメータが用意されているのを見て「主人公が王になるってこと?」「じゃあ王子様は結局死んじゃうの?」と序盤のうちに考えたはずだ。それを逆手にとった展開だったなあ!

「支援者」一覧やアーキタイプ素体一覧を先に見ることができるのもそうだし、今作はUIも含めた「ゲーム設計」が抜群にうまいよね。プレイヤーが触れることのできる細部までが、ストーリーを面白くすることに貢献してくれている。

前回感想でモアくん=ユトロダイウス5世説を書いたので、その時点でアンジェロくんの正体にも気づくべきだったな。

ここでやっと気づいた

そうだよね、先に「ドラゴン」というヒントが提示されていたのだから、マグラによって作られた「動物」ではない疑似生命(?)があり得ることは察せられたはず。

そうかー、王子様も分離してたんだー(もうユトロダイウスは分離している前提の物言い)。

アンジェロくんがニンゲン化しかけたときは、やっぱりアンジェロくんはアンジェロ(天使)ではなく悪魔側の人だったのか!? と焦ったが、あれはエルダ族でなかったとしても誰でもああなるってことなんだな。

つまりルイのやってたのは100%のマッチポンプだったってこと? 自分でニンゲンを作りだして自分で討伐してたってこと? おいおい楽なお仕事されてますなあ!

というかあそこでルイは「アンジェロくんがニンゲン化する」様子を民に見せたかったようだけど、どう見ても「ルイがニンゲンを意図的に生産できる」様子を示してしまってたよね。そういう解釈をする民はいなかったのかよ。もともとエルダ族への偏見があるからルイの言葉の方を信じてしまうってことかな。

アンジェロくんの支持率が急降下する展開はついこの前見たやつだなあと既視感を覚えつつ、エルダの古仙郷へ。

そしたらあなた、王子様がお亡くなりになったとかいう話じゃないの。

せっかく助けたのにやっぱり死ぬんかい!! と思いつつ、そうか、これでアンジェロくんが王になる準備は整ったなと納得した。ようやくひとつに戻るんだね。

 

 

ゲームの主人公とプレイヤーの関係のメタファー

この瞬間、「メタファー」の意味のひとつを悟って「あ……!」って声が出た。

王子様とアンジェロくんの関係、それはプレイヤーとゲームの主人公との関係のメタファーだ。

世の多くの人は自由きままな旅をすることはできないし、強大な敵に立ち向かうほどの力もないし、世界を変革するほどの力も持たない。けれどゲームの中では、自由な旅人になることができる。勇者にもなれるし怪盗にもなれるし、暗殺者にも魔法使いにもなれる。わたしが殺した神の数は計り知れず、わたしが殺した山賊や闇の魔法使い、モンゴル兵の数はさらに計り知れない。

人は誰でも、ゲームの中では「なりたい理想の姿」になることができる。意識的にせよ、無意識的にせよ、「なってみたい理想の姿」に合致するようなゲームを選んで買っている人は多いはず。現実にやったら怒られそうなことができるゲームに人気があるのも、ゲームの中ならそういう願望を疑似的にかなえられるからだ。

だけど、ゲームの中の「主人公」はただの「幻想」ではない。我々はゲームのストーリーに沿って多くのものを見て多くを考え、選択をする。時にはどちらも選びたくない選択を迫られることもある。そこには何らかの形でプレイヤー自身の意思が介在する。

わたしみたいに「主人公≠わたし」で、キャラメイクするタイプの主人公だとしても三人称の独立したキャラクターとして操作するようなプレイヤーですら、わたし自身の意思をまったく介入させずにストーリーを進行することはできない。

つまり「ゲームのストーリー」は必然的に「わたし自身のストーリー」であり、「わたしの人生の一部」となることは避けられない

ここまでアンジェロくんを操作してきた「わたし」は、アンジェロくんの旅をともに見て、聞いて、感じて、考えてきた「わたし」は、それをただの「幻想」と突き放せるのか? どこかで、アンジェロくんと「わたし」がひとつになるはずではないのか?

これまでゲームをやっていて、「ゲームの用意した選択」が「わたし自身の選択」という意味を持って突きつけられたことに気づいて、つまり主人公とわたし自身が完全にシンクロしていることに気づいて愕然とした経験が何回かあった。

あまりにも鮮烈かつ強烈で今も忘れられない、トラウマ級の経験をしたのがホットラインマイアミ。

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プレイヤー自身の価値観や倫理観と切り離せない選択が次々と降ってきて、どうしたって「わたし」の物語になってしまうデトロイトビカムヒューマン。

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今思い出してもいろんな感情が蘇ってきて、あのときの選択はあれでよかったのかなと考え続けてしまうFF14暁月のフィナーレ。

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この三作は間違いなく自分の人生の一部になっているし、ゲームというか「創作物と受容者」との関係についての考察が深まった作品でもあった。

で、その上で出会った「メタファー」だよ。これらをプレイして、「創作物と受容者」との関係についてここ何年も考えた末に出会ったのが、この作品なんだよ。この作品は、自ら「ゲームの主人公とプレイヤー」の垣根を超えようとしてくる。

「世界を変えたいと望む意思」は、意思の主へと戻った。だったら「わたし」のもとにも戻ることができる。これはそういうメッセージなのだとわたしは受け取った。

わかりやすいまとめ

 

話の整理

「メタファー」の意味の一端を理解したのがかなりの衝撃だったが、そこからさらに怒涛の情報公開が行われたので、ここで整理しておこう。

まずアンジェロくんを創りだしたのは、王子様の母親。この人はエルダ族の女王。モアくん以外にハイデリンみたいな女声のアナウンスが入るのは何なんだろうと思っていたけど、それが母親だったんだな。

母親は死んだという話だったけど、アンジェロくんの旅をあれだけ生実況しているのだから、今も意識はあるのか。それもマグラの力なのか。

エルダ族の女王と出会って理想を語り、結ばれたのがユトロダイウス5世。

わたしはモアくん=ユトロダイウスだと思っているので、このラッセルのセリフを見て「まだモアくんの正体はわかってないのに、ここでそんなにはっきり言っちゃってええんか?」と思ったのだが、これはあれか、空飛ぶ王の顔のことを言ってるんだな。あの顔がインタラクティブなのは、王の「心」をあれにやつして「願いを遂げ」ようとしてるってことなのか。

王子の母親の声によれば、あの「幻想小説」が神器だったらしい。アンジェロくんはその神器の力で生まれた。じゃあユトロダイウスもあの小説を使ってモアくんを創ったんじゃないかなあ。

ではあの「幻想小説」の著者は誰なんだろ? モアくんが書いたものと思っていたけど、古代人の作品だったのか? 著者は実はsayuだったとか? あと同じ本をルイが持っていたのはどういうわけなんだ。ルイもどこかに「幻想」を創っているのか、あるいは今我々が見ているのが「幻想」のルイなのか。

英語じゃねーか!!

これで、この世界における「古代」が我々にとっての「現代」であること、少なくとも開発側はそれを想定していることが確定。

エルダ族=古代人=人間だったことは、ビルガ島で示されたとおり。マグラの影響によって、数百年で種族の変化が起こったらしい。

ニンゲン=恐化人間だという話もこれで確定。

惺教はやはり「滅びの戦を繰り返さない」ためにできたものだった。魔道器も、本来は魔法の暴走を防ぐための「自戒の首輪」だった。

ルイは相手のマグラを暴走させる能力を使っている。つい先日、相手の〇〇〇〇を暴走させる能力の敵と戦ったばかりなんだが、どうもデジャヴが多いな。

「より強い不安や恐れを抱く者からはより多くのマグラが生まれる」ということは、めっちゃ強い魔法を使うルイはめっちゃ不安や恐れを抱いてるってこと? あの頑丈さは魔法っていうよりは普通に人間やめてるレベルだったが。

ルイも実はエルダ族だった展開はびっくりだったな~! そうか、お前も村を焼かれた側だったか……。ユトロダイウスを殺したのは復讐だったのかなあ。でもニンゲンマッチポンプ活動については、復讐以外の意図もありそうなんだが。

チラチラ小出しにされているこの話はまだ見えてこない。sayuの書の愚者のことだろうか?

なんか見覚えのある構図

幻想小説の最後は、滅びの戦について書かれていたわけではなかったが、「正しさによる争いが始まってしまうのかもしれない」だの「真の理想郷とは…真の王とは…その答えをいまだ見いだせた者はいない」だの、この世界を「理想郷」として書いたとは思えない文が並んでいる。そういえば「理想郷は真に理想なのか」ってタイトルの記事も書いたなあ。

むしろこれは、後の世への「警鐘」として残された「神器」だったのでは。で、その神器を創ったのがやはりsayuってことになるのかなあ。

これはむしろ現代人にこそよく言われるやつだな。汝、自分自身の支配者たれ、真の「自由」は自分の意思によって掴み取るものだって。

奥様でしょ?

わたしはもうモアくん=ユトロダイウスだと思ってるんだけど、それはそれとして、なぜ自ら記憶を消すようなことをしたのかはわからない。その必要があったってことなんだろうけど。公平な裁定のためにカイロスを起動したのか?

 

 

この国の抱える秘密

理解が早すぎる

めっちゃ端折った上に要領を得ないゾルバの説明で、そんなにすべてを理解することある!? やはりルイもあの本を持っているわけだから、同じように何かをマグラで実体化したことがあるのかな。あの角とか?

ルイがアンジェロくんに関心を向けるせいで、ゾルバくんが嫉妬しちゃったじゃない! これは再戦ありますわ。

この問いは非常に重要そうだ。ルイ自身が答えを囁いていたけど、マイクが仕事してなかった。

おそらくその答えが、用語集のこのへんの部分なのだと思う。

おいおいおいおい、このゲーム、用語集を更新ごとに読んでるかどうかで理解に差が出すぎだろ!

ルイいわく「この国に戦乱がないのは、単に、食う者と食われる者が初めから決まっていて覆せないから」だそうだ。支配層と被支配層が固定化され、機会の平等すら存在しない。「滅びの戦」を起こした「人間」の特徴を残したエルダ族は被差別民扱い。

そういった社会情勢全体が「不安」を生み出している。「不安」はマグラを生み、そのマグラを王笏=神器が吸収し、王の魔法を形成する。もしかしてその「王の魔法」も、もともとは国を不安で満たすためのものだったのかもしれない。ユトロダイウス5世の「王の魔法」が例外だっただけで。

でも国を不安で満たすのは、どちらかというと「本来の魔法」を再興させる方向に進みそうな気がするけど大丈夫だったのかな。「国を不安で満たす→マグラがいっぱいとれる→王の魔法がより強力に」というサイクルだったとか?

あと話がここまでくると、若き日は理想に燃えてエルダの古仙郷にまで来たユトロダイウスが、なぜ惺教がのさばるままにして魔法学院をお取り潰しにしたり、古仙郷を燃やさせっぱなしにしていたのか気になってくる。

わたしはユトロダイウスについては、てっきり惺教の使う「聖杯」によって精神を支配されてしまい、かろうじてモアくんだけを切り離して、本体は自由にならない状態になっていたのではないかと思っていたのだが、それだけではないのかもしれない。

「聖杯」の実験が行われたのは12年前で、その頃にはもう古仙郷は燃えていたはずだ。

ユトロダイウスは、理想の実現のために自らモアくんを切り離したのか? どの段階で? なぜ? もしかしてモアくんを切り離した時点から、ユトロダイウスは抜け殻状態になってた?

ユトロダイウスが古仙郷に来て女王と結ばれる

→王子誕生

→惺教によって古仙郷が燃やされる

→ルイが古仙郷を出て下級貴族の養子になる

 王子が王都で育てられるようになる

→ルイがフォーデンに目をつけられる

→【12年前】聖杯実験・王子暗殺(未遂)

→王子が古仙郷に匿われる

→アンジェロくん誕生

こういう流れではないかと思っているのだが、ユトロダイウスはどの段階でモアくんを切り離したのか。なんかもうずっとモア=ユトロダイウスという前提で話を進めているが、これでこの前提が違ってたら全部無意味だな!

 

さて、とにかくこれでルイとの最終決戦という期限つきミッションが始まった。先日のルイとの戦いのときも「これが最後の戦いだ!」とか言ってたような気がするが、今度こそ本当に最終だろうか? まだじゃねえかな。ミッションランクの◆が最高になってないもの。それにペルソナシリーズだと、本当の最終決戦の前には「支援者たちとの仲をできるだけ深めておこうね」的なメッセージが出るはずだ。

ルイとの戦いのあとに何が待っているのかにも頭を悩ませつつ(またルイかもしれない)、大量に発生したサブクエストをこなしてくるか!

 

ところでこれはゲーマーとしての完全なぼやきなのだが、ここのところのJRPGって「滅んだ古代文明」に頼りすぎじゃない? なんかアレもアレもアレもアレもそういうパターンだったので、出てくるたびに「またアラグか」(メタファーの古代はアラグというよりはアーモロートなのだが)って言ってる気がする。

わたしがそういうシナリオのゲームを選びがちなだけという説もあるけど、それにしてもかぶりすぎでは。まあ滅んだ古代文明の遺跡って、ゲーム的に探索しがいもあるし、ロマンがあるし、現代文明への警鐘が簡単にできるし、お話を作りやすいんだろうな。記憶喪失主人公と双璧をなす、国産ゲームのお約束のひとつになりつつある。

まあその中でも今作は、古代文明とゲーム中の「現在」と、現実世界との関係が明示されているので、このシナリオの必然性は理解できる。古代文明がどんなもので、なぜ滅んで、現代とどう関係があるのかについてほとんど説明がないままのゲームもあったりするけど、それは消化不良な感じがする。

なかなか「新鮮な驚きを提供する」のって難しいよなあ。

 

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